第32話 - 3 大攻勢 ~奇岩群の上の悪魔
ロルド要塞に接近したオーシア兵は、揃って息を呑んだ。要塞の左右には巨大な奇岩群がそびえ立ち、絶壁を成している。要塞に入るには、その中央の城壁を突破するしかない。この構造自体は、事前に知っていた情報である。
オーシア兵を驚愕させ怖れさせたのは、奇岩の上に備えられた落石兵器だ。あの険しい地形でどのように成し遂げたのか、視認できるだけで五つの巨大な岩が、下を通る侵入者を待ち受けている。
下から落石兵器を破壊しようにも、岩は細長い金属で固定されておりその根元は死角になっている。破壊するには、奇岩を登って接近する以外に方法はなさそうだ。
一度、落とさせてしまえば、そう容易く次弾は用意できないだろう。しかし自国兵士を、死ぬと解っていて捨て駒にする。オーシアに、そのような非人道的な合理性はなかった。
落石兵器に付くエディンバラ兵が、立ち往生するオーシア軍をせせら笑う。
「へへへ、遠慮せず攻めて来な!」
「こいつを取り付けるのに、こっちは何人か死んでるんだ。オーシアの奴らを踏み潰さなきゃ、あいつ等も浮かばれねえよ」
その時、一人のエディンバラ兵が単独で奇岩に登る男を見つけた。
「ん? 見ろ、何だアイツ?」
「偵察じゃないか?」
「あんな所に上がっても、何も見えんぞ」
その男はロープを下に垂らすと、人の背の軽く倍はあろうかという長い棒状の物を引き上げた。その様子から、かなり重量もありそうだ。
男はそれを高く振りかぶり、無造作に少し離れた奇岩の端に振り下ろした。その先は、数秒の出来事だった。轟音と共に、振り下ろされた先の奇岩は消失。それに支えられていた奇岩群はバランスを失った。
右方の落石兵器2つが落下。配置のエディンバラ兵は、一人残らず巻き添えになった。
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