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第35話 - 1 戦果と代償 ~見えない統率者

 オーシア軍、エディンバラ軍、双方にとって流刑島兵の存在はイレギュラーだった。流刑島に渡った使節団は、実は流刑島兵の徴用には消極的だった。流刑島をオーシア兵の潜伏場所にした時点で、1万に満たない流刑島兵の存在には、利益以上のリスクを感じていたからである。


 彼らが裏でエディンバラとも交渉し、密約を交わしていない保証などない。あるいは戦況不利と見るや、保身の為にエディンバラに寝返るのではないか。さほど大きな加点は期待できず、外れを引いた時の減点が遥かに大きいとなれば、誰でも二の足を踏むだろう。


 モフの小説にある流刑島兵の強さについては、使節団は眉唾ものと捉えていた。小説を面白くするために盛ったのか、あるいはモフの故郷への肥大化した幻想だろうと。いくら練兵されているとは言え、そこは閉鎖された空間。大陸の兵力に及ぶとは想定し難かった。使節団長は、ジャミルに「流刑島兵の徴用は危険でもあり不要」と進言の書を送ろうとしていた。


 しかしその思いは、彼らの訓練を目の当たりにして変わった。一人一人の兵がオーシアの精鋭に並ぶ屈強さを持ち、加えて部隊としての異質さが際立っていた。集団として意識を共有し、迷いもなく緻密な連動性を見せる。その成熟度は、練度の高さという概念を超えていた。


 流刑島兵首領:ガラリアの異能、『見えない統率者』。ガラリアと血縁関係にある者は、ガラリアの意識が共有される。詳細な意図を、時間差なしに伝達できる。この異能は血統に沿って、ある法則性をもって発現する。その法則性については、いくつかの仮説はあるものの解明はされていない。


 流刑島兵は、ガラリアと血縁にある者を小規模の部隊長として配置。彼らが部隊を統率することで、ガラリアの意思が高度な形で作戦行動に反映される。但し、指揮官が凡庸であれば意味を成さない。また迷いや動揺も伝達される為、この異能が作戦行動に有益であるか否かは、持ち主の資質に掛かっている。その意味で、ガラリアは異能が確認されて以来、最高の傑物であった。


 その成果は、初陣で如実に表現された。敵中央を突破し、退避するエディンバラ兵に紛れて門を通過してしまったのである。

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