第31話 - 3 戦死 ~絡み合う三国の思惑
トリッツ城の奪還は、オーシアにとって大きな転機となった。これによりパンナロッサ方面の国境線を、開戦前の状態に回復。差し迫るガロン帝国の参戦が回避された。
オーシアは必要十分な戦力をもって、パンナロッサとの国境線を維持。戦力をエディンバラに集中させ、失った領地の奪還へと動き出す。
トールの所属する第六歩兵隊はトリッツ城には留まらず、エディンバラ方面へ編入された。
一方、エディンバラとパンナロッサに、新しく大きな動きは見られない。トリッツ城の陥落により計算が狂い、新しく打つ手がないのでは? と、オーシア内では楽観論も広がる。
同時に、流刑島にも大きな動きがあった。秘密裡に入島したオーシア使節団により、交渉が進展。流刑島民全員のオーシア市民権と、現島民による自治権。そして多額の開発援助と引き換えに、オーシア兵としての参戦が約束された。
『流刑島の濃霧』を執筆したモフの情報が詳細であった為、交渉は入念に準備された。交渉の席に座り蓋を空ければ、ほぼ細部を詰める作業であった程である。
しかしその中、エディンバラ公国・国家元首:テオドール=エディンバラ伯爵の計画は、オーシア情報網の外にあった。
エディンバラとパンナロッサは、軍事条約の締結を機に交易を盛んにしている。その交易の荷に紛れ、パンナロッサ内にエディンバラ兵が流入。約7万人の兵が農民や商人に偽装し、あるいは姿を隠して潜伏している。
三国の思惑が絡み合い、戦況は次の大きなうねりを迎えようとしている。
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