第30話 - 3 トールの長期休暇 ~ルイーゼ、シンシアに心酔する
「……それで、その子が付いて来てるって訳ね?」
「はい、ですから決して、学院で若い女の子をナンパしたとか、そういう話ではなく……」
学院での一日が終わり、トールは待ち合わせのレストランにいた。4人掛けのテーブルに、正面にはシンシア、左隣りにはルイーゼの姿があった。
大ホールでの講演の後、トールは多くの生徒たちから質問攻めに合った。その中でも特に熱心だったルイーゼの情熱にほだされ、この状況を作ってしまった。
確かに、二人きりとは約束していないけど……。シンシアは申し訳なさそうに小さくなるトールとルイーゼの姿に、力が抜けた。
「ええ、構わないわよ! 私は卒業生のシンシア。よろしくね、現学院筆頭さん」
シンシアは、握手を求める。ルイーズは応じて、
「ありがとうございます! ルイーゼです! 本日は何というか……、急に割り込んでしまってゴメンナサイ!」
深々と頭を下げた。
「シンシアさんって、あの藍玉蜂、王立騎士団のシンシアさんですよね!? 私、ずっと憧れてたんです! 今日はお会いできて、光栄です!」
僕のファーストコンタクトと、ずいぶんと反応が違わない? それに常識がないという訳では、なかったんだな……。トールは思った。
その後、ルイーゼはトールを解放し、シンシアに照準を合わせた。遠慮なく踏み込み、質問の雨を浴びせる。シンシアは少しも嫌がる素振りを見せず、むしろ嬉々として応じる。単純に、女の子同士のお喋りが楽しそうだ。どうやらルイーゼは騎士志望、できれば王立騎士団に入りたいらしい。
「トールは在学中に王立騎士団に招かれて、一緒に要人警護もしたのよ」
「凄いじゃないですか! トール先輩!!」
ルイーゼはトールに、ここに来て最高の尊敬と称賛を示した。
「……そうかな?」
モスリナとかトリッツ城とかの話がある中で、その序列はおかしくない? と思ったが、この子は何よりも王立騎士団なんだろうと納得した。
「あ、そうそう……、今日はね。実は私ももう一人、呼んでいるんだ! そろそろ来ていると思うから、少し見てくるね!」
シンシアは立ち上がり、出入り口の方に向かった。後ろ姿が離れるのを見て、そっとルイーゼが小声で尋ねる。
「トール先輩、やっぱりその……シンシア先輩とは恋人同士なんですか?」
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