召喚School!
朝起きたら隣に女の子がいた。
朝から嫌な汗が出る。
まず自分の体を見た。
いつもどうり真っ白いTシャツとトランクスだけで寝ていた。次に少し奥にある机を見た。そこにはカップラーメンが2つ…。いつも必ず2つは食べる主義だった。好きなカップラーメンは赤いき○ねである。誰に言ってんだ。最後に彼女の体を見た。言い訳に聞こえるかも知れないが、オレも思春期の男だ。胸はCほどだ。服は着ていた。ホッとしたがそれと同時に驚愕した。メイド服…
「おはようございます。ご主人様。」
寝ぼけた声で言う。オレは必死にこうなった経緯を考えている。
「どうなされました?顔色が悪いですよ。」
はっきりと誰ですか?と聞くべきか。嘘でも知っている事にするか。
「昨日のあれが響いているのですね。」
昨日…オレは何をした。
「私が来たばっかりに。」
オレは何かしたのか。
「私が召喚されたばっかりに…」
その瞬間全ての事が頭をよぎった。
昨日、普通に帰ってきた。まだ学生だからそれほど辺りは暗くなかった。ちなみに我が母校の名は東高校である。相変わらず何処にでもある名前だ。
そんな事はともかく、あまりに暇だったので近くの本屋に行った。
そこで手にとったのが『黒魔術の全て』だ。オレは一人暮らし。まして彼女もいないので寂しかった。で目にしたのは召喚術であった。
とても簡単なものだった。本に書いてある魔方陣を想像している対象程度(人の場合半径1メートルくらい)に書き、そこに塩(なぜか粗びきらしい)を溶かした水(比率は5対3)を置く。そして最後に『カラタ・カラタ・ココニイデヨ』と言うだけである。
詳しく書いたと言うことは要するに実行したのだが。その時は何も起こらなかった。赤い光がビリビリ出てきた訳でもなく、煙が出た訳でもなく、爆発音が出た訳でもない。何も起こらなかった。
しかし、隣の彼女が言うにはそれによるものらしい。確かにオレが想像していた子だ。
突然ジリリリと辺りに響く。彼女が飛び立ち目覚まし時計を止めた。
「今から朝ごはん作りますね。」
笑顔だった。なんか、捨てたもんじゃないな。結果往来。
味噌汁の香りが懐かしい。何年ぶりのちゃんとしたご飯だろ。
「ご主人様。出来ました。」
二人分の食事が机をみっちりに埋める。美味しかった。毎日でも食べれる。
「今日からお弁当にいたしますか?」
どうやらお弁当を作ってくれるらしい。しかしだ、毎日学食のオレがお弁当をいきなり持って行ったらどう思うか。
「いいよ。毎日学食だし。」
軽く返した。
「そうですか。わかりました。」
笑顔だった。ご飯を食べ終え、早いが家にいても暇なので制服に着替えて早々学校に行くことにした。
「おっはよ☆」
背中に飛び乗って来た奴を地面に落とした。
「おはよう。真利菜。(まりな、本名:川上真利菜)」
「何よ!寺田巧(てらだこう、オレの名だ)。まりなの愛の挨拶を受けとれ無いのか!」
何が愛だ。からかってるくせに。
「オレの許容範囲越えてんだよ、バカ。」
「バカじゃない!バカって言う人がバカなんだぞ。」
「子供か、」
真利菜の頭をグーで弱く殴った。
「殴った。殴った。お父様にも殴られた事無いのに。」
わんわん泣き始めた。ガン○ムか…。それよりこいつが泣くと…
「真利菜ちゃん泣かしたな。」
後ろ遠くから走る音がした。逃げなければ…
ドバシッ、シュパパパ〜ン
オレは宙に飛んでいる。鳥になったのだ。
地面に落ちた。鈍い音が辺りを覆う。
「平気真利菜!悪い奴ぶっ飛ばしたから泣かないで。」
奴の名前は飯田歌穂。なぜか真利菜の身に危険が生じたら何処でも駆けつけてくる。なぜだ。
オレは最後の力を使いイチャイチャしている二人を見る。そんなオレに気が付いた真利菜は鼻で笑った。くそぅ。
「ぐはっ」
踏まれた。
「ごめんなさい。」
その声は篠原れい(しのはられい)。
「本読んでて気が付かなかった。」
「そうですか…」
早く家を出ても良いこと無い。
「平気ですか?」
可愛い女子の声、力が湧き出てきた。
オレは飛び起きた。
「平気そうだな。」
神田達也がオレの目の前にいた。相変わらずムカつく笑顔だ。その隣にそれの妹、由梨が心配していそうなうるうるした目で見ていた。
「大丈夫だよ由梨ちゃん。」
手を取った。由梨ちゃんは顔が赤くなっていた。
「ワイセツ禁止!」
さっき殴られた所を再び硬い何かで打たれた。
「秘技・10キロトンカチ。」
相澤加那の技?だ。それでたまに病院送りに…今日は病院ですむか…川が…お婆ちゃん…
「応急措置」
れいが大きなばんそうこうを貼ってくれた。あまり効果は無いのだが本人が満足そうなので素直にお礼を言う。
学校のチャイムが聞こえる。
「やばっ!あんたに構ってたから遅刻しちゃうじゃない!」
「お前が勝手にかまったんだろう!」
オレと加那は走る。まだ間に合うと信じて。
「お兄ちゃん。今の余令だよね。」
「そうだぞ由梨。まだ五分ある。ゆっくりいこう。」
「うん。」
これがオレの日常だった。このあと教室で数分暇をこいたのは言うまでもないが、朝のHRがオレの世界を変えた。
「よし、みんな来てるな。って、珍しいな。寺田が来ているとは。」
HR中の教室が笑い声で埋まる。先生があんな感じだから朝行きたくないのはわかって欲しいものである。
「今日は特に無いから終わるぞ。」
「待って下さいよ。」
寝る準備が満タンなオレは急な茶番について行けなかった。
「新入生!」
その声は…
「お、忘れてた。すまんな。自己紹介頼む。」
「有賀光です。父は日本人、母は外国人のハーフです。よろしく。特にそこの彼。」
奴は朝家にいたメイド。てか名前はハリスだったような…てかオレを見つけるな!
「はじめまして、国本美紀です。よろしくお願いします。」 こっちは至って普通の子だ。眼鏡かけてて。髪は二つ結び。可愛い。
「終わり。席はあそことあそこ、好きな方に座りな。」
相変わらず適当だ。先生として平気なのか。
二人の席のうちオレの隣の席が一つあった。もちろん有賀光がきた。
「よろしく。」
有賀から言い出した。その語尾にマイダーリンと小声でつけて。
「よろしく。」
もう一人の子は加那の隣に申し訳なさそうに着いた。
一時限から最後までとにかくちょっかいを出してくる。寝ようとしているのにしきりに手を握って来たりしていた。もう眠くて死にそうだ。
「ねぇ、巧」
いつもどうりの帰り道。特に部活に入っていないオレでもこの時間の帰りになるのは出席不良で先生に呼ばれて、進学出来ないぞなど脅されているからである。そして生徒会役員の加那と一緒に帰れる時間になってしまうのだ。ダルいったらありゃしない。
「進路どうするの。」
残念ながら一番の理解者でもこんなこと聞いてくる。
「別に加那には関係ないだろ。」
そうだよね、と加那は呟く。そのあと会話が発生する事は無かった。
帰宅。いつも一人の部屋だが、今日は明かりがついている。
「お帰りなさいませ、ご主人さま。」
キッチンから元気な声が飛んできた。魚の焼いている匂いがする。
「お風呂になさいますか?お食事になさいますか?」
新婚の夫婦か。と突っ込みたくなるが包丁を使っていたのでやめた。
「メシでお願い。」
「はい、ただいま。」
すぐさま出てきた。ご飯、味噌汁、魚に豆腐とまさに和風。食べて主人らしく文句をたらそうかと思ったが、あまりに美味しく食べることに集中してしまった。ご飯の水具合といい、味噌汁の味噌加減といい完璧だった。
「すみません。まずいですね。」
光は一言言った。その言葉に驚き一時的に口をポカンと開けていたがすぐさま我に帰り、
「全然美味しいよ。てかこんな美味しいメシはじめてだし。」
必死のフォローだ。フォローしなくても美味しいのに。
「ありがとうございます。」
悲しそうにそう言った。
「よし、お風呂入る。」
「わかりました。湧いておりますのでどうぞ。」
オレはそそくさとお風呂に入った。
湯船に浸かる。ため息が出る。まだこの状況の把握が出来ていないオレはこの場にいても頭は混乱状態だ。
風呂からでた。いいお湯だった。髪をタオルでしつこく乾かしながら脱衣場から出た。
「次は私が入りますので、のぞかないで下さいね。」
光は風呂に入っていった。残念なことに見るなと言われたら見たくなるのが男と言うもの。シャワーの音が出ているうちに覗きにいく。
ドアを開ける。勢い良く。丸裸の光がこっちを驚いた表情で見た。長い髪は濡れていて、ボンキュッボン。
「何ですか。」
光は出来るだけ隠すような体制でいた。
「見たいのなら。一言見たいと言って下されば、好きなだけ見せて差し上げますのに。」
その言葉はオレを逆に恥ずかしくさせた。
「お布団の中でそっとよろしいのですよ。巧様が望むのであれば。」
その後の記憶は無い。ただ目が覚めたら、ベットで寝ていて、隣には光がパジャマの状態でいた。時計を見るとまだ深夜の2時だった。
寝れない。寝れない原因の一番は光だ。オレに寄り添うように寝ている光に少しくらいならと思っている。欲に従うか。我慢するか。寝れない夜が開けた。
一睡もしていない。今日は学校を休むか。
「巧、休ませないからね。」
光が言った。昨日と口調が違う。てか変わりすぎ!
「変なこと考えてるから寝れないんだよ。」
「お前、光か!」
思わず言った。その時ばかりは眠気も消え失せていた。
「光だよ。学校モードの光。」
理解したくないがしざるを得なかった。光は多重人格、というより置かれている状況によって性格が変わるらしい。面倒だ。
「早くご飯食べなさい。それとも私の作ったご飯があまりにもグロテスクで食べられないと言うのですか?」
いきなり光の目がうるうるし始めた。グロテスクは否定しない。真っ赤なご飯に紫の味噌汁。さらには真っ黒のサラダに得体の知れない生物の丸焼き。
「よし、学校行くぞ!」
さっさと着替えグロテスクメシを食わされる前に逃げようとした。
「ご飯食えよ。」
しかし、すでに遅かった。今日は地獄か…地獄なのか…
食べきった。得体の知れない生物の丸焼きは箸をつつくとピチピチ動いた。生焼け?にしては中までちゃんと煮てあった。美味であったし、他の物もいつもと変わらない美味しさだった。ただお腹の中で得体の知れない生物が蠢いている感覚で腹痛が酷い。今にも吐きそうだ。
そんなオレに後から真利菜が後から飛び乗ってきた。
「おはよう!」
盛大に吐いた。そのまま死ぬかと思った。
「大丈夫?」
加那が近くにいた。大丈夫なわけない。内臓が、ほら飛び出てるだろ。
「応急措置。」
辺りに断末魔が響き渡った。れいが今内臓をオレの体に無理矢理押し込んでいる。
再び吐き気をもよおした。
「なにこれ。」
真利菜が平気で触り持ち上げ、フニフニしながら言った。オレは声が出なかった。
「それ、声帯。」
れいが言った瞬間、フニフニのしすぎでそれは潰れてしまった。
オレは行動だけでなにかを伝えようと頑張る。
(なにしてんだ!オレの声返せ!)
声にならない。
「大丈夫だ。私が治してやろう。」
そこに光がきた。救世主。
また断末魔が響き渡る。今日はオレの命日か…パトラッシュ…迎えが来たよ…
なんやかんやで学校に着いた。なんやかんやってなんなんだって聞きたいのかい?そこの画面の前の君。なんやかんやは…なんやかんやですよ!
下らないのはやめて、放課後。
「巧、部活一緒に見に行かない?」
光が言う。部活に行ってもメンドイだけ。さっさと帰った方が楽。
「メンドイから行かない。由梨ちゃんとでも行けば。由梨ちゃんも何かに入りたがってたし。」
あっそ、と一言。そしててけてけ教室から出ていった。腑抜けした。疲れたから帰ろう。
帰り道。加那と達也が一緒にいるのを見た。加那が泣いているのを見た。なんで泣いている。達也が泣かせたのか。達也が加那の肩を摩る。違うように見える。達也に慰められている。達也がこっちを見た。気付いた。しかし、すぐに加那の方に目を向け変えた。
そのあと二人は校門を出ていった。なんだったんだろう。
「一緒に帰りませんか?」
木の影に隠れていたオレの後ろに国本さんがいた。思わずわっ、と叫んでしまった。
「すみません、驚かせてしまって。」
「オレが勝手に驚いただけだから。大丈夫。」
そうですか、と肩をおろす。
「っていまなんて?」
「一緒に帰っていただけませんか?一人だと寂しいので。一緒のクラスの人でしたよね。確か…寺門くん…」
「巧で良いよ。同じクラス仲なんだから。にしても嬉しいな。国本さん名前覚えて貰って。」
帰り始めた。学校から駅まで長い上り坂がある。そこを通りすぎるとすぐに駅だ。今その坂の真ん中辺り。会話は意外と盛り上がり、学校変えて気まずい空気が流れる心配は無くなっただろう。
「そういえば!」
いきなり叫んだ。意外と大胆?
「私の名前、美紀でいいよ。」
そんなことか。思わず笑った。
「やっぱりいきなりは嫌ですよね。」
落ち込んでしまった。凹凸激しいな。
「いや、そんなに力入れて言わなくても何気無く言うもんだよ。」
また笑いが込み上げてきた。
「そうですか。じゃぁ。」 駅に着いた。
「着いたね。オレ上りだけど、一緒?」
「あゎあゎ、私は、下りでしたっけ?」
慌てすぎている。思わず笑ってしまう。
「オレに聞かれてもわからよ。」
「ですよね。私、下りなのでここまでですね。」
改札口を通った。
「じゃぁまた明日。さようなら。」
「じゃぁなあ、美紀。後、敬語やめろ。」
「あ、うん。じゃあね。」 最後の最後で笑顔になった。物静かな子だと思ったが、オレの周りの人は皆一癖あるみたいだ。今、電車に乗った。
「好きだよ巧くん。」
着自宅。部活を見学しにいった光がいないため、家の中はオレしかいない。物静かな部屋が戻ってきた。一時的な物だろうが。こんな日々がいつまで続くのだろう。楽しみもあり、壊れそうな不安もある。
ドアが開く。大きなビニール袋を重そうに両手に持っている光が入ってきた。また得体の知れない生物の丸焼きは勘弁だからな。
もう外は暮れにかかっていた。オレは光の手伝いを始めた。
そして幾日かたった。結局光はテニス部に入った。だからいつも帰りは美紀さんと一緒だ。
いつかの帰り。たまたまその日は加那がいた。夏の風がオレのネクタイをゆるませた。
「加那さんは巧くんと仲いいんですね。羨ましいな。」
「こんな奴のどこがいいのよ。ただのサボり変態よ。」
オレは変態なのか。サボりは認めるが、変態か。
「美紀も気を付けなさいよ。こいつん家に行ったら襲われるんだから。」
襲いません!
「そうだったんですか。」
信じないで。
「あんまり近づき過ぎないようにね。」
「はい、わかりました。」
加那とは電車が同じ方向でここで美紀とは別れた。
「ねぇ巧。」
スッカスカの電車。オレたちが乗っていり車両には二人以外の姿形は無かった。
「なんだ?」
「美紀さんとはどう?」
下を向いていたので顔色まではわからなかった。
「どうって、友達だよ。」
「最近二人っきりで一緒に帰ってるじゃん。」
「他に誰も一緒に帰る人いないし。」
何が言いたいんだ、加那は…
「あんたっ家行っていい?」
「いいのか?変態の家に行ったら襲われるんだろ。」
「家に誰もいないの。寂しいから、いいでしょ。」
しょうがなかった。可哀想だし、何より引く気配が無かった。
家に着いた。加那と一緒に。
「お邪魔します。」
とりあえず、光が帰って来るまでなんとかしようと考えた。光が帰って来れば必然的に加那も帰るだろう。そう考えた。
とりあえず椅子もないフロアに座らせた。台所の冷蔵庫から毎日光が作るお茶を出した。
「ありがとう。」
加那はそわそわしたまま身動き一つしなかった。気まずい時間が流れた。何かに話題を出さなければ。
「光さんとは?」
加那が先に口を開いた。その質問はさっきの美紀の時と一緒かのものだろう。
「特になんともないぞ。」
「ここで一緒にくらしているのに?なんとも無いのはおかしいよ。」
ふと思う。確かに何か発展がないとおかしいな。
「でもなんとも無い。」
「本当に?」
「あぁ、って、気が狂うな。お前そんなんだっけ?」
「別にいいじゃん。」
光はまだまだ帰って来ない。いや、帰って来ない方がいい気がしてきた。
「あのさぁ、」
「なんだ?」
「私、好きなんだ。あんたのこと。」
外で誰かが走り去る音がした。まだ光が帰るには早いし。誰か。
「ちょっと待て。いきなり過ぎないか。どうしたお前。もっと攻撃的だったじゃないか!」
「別にいいよ、嫌なら嫌って言って。」
「少し待てって。」
いきなり過ぎる告白。気が動転しそうだ。
「少しってどのくらい?」
「明日とかじゃ、」
「やだ、今日がいい。」
やはりおかしい。いつもの加那じゃない。誰だ。
「ねぁ、早く。」
「今はダメだ。」
沈黙が過ぎた。ふかない風さえ聞こえる。
「じゃぁさぁ」
カバンに手を入れる加那。
「死んでよ。」
カバンからは包丁が出てきた。なんでそうなんだよ。
どす、鈍い音が無音の部屋に響く。
「大丈夫ですか?ご主人様。」
光だ。もうこんな時間になっていた。
「こいつ。どうしたんだ。」
「マインドコントロール。いわゆる人を操る事です。今、線を切りました。誰がこんな事をしたのでしょう。」
加那は操られていた。誰に?すぐに目が覚めた加那は頭を抱えて起きた。
「ここは…」
「オレん家。」
刹那、オレは気を失った。
「秘技、100トンハンマー、五月雨。」
「カッコいいですね。加那お嬢様。」
加那は顔を赤らめた。
「お嬢様じゃないわよ、加那。てか、光さん、変ね。」
光はカクカクシカジカ、状況を話した。
「メイド!バカは知ってたけど、ここまでとは。」
「いえ、多分想像している関係ではありません。」
加那は再び顔を赤らめた。何を想像したんだ。
「私は召喚された悪魔です。人間とあんな事やこんな事しませんよ。」
加那が喘いだ。オレは復活した。
「何みてんのよ!」
オレは気を失った。チャンスだと思ったのに。
「でもおかしいのです。魔方陣が一筆間違えていて、二人用の召喚陣でした。しかし、私が起きた時にはすでに巧と二人っきりでした。」
これでも加那は成績優秀、スポーツ万能。さっき本当に襲われたら死んでたかも知れない。ひらめきは人一倍ある。
「まさか、もう一人って、」
翌日。放課後。いつもどうり美紀と帰っていた。
「ねぇ、美紀さん。」
後ろから不意に声をかけた。
「もう隠さなくていいのよ。悪魔さん。」
美紀は黙った。と思ったら走り始めた。オレは加那に引っ張られ追った。そこは人気のない公園。
「悪い?悪魔で、召喚してくれた人を好きになっちゃダメですか?」
「違う!なんで、このバカを殺そうとしたの?」
「私に振り向いてくれない事がわかってしまったから。」
「だからって殺す事は…」
「違うんだよ。加那さん。」
いきなり声をかけたのは光。
「私たち召喚獣は半年以内に召喚した人と恋をしなければ、元の世界に戻らなければならないのです。」
オレは驚いた。本をちゃんと読んだつもりなのにこんなリターンが。そして、召喚した日が1月6日。今日は7月6日。ちょうど半月だ。
「召喚者の恋愛放棄が出来れば話は別なのさ。」
「恋愛放棄?」
「私たちの前から消えるか、死んでしまうか。」
それだけで殺されかかったのか。オレは…
「だからって殺すこと無いじゃない。元に戻るだけで、」
「あっちに戻りたくないのよ!」
気を乱したのを初めて見た。美紀はそんなに…
「知ってる?あっちに戻ればずっとカプセルの中で過さなきゃいけないの。身動きか出来ないカプセルの中で得体の知れない液体に浸かってなきゃいけないのよ。わかる?寝たり死ねたり…したら楽なのに…寝れないし、死ねないし、地獄なのよ。こっちの世界は天国よ。寝れて、動けて、遊べて、空気に触れられて、死ねて。」
オレらは言葉を失った。全て言い終えた美紀は、百メートル走を全力で走り終えた見たいに息を切らしていた。
「そうだったの…」
「もう遅い。時間だよ。」 5時37分。後2分で時間だ。
「また召喚してよね、コウテラカド。」
「残念ながら私もです。」 光、美紀、
「どっちかなら残れるんだよな!」
「どうでしょうか?」
5時38分、どっちを選ぶ…
「破れ被れだ!」
オレは走り出した。どっちともわからず。
5時39分、消えた。蝶となり、一瞬でいなくなった。消えかかるという過程も無しに、まだここにいるかのようだ。
「二人とも行ってしまったね。」
目の前は白く輝きながら空に羽ばたいていく蝶以外に、何も残らなかった。
「なんで気付かなかったんだろう。」
「バカだからね。」
涙が溢れる。いや、垂れる。
帰宅。誰もいない部屋。食事は光が教えてくれたので、なんとか作ってみた。焦げた、しょっぱい、でもちゃんとできた。ため息一つ。
今日は寝た。明日は起きれないからとにかく寝た。
早く起きた。昨日の残りを温め、食べた。制服に着替えて学校へ。
学校に着いた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
光が蹴り跳ばしてきて、それをみた美紀は愛想笑いをした。
光?美紀?
「戻れませんでした。」
「ということだ。」
もう訳のわからん。
「まぁ、いつもどうりだからいいんじゃん。」
二人の後ろにいつものメンバーがいた。
「さてと、皆様お手を拝借。」
「なんでだよ、」
「細かい事は気にしない。」
「わかったよ。」
「よ〜お!」
パン!
読んでいただきありがとうございます。今後ともご贔屓に。