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第5話 - 4 獅子王杯、初戦 ~メアリー、「あ、これ」

 大会二日目、獅子王杯、一回戦。シュヴァルツ高等学校1年生:メアリー VS アラド=クラーゼン学院3年生:セントーサ。


 オッズは、メアリー2.20、セントーサ1.61。実はオッズを設定するオッズコンパイラーは、メアリーの情報をほとんど持っていない。ただシュヴァルツ高等学校の格と、初出場の1年生である事を基準に、これくらいの有利不利だろうという数字を設定している。


 稀にであるが、未知の強者が実力に合わないオッズを付け、大穴を開けるケースも発生する。ケヴィン1.05、トール21.0などは、その最たる例だ。


 オッズコンパイラーが、メアリーを知らないのにも無理はない。先だってのクラーゼン学院との交流戦が初の対外試合であった以前に、そもそも高校入学まで、メアリーは人と手合わせをしていない。それまでは完全に独学で知識と技術を身に付けていたという、極めて稀な経歴の持ち主であった。


 切っ掛けは、些細なものだった。書店で剣術雑誌をたまたま見かけて、何となく開いてみた。何となく面白そうだったので購入して、見よう見まねで練習。1年ほど続けてシュヴァルツ生となり、思い切って剣術部の門を叩いた。という経緯だ。


 クラーゼン学院のセントーサは、珍しい二刀流の使い手である。学院内で伸び悩んでいた彼は、二刀流に切り替え、一気に才能を開花させた。


「両者、前へ!」


 対峙するメアリーとセントーサ。メアリーは、初めての二刀流に戸惑う。左手に小刀、右手に大太刀、どう戦えば良い? セントーサは、間近で見るメアリーの上背に驚く。まずは間合いに慣れて、勝負はそれからだ!


 メアリーは、「先生、二刀流って、どうすれば良いんですか?」という気持ちを、視線で送る。先生はダイナミックに、太刀を振るう動作で返す。この意図は、メアリーにも正確に受け取れた。「気にするな。思いっきりぶっ叩け!」だ。……この人、本当に指導者なのかな~?


 セントーサは正対し、左手の小刀を腰の下、右手の大太刀を大上段に構えた。とりあえず、メアリーは無難に中段で応じる。


「始め!」


 試合開始の合図。


 セントーサは、自分からは仕掛けない。小刀で相手の一刀をさばき、大太刀を振るうのを基本戦術とする。まずは受けに徹し、メアリーの間合いを身体で把握したい。


 メアリーは迷った。クラーゼン学院の代表だけあって、隙が見えない。がら空きの中段も、明らかに誘いだ。


 えっと、えっと、確かこれは……。メアリーは必死に、記憶を呼び起こす。二刀流戦術とその対応が、どこかにあったはずだ。


……相手が動かないと見るや、セントーサは腰下の小刀を、中段に上げる。その構えた姿が、記憶に合致した!


 あ、これ『真剣ゼミ』でやったところだ!


 メアリーは相手の右側に回り込み、突き技を放つ。左手の小刀を避けながら、ただひたすら突いて突いて突きまくる! セントーサは歩を合わせ、さばく……が、応手が間に合わない。7撃目が突きの変化から左手首を打ち、8撃目が心臓の上を突いて、勝負はあった! 終われば、あっけない幕切れとなった。


 やってて良かった、真剣ゼミ! メアリーは上空を仰ぎ、顔も知らぬ赤ペン師匠に感謝を捧げた。


 さっと見渡し、トールの姿を探す。……見つけた! 笑顔で手を叩いて、祝福してくれている姿に、脳がとろけそうになる。


 メアリーは誇らしげに笑み、切っ先をトールに向けた。私のカッコイイところ、見てくれた!? トールはそれを、リベンジに燃える自分への挑発と受け取った。まあ、普通はそう思う。


「ああ、やろうぜ!」


 トールも、右こぶしを突き出して応えた。


予告: 第6話 フレイ無双


「じゃあ、試してみますかね……っと!」


 とりあえずフレイは、ごく普通に打ち込んでみる。キンッ! かん高い打撃音と、人の肉とは思えない頑強な感触。何度か場所を変えて打ってみるも、結果は同じだった。




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