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勇者パーティ

「アイリさん、お待たせしました」


「いいえ、今来たばかりよ」


 待ち合わせ場所なんだけれど、石造りでもなければレンガでもない、シミ一つない白亜の洋館。誰かのお家でもなければ、喫茶店とか、レストランでもない。


 ここは冒険者ギルド、目的はもちろん護衛の契約だ。


「それにしても……」


 普通のアニメやゲームでは多かれ少なかれ’無骨さ’というものを感じる建物なのだが、ここにはそんなものは微塵もない。


 カールさんもスーツ姿で白い扉を開けるが、これがちゃんと様になっている。


 スーツよ、スーツ。それもフォーマルなスーツ。そんな服装で冒険者ギルドに出入りする作品なんて他に無いわね。


「彼女たちのことだ。先に来て待っているだろう」


「時間より早く来ているなら、待たせちゃったのでは?」


 別にこちらが悪いわけではないがちょっと申し訳ないような気もする。


「いや、知り合いの冒険者とおしゃべりに興じているだけだから気にしなくていい」


 私も女子高時代はそんなだったな。休みの日や放課後、ファミレスやハンバーガーチェーンでどれだけ友達とたわいもない話に興じていたことか。ホント、楽しかったな~。


 今となってはそんな生活には二度と戻れないけど。


 思い出すだけで涙が目から滲んでくる。


「ぐすっ……さあ、行きましょう」


 こうなった以上は仕方ない。今は自分を鼓舞するだけだ。




 カールさんが歩み寄った建物と同じくらい白いテーブルでは、8人の女性が会話に花を咲かせていた。


「やあ、お待たせしたかな」


 全員が同時にカールさんに振り向いた。


「いえ、時間通りですわ」


 リーダーと思しき女性は、深緑の肩まで伸びた髪、黒いリボンに黒いマント、その内側は深緑と黒のチェックガラのジャケットというなかなかお洒落な魔法使いさんだ。

 

「カール様。お久しぶりです」

「それじゃ、私たちは退散しますね」

「またね」

「絶対よ、こんどこそ絶対あのお店行こうね」


 4人が席を後にした。


 とすると残りの3人が冒険者パーティーのメンバーということか。


「先ほどはどうも有難うございました」


 リーダーらしき女性が頭を下げる。


 先ほど? ああ、その三角のケモ耳、見覚えあるわ!


「ドライヤーの?」


 先ほど公衆浴場でご一緒した4人組だ。


 さっきはお風呂上がりのすっぴん状態、対して今は化粧をしている。だから多少はビフォーアフターで差があるが、まだ15歳くらいだ。そんなに化粧に頼る年でもない。それに一度見たケモ耳と尻尾は忘れない。こう見えて私は自称ケモ耳検定1級だから。


「試すような真似をしてすみませんでした。でも、依頼を受ける前にどういう人物か知りたかったのです」


「じゃあ、アイリさんのところにも来たの?」


「ええ、彼女達お客さんの中にいましたね」


「あれだけ混んでいたのに覚えてくれていたのですか」


 あれだけ、か。どれだけ混んでいたか大体想像はつくけどね。


「ええ、初見のお客様は少なかったですから印象に残ってます」


 これだけの美少女4人はいい意味で印象に残るでしょう。


「おほん。面識はあるようだが一応紹介しておこう。優さん、アイリさん、彼女たちが冒険者パーティー’薔薇の乙女’です」


 え……。私は息が止まるほど驚いた。


「勇者パーティー」


 無意識のうちに余計なことを呟いてしまった。


「何だ、知っているのか」


 外国から来たばかりの私が彼女たちのことを知っていることにカールさんが少し驚いた。


「名前だけですけど」


 こんなんで誤魔化せたかは分からない。だが、「ゲームの主役だから知っている」とは言えないし、言っても信じて貰えないだろう。


 そう、彼女たちは’ゆるふわもふもふストーリー’の主人公パーティーだ。


 初めて聞いた時、英語に変換すると著作権の侵害で訴えられかねないんじゃないかとツッコミたくなったパーティー名だ。


「リーダーのベルティーナです。ご覧の通り魔法使いです」


 彼女はさっきほとんど私に話しかけてこなかった。多分、私の人となりを伺っていたのだろう。ゲームの公式ノベライズ版でもリーダーだったね。服装はゲームと違うけど名前も職業も一緒だ。でも顔立ちが多少違う。それと体のある一部分が二回りほど違うような気が……。


「アタシは剣士のウィド、よろしくお願いします」


 水色の髪の女の子が手を伸ばしてきた。街中なので鎧ではなく軽装だ。白いシャツに青のズボンと中性的な恰好よさがある。

 ゲームではあんなに筋肉隆々ではなかった。その理由は想像に難くない。ゲームの世界観には、筋肉が似合わないからだろう。特に女性で筋肉質というのは違和感がある。でも実際のところ、剣士にはしっかりとした筋肉が必要不可欠だよね。それにしても、何で胸筋の上に脂肪が乗っているのよ。ちゃんと脂肪が燃焼してないなんて不自然よ。


「わたしは僧侶のトリシャと申します。以後お見知りおきを」


 紫の肩まで伸びた髪に法衣を纏っていて、戦闘の職業としてだけでなく、文字通りの意味で僧侶でもあった。でもこの世界の神様ってアリアさんなんだけどね。

 それにしても慎み深い筈の僧侶が大人になるとあんなにけしからんスタイルになるのは如何なものかと思う。

 まあ、言いがかりだから口には出さないけどね。


「わたしは勇者のリオマです。先ほどはありがとうございました」


 そしてゲームの主人公、勇者のリオマちゃんだ。どうやらプレーヤーが操縦しないと会話をするのが消極的なようだ。さっきもあまりしゃべらなかったし、今も最後にあいさつしたし。

 それにしてもあの髪、ゲームと全然違うわよね。ゲームではバッサリショートヘアだったのに。戦闘に邪魔で切ったのか、それとも手入れが面倒で切ったのか。後者ならドライヤーを使うから切らなくて済むかも。あんな綺麗な髪をバッサリ切るなんてもったいないわ。


 それはそうと、確かめなければならないことがある。


「改めまして。優です。こんなことを尋ねるのは失礼ですが皆さんおいくつですか」


 ゲームでは彼女たちは20歳だった。彼女たちの年齢が分かれは、この世界はゲームとどのくらいずれているかが分かる。


「全員16歳です」


 ということはゲームの4年前か。全員の名前がゲームと同一だから間違いないだろう。


 なぜゲームの4年前なのかは分からないし、ゲームの世界より町が発展しているのか理由が不明だけれどそれは一旦置いておこう。只はっきりしているのは4年で顔立ちが大人びて、同一人物とは思えないという事。それと今は残念な体型のベルティーナちゃんとトリシャちゃんが、4年後には出るところが出るようになるということ。


 私だってあんな美人でメリハリの効いたボディになりたいわ!


「初めまして、アイリと申します。今回は護衛をよろしくお願い致します」


「さて、これ以上の話しは内密にしておきたいから場所を代えようか」


 確かに、マルケス商会の手の者がここにいないとは限らないから当然よね。

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