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第6話 - 4 絶対王者、フレイ無双 ~ジャミル=ミューゼルを狙う影

 自分の試合が終わって早々、フレイは職務に復帰した。そのまま休んでいても良かったのだが、今日は重要な護衛のある日。自身の居ぬ間に、何かが起こられては困る。


 オーシア王国、王位継承権2位の『ジャミル=ミューゼル侯爵』は、穏健派・経済通として知られている。昨年、発表した5か国で形成する巨大経済圏構想は、ジャミル案と呼ばれ各国でも推す声が大きい。


 現在の公平な競争を基調にする国際経済は、仮に勝ち組となっても得られる富は限られている。競争ではなく、協調によって弱者を引き上げ消費者として経済圏に参加させた方が、結果として得られる富の総量が大きくなる。という、経済学者:アダミスの理論を現実化させる、世界で初めての提言である。


 但し、これには経済援助など、短期的には強国の負担が大きい。援助を受けて強化された国が、戦争の火種になりかねない懸念もある。弱国は、未だ遺恨の強い敗戦国でもあるからだ。実現への道のりは険しく、遠いと言わざるを得ない。


 また優れた才覚の人物であれば、当然、王位継承権1位を差し置いて、次期王に望む声もある。……これだけの条件が揃えば、政敵も増える。命を狙われる理由は、一つや二つではない。


 護衛に当たるフレイには、ジャミル構想はよく解らない。ただ世界が豊かに平和になると言うなら、ぜひ実現して欲しいとは思っている。少なくとも国の上に立つ人間の誰かは、彼のようでなければならない。無論、職務である以上、護衛対象が誰であっても私情を挟むつもりはない。しかし、この胸に来る誇らしさは、中身のない王族や貴族では込み上げようのないものだ。


 ジャミルを乗せた馬車が、郊外の林道に出た。木の陰から覗く男は、護衛団の中に馬上のフレイを確認する。


「……今日は、いないはずでは?」


「大会が終わって、護衛任務に回ったのでしょう」


「チッ、真面目な奴め」


「……どうしますか?」


「どうもこうもない。取り止めだ」


「しかし、貴方様ならフレイが相手だって……」


「馬鹿を言え。私は武を競うために、こうしているのではない。……撤収するぞ!」


 男たちは、馬車と護衛が通り過ぎるのを待って、散り散りに消えた。


予告: 第7話 トール VS ショーン


 ……やはりだ。ショーンはあからさまに、トール・ハンマー対策を敷いてきた。上段に振り上げたら、なりふり構わず射程圏から離脱する。単純な発想だが、極めて効果的だ。



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