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第31話 - 5 戦死 ~自分の命よりも

 休暇期間が終わり、トールはエディンバラ方面軍と合流した。先の功績をもって、階級は少尉から中尉に昇進。十人隊には90人が加算され、百人隊長となった。その際、トールはミラン中将にメアリーの加入を打診。その願いはあっさりと聞き入れられ、メアリーは副隊長に就いた。


 トール百人隊は、徹底的に死なない負けない戦い方を叩き込まれる。そこでメアリーの抱えている問題が表面化した。メアリーには、他人と組んで戦う適性がない。他人に少しでも合わせようとすると、極端にパフォーマンスを落としてしまう。メアリーが実力を発揮するには、自由を与えなければならない。それが、トールの下した結論だった。


 メアリーには、受けに秀でた二人が付けられた。メアリーは自由に戦い、二人はそれに合わせて死角を守る。これはメアリーの戦力を考慮すれば合理的ではあったが、それ以前にメアリーを死なせまいとするトールの贔屓ひいきも大きかった。


 早朝訓練を前に、トールが百人隊に向けて訓辞を送る。


「この部隊に、命知らずは要らない! 諸君らにも、家族があり人生がある。諸君らは、国を守るため家族を守るために、戦場に立つ選択をしたのだと思う。ぼ……私は諸君らの命を軽んじはしない。自らの命を守り、国を守り、家族を守れ! オーシアに栄光を!!」


 トール百人隊は手にした武器を掲げ、獣のごとき喚声かんせいが上げた。中には、これまでどのような目に遭わされてきたのか、号泣する者の姿もあった。指揮官によっては、兵を消耗品としか扱わない者もいる。気に入らない兵に無茶な命令を下し、わざと命を落とさせる者もいる。


「トール!」背後から、メアリーが声をかける。「私は自分の命より、トールの命を守る!」


 その言葉を否定しようとし、トールは声を発する前に諦めた。言ってどうなる顔ではないと、すぐに察せられたからである。


「解った! じゃあ僕は、自分よりもメアリーを守る!」


 その言葉を否定しようとし、メアリーは声を発する前に諦めた。言ってどうなるトールではないと、予め知っていたからである。二人は拳をぶつけ、笑い合った。

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