第5話 - 3 獅子王杯、初戦 ~ケヴィン、敗戦の報
「ケヴィン、敗れる」の報は、即座に他の選手たちに響き渡った。ケヴィンと言えば、本命のフレイさえいなければ、優勝候補にも挙げられる実力の持ち主である。不運や相性で、学生に敗退する剣士ではない。
必然的に、無名だったトールに関心が集まる。トールとは何者か? 誰か、戦った者はいないのか? 特にトールと対戦する可能性のある者にとって、その情報は死活問題だ。
「へえ、ケヴィンに勝った学生さんね。どんな試合だったの?」
その一報は、フレイの耳にも届く。
「私も自分の目で見てはいないので判らないのですが、ケヴィン優位が、最後の最後で一撃で敗れたのだとか」
「油断でも、したのかしら? ケヴィンらしくない」
「いえ、何でもその一撃は、凄まじい剣速だったと聞いています。油断したとは、言い切れないでしょう」
「面白そうじゃない! 私と当たるのは……、準決勝だったかな?」
世代最強の呼び声高いフレイにとって、獅子王杯の優勝は、半ば既定路線となっている。今年も優勝すれば、昨年からの二連覇を達成する。しかし主な出場選手は、どれも知った顔ばかり。現時点での序列は、とうに出来上がっている。まだ知らぬ強敵の出現は、多少なりともフレイの心を躍らせてくれた。
そろそろ、休憩時間も終わる。フレイは残った紅茶を一気に飲み干すと、立ち上がって伸びをした。風が吹き、長いプラチナブロンドが暴れる。先ほどと変わらない澄み切った青空が、より明るく鮮やかに写った。
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