第26話 - 5 南のパンナロッサ ~俺たちが死ぬのも想定内だ
「おい大佐殿、これじゃ俺たちは後ろにいて、何もするなって事じゃねーか!」
作戦の配置図を見たヘラグが、参謀長に詰め寄る。
「しかし、王立騎士団のお二人に何かあっては……」
「大佐殿は、俺の話を聞いていなかったのか? 俺たちはここに、実戦を経験しに来てんだ」
「しかし、戦場の空気に直に触れるだけでも得るものはあると思いますし……」
「はぁ!? お前、こっちが素人だと思って馬鹿にしてんのか!」
「そのような事は、決してありません! 王立騎士団は王族の盾となり、守られる立場の方々。万が一にも、失うような事があってはなりません!」
はぁ~と、ヘラグは大きな溜息をついた。
「あのな? 王族のお坊ちゃんが、形だけの軍人ごっこをしに来たんじゃねーんだ。ここで戦場で経験を積めずに帰って、そのせいで国王の護衛に失敗したら、お前に責任なんか取れねーだろ?」
「しかし……」
ここで、ヘラグは察する。
「安心しろ! 戦場に送る以上、俺たちが死ぬのも想定内だ。誰の責任にもならねーよ」
解り易く、参謀長の表情が晴れた。こういう解り易い人間らしい人間に、ヘラグはむしろ好感を持つ。まあただ、上官には持ちたくない。
「じゃあ俺たちは、ここが良い!」
ヘラグが指をさしたのは、中央の最前列。ちょうどトール小隊の配置される場所だった。
予告: 第27話 ヒアリ平原の戦い
トールは迷う。自身の感覚を信頼するなら、そのオーシア兵は紛れ込んでいた敵だ。しかしそれは、どこまで信じられるのか?
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