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第17話 - 3 トールに迫る暗殺者 ~寮への潜入
その深夜、セイはトールの暮らす学生寮近くに潜伏していた。トールの部屋は、帰寮後に付いた灯りで確認している。就寝で灯りが消えて2時間、眠りが深くなった頃を見計らって行動に入る。黒い服と仮面、短い2本の曲刀は、ウィンザー邸を襲撃した時と同じものだ。
何故、トールを殺さなければならない? という疑問が沸く度、瞬時の思考停止に陥り、「トールを殺す」という決断が置かれる。またセイの理性は、この行為を大望の前の犠牲と位置付けていた。不本意ではあるが、仕方がない。あのウィンザー邸に張り込んだ時の夫婦と同じだ。
寮には、警備らしい警備は見当たらなかった。玄関の鍵を静かに破り、寮内に侵入する。トールの部屋の前に着くまで、幸いにも誰とも出くわさなかった。余計に人を殺めずに済んだと、セイはホッとする。
……扉越しに様子を伺うと、微かに寝息らしい音が聞こえて来た。
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