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第26話 - 3 南のパンナロッサ ~増援

 オーシア軍がトリッツ城を陥落させるには、まずヒアリ平原を抜けなければならない。ここで課題になるのが、中途にある傾斜である。約70メートルの傾斜はオーシア側からは上り坂となり、不利は避けられない。互角の戦力で当たれば、まず押し負ける。


 今、オーシア軍本陣では、作戦会議が開かれていた。とは言うものの、十人隊長以上が集うこの会議は、基本的には何かを決めるものではない。千人隊長以上の会議で決定された事項を、細部にまで行き渡らせるのが目的である。


 ただ今回については、作戦らしい作戦はない。傾斜の不利を覆す戦力差をもって、平原を制圧する。これといった工夫もなく、極めてシンプルだ。予定される1万の増援が到着次第、作戦は実行される。


「……以上が作戦の全てであるが、一つ、付け加えておく事がある。今回の作戦には、若干名ではあるが王立騎士団のメンバーも参加する」


 会場内が、わずかにザワめく。王立騎士団と言えば、選りすぐりのエリート集団である。主に王族の護衛を任務とする、役柄としては近衛隊のようなものだ。


「何故、王立騎士団がここに?」


 百人隊長の一人が、皆の疑問を口にする。


「私にも理由は……」


「俺が説明してやるよ!」


 天幕の出入り口から、威勢の良い男の声。そこには、やや小柄な若者の姿があった。


「ヘラグさん!」


 思わず、トールは立ち上がる。ジャミル=ミューゼル護衛任務以来の再開だった。


「おう、トール! めっちゃ久しぶりだな!」


「はい、ヘラグさんもお元気そうで」


「まあな! もう一人、いるぜ?」


 ヘラグの後から、青い髪の女性がひょっこりと顔を出した。青い髪の女性――シンシアは、皆に軽く会釈をし、トールに向いて僅かに笑んだ。


 シンシアの容姿に、男性陣から「オー……」という空気が漏れる。


「シンシア……」


 王立騎士団からと聞いて、もしかしたらとは思ったが、まさか本当にシンシアが来るとは……! トールの心境は複雑だ。久しぶりの再開を喜ぶよりも、シンシアが戦場に在る不安の方が大きい。


「俺は王立騎士団のヘラグ、こちらの可愛らしいお嬢さんは同じく王立騎士団のシンシアだ。重大な作戦に増援があるのは聞いているが、俺達は別口だ。騎士団なんてやってると、実戦に乏しくてな。そこで実戦訓練代わりと、俺たち二人が派遣されたって訳だ。だがまあ、遊びで来ているつもりも、足手まといになるつもりもないから、そこは安心してくれ!」


 反応に困り、静まりかえる兵士たち。


「あの、皆さん、よろしくお願いします!」


 空気を察し、慌ててシンシアは深々と頭を下げた。横のヘラグの足を軽く蹴飛ばし、頭を下げさせる。二人の間には、先輩も後輩も関係ない力関係があるようだ。


 一先ず、兵士たちは歓迎の姿勢となった。何はともあれ、心強い味方であるには変わらない。

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