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第34話 - 2 首都、攻防戦2 ~戦場に芽生えた恋心

 オーシア王城の戦い六日目。北城壁に続き、西城壁も同様の崩壊を見せた。明らかに老朽化と見られるその現象は、何らかの薬品か異能に拠るものと思われた。南城壁でも、その兆候が見られている。


 現状では混成軍の侵入を防いではいるが、何時まで均衡を保てるかは判らない。城内から三万の兵を失ったのは、やはり痛手になる。


 兵士官学校、アラド=クラーゼン学院などの学生兵らは、城内に待機し戦闘には参加していない。しかしこのままでは、どこかで投入の決断を下さなければならないだろう。


 エレナ=クラーゼンは自ら志願し、西城壁にあった。何としても、子供たちの参戦を避けたい。避けられなくても、できるだけ負担を軽くしてやりたい。敵味方が交錯する最前線に出ようと、足を前に出す。その肩を後ろから掴まれた。


「ちょっとお姉さん、まだ一般人は引っ込んでな! 防具もなしに、死にに行くようなものだぜ!」


「防具? 攻撃を当てさせなければ、問題なかろう?」


 エレナの不敵な笑みに、兵士は呆れた。この場にいるからには、道場か何かで腕に覚えはあるのだろう。しかし戦場は、お行儀の良い道場とは世界が違う。慢心の勉強代が命では、あまりに不憫だ。


「お姉さん、少しは腕に覚えがあるんだろうが、強がりを言うもんじゃないぜ! あんたみたいな美人さんに死なれちゃ、いくさに勝って生き残る意味なんてないだろ?」


 兵士は、最高のキメ顔で爽やかに笑った。……という自己評価なんだろうなぁ~とエレナは思った。


「さて、いっちょ死線でも超えて来ますか……」


 伸びをしながら、兵士は前線に足を向ける。おもむろに振り返り、


「もしこのいくさで生き残れたら、取って置きのワインを空けるんで付き合ってくれよ!」


 二度目の爽やかな笑顔が決まりかけた時、前線から混成兵の一人が飛び出してきた。背中を向け、隙だらけのオーシア兵に斬りかかる。


 逆飛燕ぎゃくひえん


 エレナは踏み込みながら体を反転させ、頭部中心をぎ払った。呆然と、口を開ける兵士。せっかくの今一つ決まっていないキメ顔が、まるで台無しだ。


「ああ、いいよ! 取って置きのワイン、期待しておく。これで、終わってからの楽しみができた♪」


 その瞬間、兵士は人生で最大の恋に落ちた。

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