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第14話 - 3 死の恐怖 ~セイ=クラーゼン VS セントーサ

 セイ=クラーゼンとセントーサの試合は、急遽、セントーサの強い希望で実現した。セントーサは最上級生の代表として獅子王杯に出場したものの、シュヴァルツ高等学校のメアリーに1回戦敗退。メアリーはトールに交流戦で敗れている為に、その序列は自ずと下がる。


 セントーサの学年には、常にセイ=クラーゼンが頂点にいた。留学でセイが不在になり、暫定としてセントーサが筆頭に。戻ってきたセイを下し、真の学院筆頭となる! セントーサはセイの影を追い、力を付けてきた。


 場は、学院の室内闘技場。実技講習の空き時間であるため、審判はなし。勝敗は、二人の判断によって決する。


 セントーサは、二刀流。自分のスタイルを貫く。メアリーに使われた教本通りの二刀流対策への対応も、しっかりと練り込んで来た。既に臨戦態勢にあり、鬼気迫る表情からは今日にかける覚悟があった。


 一方、セイは悠然としたもの。姉のエレナと重なる面影はやや幼く、あどけなさの中に知性と意志の強さを内包する。中央から闘技場を見回し、場を懐かしんでいるようだ。


「さて、と」


 セイが右胸を柄にし、真っすぐに剣を立てる八相の構えに入った。セントーサが、眉をしかめる。八相の構えは、1対1の勝負に使われることは少ない。集団戦など、全方位に対応する構えであるからだ。勿論、弱い訳ではないが、あえて選択する理由に乏しい。


 合わせ、セントーサは左の小刀を中段に上げ、右の大太刀を上段に構える。


「……どういうつもりだ? セイ」


「気を悪くしたなら、謝る。徹底的に実戦を叩き込まれてきたから、今はこれの方がしっくり来る」


「承知した」


 二人の呼吸が合い、試合が開始された。


 セントーサが小刀で牽制し、セイの右からの攻撃に備える。この構えからは、一撃目からの突きはない。右最上段と右袈裟を強く警戒し、その他の変化もケア。


 ファーストコンタクトは、あまりにシンプルだった。セイはまず普通に、最上段から一撃を加えた。セントーサは、小刀で受ける。鋭く、重い! 一撃だけで、セイは後方に引く。


 この動きを、セイは剣撃の角度を変え、何度か繰り返した。一撃した後に下がり、二撃目へと繋げない。セントーサはただひたすら、その一撃を小刀で受けるのみ。こう一撃だけで離脱されたのでは、セントーサの迎撃も難しい。


 セイには、勝負とは別の思惑があった。珍しい二刀流を前にし、多人数との戦いを想定していた。複数人を相手にする時は、守勢には回れない。剣を受けて止まれば、致命的な隙となる。ならば一人を相手にしての攻防は避け、一撃で決めたい。


 しかし、さすがセントーサ。攻め気があるならその機を突けるが、防御に専念されたら一撃では仕留められない。


 と、その時、セントーサが大きく踏み込んだ。左の小刀がセイの顔を突く。だがこれは元より、間合いが足りない。入れ替わるように、横薙ぎ気味の右袈裟が襲いかかる。が、セイは左足を引き、右袈裟と正対。八相の構えを下にズラし、難なく受けて見せた。


 セントーサは後退、距離を取る。初撃の顔を狙った小刀は、右の大太刀から意識を逸らさせるフェイク。構えとは逆の左半身への攻撃は、反応が遅れれば対応できない。だがそこは、さすがセイと言ったところだ。


 セイは呆れたように、頭を振った。剣を受けてしまった瞬間に、自分に課したミッションは失敗に終わったからだ。……であれば、後は普通に勝つだけだ。


 セントーサは、その変化を察知した。セイの初動に、意識を集中させる。――八相の構えから、セイが間合いを詰めて来た。刹那せつな、足を払う剣撃が襲う。いつの間に!? 構えの変化を捉えられず、予想外の攻撃。辛うじて、小刀が間に合う……と思ったのと同時に、右袈裟が視野に入る。


 ゆっくりと、セントーサはその軌道を眺めている事しか出来なかった。左胸に強い衝撃が走り、小刀を落とす。鎖骨と肋骨の数本を砕かれた感触。よろけながら、倒れなかったのはセントーサの意地だ。


 勝敗は、決した。だがこの戦場に、主観での勝者は存在しなかった。セントーサはセイに敗れ、セイは自らに課したミッションを、達成できなかったからだ。


予告: 第15話 這い寄る陰謀


 ユリアは、陰謀に手を汚す人間であっても、若者は若者なのだなと感じた。ジャミルを殺したところで、世界統一国家など訪れぬ。妾の後ろ盾が欲しいのだろうが、何をどうする気なのか……。もしやとも思うが、世界統一を目指す戦争など、正気ではないわ。





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