表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/167

第30話 - 4 トールの長期休暇 ~どちらかが恋人なんですか?

「トール!」


 聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはメアリーの姿があった。銀のおかっぱ髪は背の中ほどまで伸び、顔つきは凛々(りり)しさを増している。細身のより鍛え上げられた肉体と気配から、破格の強さが伝わってくる。トールは、感嘆せずにはいられなかった。


「驚いた! 久しぶりだね、メアリー! ……それに、何だか見違えたね。でも、どうしてここに?」


 トールは、後ろのシンシアに目をやる。


「トールが休みで戻って来るって、教えてあげたの。そうしたらメアリー、どうしてもトールに会いたいって……」


「ちょっと、シンシア!」


 慌てて、顔を赤らめるメアリー。どうやら大人っぽくなったのは外見だけのようだと、トールは安心した。


 トールとメアリーは、互いの生存を喜び合った。メアリーの話から、エディンバラ公国方面の防衛戦は均衡状態にあると知る。ここ数か月は小競り合いで大きく仕掛けても来ず、逆に不気味だと皆がささやいている。


 メアリーはまだ戦場に慣れず、思うように実力を発揮できていないらしい。剣術の試合と戦場とは、まったく違う世界。メアリーほどの存在であっても、やはり時間はかかるのだろう。


 ――ふと、黙していたルイーゼが、口を開いた。


「あの、トール先輩。つかぬ事をお尋ねしますが、シンシア先輩とメアリーさん、どちらかが恋人なんですか?」


 場の空気が、一瞬にして固まった。


「だってさっき、シンシア先輩とどうなんですか? って訊いた時も、何だかイエスともノーとも答えずに態度が曖昧だし、メアリーさんともそんな空気が流れてるし……」


 いきなり、何をぶち込んで来るんだ!? この子は!! トールは言葉に窮した。シンシアとはあの夜以来、特にそういった話はない。戦う前に変に動揺してああなっただけで、恋人気取りは迷惑かも? そう考えて、踏み込めずにいた。メアリーとは、モスリナの件以来、やはり少し意識はしているけれど……。


「あの……」重い空気の中、メアリーは消え入りそうに声を発した。「それが気になるって事は、ルイーゼさんもそうなの?」


「いえ、私はトール先輩とは会ったばかりですし、まだ恋愛感情っていう感じじゃないです! でも正直、トール先輩って凄くてカッコイイですし、性格もめちゃくちゃ良いじゃないですか!? もしもフリーだったら、狙っちゃおうっていうのはありますよね! で、どうなんですか?」


 メアリーは、あまりの文化圏の違いにフリーズした。シンシアは、何てオープンな子なの!? と呆気に取られた。

♪ この作品を読んで、「面白い!」、「続きが気になる!」、と感じてくださった方は、下の「☆☆☆☆☆」から、応援をお願いします。


 ブックマーク、ご感想なども、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ