第28話 - 2 トリッツ城の攻城戦 ~トール・ハンマー! TH2
パンナロッサ兵は、その異様な出で立ちに気味の悪さを覚えた。攻城塔であるには違いないだろうが、あの細さでは一人分のスペースしかない。人数を必要としない戦術なら、火か毒あたりか? しかしそれなら、弓で外から打ち込めば済む。
現実に目の前にあるのだから、何かしらの目的はあるはずだ。一先ず、パンナロッサ兵は相手の出方を待つ事にした。
トールは攻城塔、最上部の隙間からパンナロッサ兵を窺った。城壁上に集まり、こちらを注視している。表情からは緊張と不安とが読み取れた。
腰の縄の結び目を確認し、TH2を引き上げる。腕と肩がきしみ、痛みが走るが問題はない。この重量と動きに、トールの筋肉はようやく対応してきた所だ。足を二回鳴らし、準備完了を下の兵士に伝える。数秒後、ガタっという音が聞こえた。
攻城塔の先端部分が折れ、城壁に倒れかかる。隙間から、パンナロッサ兵が左右に散っていくのが見えた。……そうだ、早く逃げろ!
トール・ハンマー! TH2
落雷のごとき轟音と共に、城壁の一部が消失した。あまりの非常識な光景に、事前に知らされていたオーシア兵までもが絶句した。パンナロッサ兵に至っては、目撃した大多数が状況を飲み込めずにいた。
迅速に突撃するはずの、オーシア兵の足が止まった。砂埃で視界が利かない。数十秒後、ようやく視界が回復する。瓦礫の山を越えるくらいのイメージをしていたのだが、瓦礫らしい物は見当たらない。地面はひび割れ陥没、指揮官は判断に躊躇した。
――倒れずに残された支柱と、縄で宙吊りとなるトール。地面の様子が確認でき、縄をナイフで切断。地に降り立ち、突撃するはずだった部隊に合流した。城壁上の弓兵は、トールを射止める最大の機会を逸してしまった。
「素晴らしい! 圧倒的ではないか!? トール・ハンマーハンマー!!!」
キャン中佐の心の絶叫が、辺りに響き渡った。
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