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スキンケア

「ああ~、なんでこんなことになったんだろう」


 ベッドで今日一日を振り返ってみる。やはり今日のメインイベントはアレだろう。私がうっかり口を滑らせたばかりに……。作り方なんて分からないよ~~。




 あの後クレアさんに、カールさんとソフィーにアリアさんの認識阻害魔法を見せる約束をして、お暇した。

 フリードさんがクレアさんを不機嫌にさせた理由は聞けなかったけど方向性は見当がつく。……それにしてもフリードさん、あなた一体なにをしたの。


 それからアイリさんのお店に行きハーフブラシのドライヤーを’薔薇の乙女’に上げた。約束としてはドライヤーを1個前払いで、3個が成功報酬なんだけど約束以上の仕事をしているのでこの位のサービスはいいと思う。


 次に訪ねたのがシュミット工房だ。目的は二つ。一つはドライヤーの出来を見ること。ソフィーの作ったドライヤーだけど、瞳の見立てでも私が使った感じでも、商品として販売できる出来だ。あとはソフィー以外の職人でも作れることができれば販売開始の予定らしい。


 もう一つの目的が、ヘアアイロンの材料の入手。これについては今日の試作分を分けて貰った。明日業者さんを紹介してくれるよう手配してくれるのは有難い。


 その後はカールさんのところだ。まずはハーフブラシのドライヤーを6個納品した。ハーフブラシの性能はクラウディアさんが昨日見てるので説明する手間が省ける……かと思いきや、やはり実演することになった。


「優お姉ちゃん、お願いします」


 エマちゃんの髪は緑のセミロング。希望は昨日のお弟子さんと同じのがいい、ということなので、栗山未来風ゆるふわボブに仕上げたのだ。


「ふっふっふっ」


 おかげで今度こそエマちゃんのモフモフを堪能できたのだ。是、役得也。


 そして昼食を挟み(レストランに入ったら私達全員、特にエマちゃんが耳目を集めた)、次にローラースケートとインラインスケートを見せた。幸いクラウディアさんの足がローラースケートにフィットしたので部屋の中で軽く滑ってもらった。そしたらカールさんの驚くこと驚くこと。ホントは昨日ここに来た時には完成していたんだけど忙しくて見せている時間がなかったからね。

 それはともかく、カールさんとしては販売はしたいんだけど、怪我をする恐れがあるので考慮するとのことだった。




「そうだ、優ちゃん」


「はい?」


 そろそろ帰ろうとしたらクラウディアさんに呼び止められた。


「今晩の辺境伯家のパーティーなんだけど……」


「ああ、聞いてますよ。というか呼ばれています」


 何を聞いているかというと、参加者に一人出資者がいるのだ。あれから一度も会っていないので、挨拶したかった。だから辺境伯夫人のお誘いはタイミングが良かったのだ。


「それにしても、すっかり辺境伯夫人に気に入られたみたいだな」


 焼きそばとか、フリードさんとクレアさんの件とか、ドライヤーとか、髪型とか、いろんな経験をした。出会ってまだ三日と経っていないのに随分と親しくなっているよね。


「そうですね、昨夜なんか……」


 焼きそばの作り方を指導しに行ったあたりはニコニコ聞いていた二人だが、ローラースケートの練習のくだりで口をあんぐりと開けたまましばらく固まっていた。




「先日はどうもありがとうございました」


「こちらこそドライヤーを納品して頂いてありがとうね」


 この女性こそが、出資者の一人フレデリーカさんだ。化粧品会社の社長として辣腕を振るっており、その腕前はカールさんも一目置くほどだ。


 推定30代半ばだろうか。輝くような金色のロングヘアに、ピンと伸びた金色のケモ耳、70cm位はあるだろう見事な金色の尻尾。白い肌に映える鮮やかなルージュのグロス。そして控えめの薄橙のアイシャドウ。

 これでスタイルが抜群なのだから外見はパーフェクトである。


「いえいえ。すべてはアイリさんのお店の為、全ての女性の為ですから」


「ああ、さっきクヴァルティーアデパートさんからハーフブラシ付きのを受け取ったわ。これで髪型をセットする時間が短縮できるだけでなく、髪型のバリエーションが豊富になるわね。夫人やお弟子さんのように」


 その視線の先では辺境伯夫人が他の参加者を接待している。 


「ドライヤーを気に入って頂いて何よりです」


「でも瞳ちゃんに会えないのは残念だわ」


 瞳はあっちに帰ってヘアアイロンの試作に取り掛かっている。忙しくさせて申し訳ないわね。でも、今日は子供たちと一緒に公衆浴場に行ってもらっただけマシかな。あとで本気で埋め合わせしないとね。


 なお、冬香は予想通りだけどパーティーに参加している子供たちに囲まれている。


「瞳には私から伝えておきます。それで、あの……アイリさんのお店のことですが」


 フレデリーカさんからは、1億G出資してくれることになっている。


「ええ、ご安心くださいな。予定では今頃お金が集まっていて、本社を明日の朝出発して、明後日の夕方にはここに到着しますわ」


 明後日は木曜日、タイムリミットが金曜だから十分間に合う。とはいえ1億Gではまだ足りない。


「そうですか。ところでいつ迄滞在されますか?」


「土曜の昼まではいますわ。あれからすぐ休暇を切り上げて本社に戻ってとんぼ返りでしたから、今度こそ休暇です。あ、でも優さんがらみを’楽しみ’にしてますので、何かあったら遠慮しないでね」


 そう言われたら期待に応えるしかないよね。周囲を見渡すとそれなりの人数の参加者がこちらを見ているので声を落とす。


「明日、新商品の試作品が出来る予定ですがご覧になりますか?」


 するとフレデリーカさんの顔がほんわかと緩んだ。


「もちろん、何時でも、バーデンのどこでも飛んでいくわ」


 場所はどこがいいかな。夫人も見たいだろうしカールさんも見たいだろうし……。


「じゃあ、明日の朝、カールさんの部屋で」


 夫人には明日の夜みせればいいよね。


「OK、楽しみにしてるわ」




 ここまでは良かった。帰ってきたら瞳はヘアアイロンの試作品を完成させていから問題ない。問題はここからだ。




「フレデリーカさんのお店の商品って、これですよね」


 私が取り出したのは、アリアさんから貰ったグロス。とっても使い勝手がいいし、色合いもいい。日本でもこのレベルはなかなか手に入らないほどだ。


「あら、使ってくれてるの。嬉しいわ。そうだ、優ちゃん、ウチの商品で何か欲しいものある?」


 頂けるならありがたいけど、私が使うものってなると……グロスか日やけ止め、後はシャンプーとトリートメントかな。あ、そう言えばシャンプーとトリートメントにはこのグロスと同じ狐のロゴが入っていたよね。


「それでは、グロス、シャンプー、トリートメントを」


「そんな遠慮しないでいいのに」


「でも、私その位しか使わないですし」


 まだ化粧もしないし。え、女子大生でしょ。まだ大丈夫、化粧に頼る年でもないわ……きっと、多分。


「優ちゃん、お肌の手入れは?」 


「あら、夫人?」


 辺境伯夫人もワイングラスを片手にこちらに来てくれた。そしてその余波か他の女性も集まってきている。


「特に手入れはしていないんですけど」


「ええっ、お肌がこんなにぷるぷるしているのに?」


 日本人は西洋人に比べ肌の油分が20%多いらしい。日本は高温多湿、ヨーロッパは乾燥しているのが主な原因と考えられている。

 なので私の肌はこっちの人とはだいぶ違うらしい。


「私達の人種ってそういうものですよ」


「あら、羨ましいわね」


「あ、でもそろそろ保湿クリームを使おうかとは思ってるんです」


 ここバーデンがドイツをモチーフにしているのは明白だ。となるとスキンケアはクレンジングでのメイク落とし→ふき取り式化粧水→保湿クリームのはずだ。


 余談だけど、ふき取り式化粧水はコットンにしみ込ませて使う。ここで重要なのは水で顔を洗わないこと。何故かというと、ヨーロッパの水は硬水で顔を洗うとミネラルで肌が傷つき肌荒れの原因となるのだ。


 私は化粧をしないのでクレンジングやふき取り式の化粧水は不要だけど、保湿クリームは使ってもいいかも。


「保湿クリームならあるわよ」


 保湿クリームは肌の水分が蒸発するのを主な目的とし、その次に水分を保持することを目的とし、肌に水分を与えるのはそのさらに次とする。


 つまり乳液とほぼ一緒なのだ。違うのは含まれる油分、水分の比率である。保湿クリームの方が油分が多く、乳液の方が水分が多いだけである。


「どんなのですか?」


 これよ、と手渡されたのはオリーブオイルの保湿クリームだ。乳液でないのは品質の保持が難しいからだよね、きっと。


「水とオリーブオイル、それに乳化剤、あとは何でしょう?」


 ここで私が口を滑らせたのがいけなかった。


「何ってそれだけなんだ……け……ど」


「あ、しまった」


 口に手を当ててももう遅い。あの言い方では私の国の保湿クリームには他にも何か入れているとバラしてしまったも同然だ。そしてそれをここにいる人たちが聞き逃すはずもない。


「つ、つまりこれに手を加えたもっといいものが優さんの国にはあると……」


 フレデリーカさんの全身がぷるぷる震えている。


「わ、私はそんなもの使う必要ありませんけど、知り合いに欲しがっている人がいるんですよ」


 夫人、それ絶対知り合いじゃなくてご自身ですよねっ。


「そ、そうですか。偶然ですね。わたくしの知り合いにも欲しがっている人がいますのよ、ホホホ」


 周囲の女性達もみんな乗っかってくる。皆、全身から漲っている空気がさっきと全然違う。なんかバックで炎がメラメラと燃えているようなイメージだ。


「それ、作れるかな?」


 フレデリーカさん、それ疑問文じゃなくて依頼ですよね。


「ちょっと難し……」


 えっと皆さん、目が血走って怖いです。


 でもセラミドとかヒアルロン酸とかどうするのよ~

来週は別作品を執筆しますので、次回のUPは再来週になります。

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