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第8話 - 1 狂戦士、メアリー ~マグドネル、困り果てる

 シュヴァルツ高等学校、臨時教員、マグドネルは困り果てていた。メアリーの様子がおかしい。いや、おかしいと言うならいつもおかしいのだが、今のメアリーは魂が抜けたようだ。目の焦点が合わず、話しかけても無視かカラ返事、意志の疎通すら図れない。


 次の相手が、フレイだからだろうか? マグドネルの知るメアリーは、よく知らない人と接触するのが苦手なのであって、強さに極端に怖気づく感じでもない。あるいはそれ程までに、フレイが特別なのか?


「おい、メアリー!」


 ……駄目だ。反応してくれない。


 ただ意志の疎通が取れたところで、フレイを相手に攻略法も作戦もない。フレイとは、それ程の相手だ。しかしマグドネルは、メアリーの素質はフレイに比較し得ると捉えていた。だからこそ負けはしても、今回の対戦を糧にして欲しい。


 マグドネルは、剣術部を強化する為にスカウトされた元軍人である。50歳を前に軍属を退き、一念発起をしてヌードル屋を開業。あちこちの有名店を食べ歩き、自身が到達した理想とするヌードルを提供したが、客足が伸びない。スープの味を安定させるのが難しく、一発の美味しさはあっても、リピーターを獲得するのには失敗してしまった。


 そこで声がかかった臨時教員の話は、大海で浮木に出会うが如く、願ってもない話だった。一先ずは借金を返済するまで、この仕事を続けようと考えた。と、お世辞にも高いとは言えないモチベーションであったが、彼はメアリーと出会ってしまった。優れた身体能力と、センスの高さ。特にどんな体勢からでも鋭い剣撃を放てる身体操作は、マグドネルであっても再現できない稀有けうな資質だ。


 メアリーという原石に出会ってしまったなら、仕方がない。これを磨ぎあげずに、何が教師、何が師匠か!?


「メアリーさん、闘技場へお越しください」


 係員に呼ばれた。いっそ、棄権するか……? と、マグドネルの脳裏によぎる。こんな状態では大怪我、それ以上の最悪の事態だって起こりかねない。


 スクっと、メアリーが立ち上がった。亡霊のように、フラフラと出口に向かっていく。


「メアリー、お前、大丈夫なのか?」


「……ㇽさない」


 ブツブツと、メアリーの口から声が漏れ出してきた。ほとんど何を言っているのか判別が付かなかったが、何度か、「あの女、許さない」と聞こえた。


 ……フレイに、何か恨みでもあるのか? 困惑しながら、マグドネルはメアリーの背を追った。


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