第28話 - 4 トリッツ城の攻城戦 ~強いて言うならの策
――TH2に城壁を破壊された直後。
パンナロッサ軍は、指揮官を含めて狼狽の極致にあった。早々に城壁が破壊される展開など、誰も想定していない。トリッツ城の堅守を失っては、数的優位にあるオーシアに情勢は大きく傾く。またオーシアの得体の知れない新兵器の存在は、容赦なく兵の士気を挫いた。
「急げ! 破壊された城壁前に防御陣を張れ!」
トリッツ城、最高指揮官:ナザレンコ=ズミ少将が叫ぶ。
「なりません、閣下……」
「何故か! カチュア少尉」
「壁を壊された以上、数に勝るオーシアに分があります。士気の低下も著しく、これではまともな戦いにすらなりません」
「だからと、この城をむざむざと明け渡しては王に顔向け出来ぬ! 何か策はないのか? その為の参謀だろう?」
「今から間に合う策などありません。ただ強いて言うなら……」
カチュアはナザレンコに耳打ちした。万が一にも、味方にも明かせぬ内容があった。ナザレンコの顔が歪む。
「いや、まさかそのような……」
「ですから、強いて言うならです。気が進まないのでしたら、お止めになりますか?」
「……了解した、カチュア中尉。任せる」
カチュアは、氷のような作り笑いを浮かべた。
「承知しました。手筈は、既に部下に任せてあります。私は、もう一仕事を済ませに行きます」
「どこに行くのだ?」
「敵部隊との交渉です。同じ逃げるでも、出来るだけ条件を有利にしたいですからね」
♪ この作品を読んで、「面白い!」、「続きが気になる!」、と感じてくださった方は、下の「☆☆☆☆☆」から、応援をお願いします。
ブックマーク、ご感想なども、とても嬉しいです。