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第27話 - 3 ヒアリ平原の戦い ~ささやかな異能

「ヘラグさん、入り過ぎです!」


 後方のトールの声に、ヘラグは足を止めた。気付けば周囲は敵だらけ、自身は孤立しつつあった。冷静だったつもりが、初の戦場で舞い上がっていたらしい。


 これを機と4人のパンナロッサ兵が、四方から一気に襲いかかる。ヘラグは体を落とし旋回、全員の脚部を切断した。


 異能、『風追い』。不完全な真空を作り出し、その空間に風を呼び込む。剣を後方から押し、加速させる。


 ヘラグが自身の異能に気付いたのは、11歳の頃だった。それまで何となく、空間には密度があるような気がしていた。ふと、自分はこれを下げられると思った。特定の空間に試してみたところ、確かに密度が下がった感覚がある。そしてその空間に向けて、風が吹いた。


 だが、それだけの事だ。風とは言ってもそよ風を強めた程度で、女子のスカートすらめくれない。取り立てて、何の役にも立たなかった。


 世の中で異能と言っても、その種類は様々だ。職業や戦いに有利になるものもあれば、実用性に乏しいものも多い。むしろ殆どが、何の役にも立たないか、大して役に立たない。ヘラグのそれも、その一つと思われた。


 しかしヘラグは、せっかくの才能だからと色々と試してみた。すると空間の大きさと風力とが、反比例すると気付いた。空間を縮小させるほど、風力が上がる。これでようやく、火を起こす時に便利くらいの存在にはなった。……スカートめくりの方は、若気の至りでチラっと脳裏にはよぎったが、そんなものを喜ぶ自分に嫌気がさして実行には移さなかった。


 異能の技にまでそれを昇華させたのは、王立騎士団に入る二年前である。剣速、鋭さを更に極めんと模索した時、半分、忘れかけていた自身の異能が思い当たった。空間の縮小を剣身のみねにまで細くすれば、どうなるのだろうか?


 結果は、異能としてはやや物足りない二割増しといったところ。しかしこの二割増しによって、ヘラグは並の一流から、突出した一流への扉を開いた。


 ――トールが駆け寄り、ヘラグの背中につく。


「おう、悪いなトール!」


「そんな戦い方をしたら、いつかはやられます! 自分を過信する人は、長生きできませんよ!」


 戦場ではトールが先輩だな……と、ヘラグは心の中で苦笑した。

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