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第19話 - 1 第四次エディンバラ紛争 ~テオドール=エディンバラの野望

 エディンバラ公国・国家元首、テオドール=エディンバラ伯爵は、使節団襲撃の報を受けた。オーシア領に入ってすぐ、護衛の衛兵10人、使節団5人の全員が殺害された。生存者も目撃者もいない為、犯人は不明。被害者の傷跡から、武器は主に弓と刀剣。ただ一人だけ、まったく外傷のない変死体があった。オーシア側が調査に当たっているが、報告時点では犯人についての情報はない。


 この件に関して、エディンバラに調査権はない。仮に犯人が捕らえられても、身柄の引き渡しはされず、オーシア国内の法によって裁かれる。10年前、オーシア国内でエディンバラの商人が殺害された事件では、未だに根強い反オーシア感情が残っている。犯人は捕らえられたものの、エディンバラ国内法では第二級死刑に相当するところ、オーシアでは終身刑止まり。被害者がエディンバラ人だから、刑が軽いのでは? と疑う者も多かった。


 テオドールは直ぐに、国内にいる中将以上の全ての将校を招集した。オーシアとの開戦に向けて、具体的な計画が話し合われた。


 エディンバラ公国はその歴史上、オーシア王国の存在自体が脅威となる。オーシアはエディンバラを、正式に独立国と認めていない。エディンバラはあくまでもオーシアの一部で、国家元首は反逆者、国民は解放すべき民という位置づけになる。つまりオーシアはいつ開戦しても、その大義を主張できる。


 この憂いを断つには、極論で言うなら、オーシア王国の滅亡以外にはない。この一見して現実味に薄い大望を、本気で考える存在があった。現国家元首、テオドール=エディンバラその人である。


 テオドールは4年前、31歳という若さで国家元首の座に就いた。4年をかけて産業と税制を整備し、軍備も増強してきた。しかしやや軍備増強に偏重し、財政への圧迫も無視できない。そろそろ軍事上の成果を上げて、投資の回収をしておきたい事情があった。


 そのテオドールにとって、オーシア国内での使節団殺害事件は、良い開戦の機会になり得た。エディンバラによる捜査、容疑者の身柄引き渡しの要求は、十中八九、拒絶されるであろう。それを、開戦の口実とする。被害者に少年、ツァドキアル=バカラが含まれる点も、このケースでは有益に働く。オーシア開戦に向けた世論形成に、大いにプラスとなるだろう。


「しかし閣下、万が一、エディンバラの捜査参加と身柄引き渡しにオーシアが応じた場合には、どういたしましょう?」


「なら、過去に拒否された件で賠償請求も付けてやろう。これで先方も拒絶しやすかろう?」


 宰相の問いかけを、テオドールは不敵な笑みで返した。

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