表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/167

第36話 - 1 終戦 ~脱出計画

 オーシア王城の戦い十日目。既にオーシア軍は約半数の兵を失い、その中には学生兵も含まれていた。王城の防衛が難しいと判断したオーシア中枢部は、王城と首都の放棄を決断。外に出て潜伏した兵と合流し、北に向かう。既に逃げ落ちたドゥリン=オーシアの元、改めて決戦の機をうかがう。


 しかしそれには、混成軍の包囲網を突破しなければならない。王族らの脱出を最優先とし、出来るだけ多くの兵を逃がす。ただその成功には、明らかに疑問符が付いた。あまり現実的とは言えない計画に、降伏を訴える声も上がった。しかし混成軍が行ってきた虐殺と略奪の事実を前に、それは泡のように消え去る。


 王立騎士団も犠牲者は出しているが、主要メンバーは生存。アイゼキューター、フレイ、ヘラグ、シンシアも健在であった。またアラド=クラーゼン学院、現筆頭:ルイーゼは何故か王立騎士団に混ざって参戦。実力を認められ、立派なメンバーの一員のような顔をしている。


「……次こそ、さすがに死ぬかもな」


 今回の戦いで初めて、ヘラグが弱音を吐いた。あまり深く考えた発言ではなかったが、そこには生き残ろうとするより、死を覚悟した方が生存確率が上がるという感覚があった。


「死ぬには良い日だって、何かでなかったっけ?」


 フレイは飄々(ひょうひょう)として、何も変わらない。もし何も知らずにこの表情と声だけで判断したら、カフェでの世間話あたりに思うだろう。


「初めて聞いたが、カッコイイな! それ!」


 ヘラグは目を閉じ顔を決め、両手を組んだ。


「ふっ、死ぬには良い日だ……」


 パンッ! 後頭部をシンシアにはたかれる。


「痛ッ! 何しやがる!!」


「あんたが死んだら、皆んなが困るんだから! 勝手に覚悟を決めないで!」


 ?


「……そうだな。シンシアが正しい」


 ヘラグとフレイは笑った。あえて死を覚悟する者、死を恐れる感覚すらない者、必死に生き延びようとする者、人間性や思いはそれぞれだが、誰も諦めていないのは間違いなく救いだった。


 ヘラグはふと、トールを思った。トールの実力なら、簡単には死なないだろうが……。敵を倒す、自分が生き残る以外の、余計な事をしそうなヤツではある。

♪ この作品を読んで、「面白い!」、「続きが気になる!」、と感じてくださった方は、下の「☆☆☆☆☆」から、応援をお願いします。


 ブックマーク、ご感想なども、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ