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フハハハハ! よくきたな異世界人!

作者: 十束


「フハハハハ!よくきたな異世界人!」


最果ての地にそびえ立つ、現在改装中の魔王城。その前方にある臨時玉座の間にて魔王様と異世界人が対峙していた。


魔王様は玉座――急拵えのため用意出来ず、仮として私に座っている――に顔に疲れが滲みつつも、威厳のある雰囲気で座っている。


対する異世界人は3人。


黒髪黒目、やや幼さを残した顔立ちの青年。


茶髪黒目、オシャレな格好をした少女。


白髪黒目、あまり表情の動かない少年。


その異様な光景――改装中の魔王城に対するものか、私を椅子として使っている魔王様に対するものかは不明――に驚きを隠せない様子。


真っ先に口を開いたのはリーダーらしき青年だった。


「いや……え? あんたが魔王でいいんだよな?」


「それ以外に誰がいるというんだ?」


「えーと……なぜそんなことに?」


おや、てっきり魔王様を撃退するために来たのかと思いましたが意外と理知的な始まりですね。やはりこの光景に呆気に取られているのでしょうか?


「よくぞ聞いてくれた! 元はと言えば今下にいるこいつ……四天王であるセツジツ・キョウカイの発言がきっかけでな。『魔王城が狭いのでは?』というものだ。それを機に他の四天王が同調し、我の私室をさらに広く、四天王含めた幹部にも部屋を割り振るべきだと言うのだ」


私的には当然の発言でした。数十年以上もの間我慢してきましたが、魔王城はあまりにも狭いのです。もちろん、最低限の人員が配置でき、玉座の間も広くとっていましたが、逆に言えばプライベートな空間が狭すぎたのです! 魔王様の部屋と、隣の部屋にあたる私の部屋を隔てるものは薄い壁1枚ですよ!? それでは淫ら、んんっ、欲望を発散させる行為など出来る訳もなく、部屋自体も多少広めの宿の一室と同程度の広さ。それもあって魔王様の行為を盗み見出来たのは僥倖でしたがそれはそれ。個人部屋を与えられていたのも魔王様と四天王のみ。これでは不満も爆発するというものです!


「そ、そうか。それで今工事してるんだな?」


「否。我的には十分だったので反対したのだが、既に依頼した後だったらしくてな。邪魔だからと追い出され、貴様ら異世界人がくると言うから大急ぎで準備したのだ」


「そうだったのか……それで、座っているのは……?」


「お褒美でグフッ」ドスッ


「お仕置きだ。我の許可なく魔王城の改装依頼したからな」


頭がァ、頭が割れるぅ……。でもこれも、愛……?


「あぅん」パシィン


「変なこと考えただろ」


「いえいえまさか魔王様でそんな……あ、できればおしりを叩くなら生で……」


「……(クソデカため息)」


なるほど、焦らしプレイですね?お任せ下さい、既に準備は万端です。


「まぁ、こいつのことは放置で頼む」


「えぇ…………どうしよう、ここで決闘するか?」


「貴様らがその気ならば相手してやろう」


「えーっと、個人的には出直した方がいいと思うんだけどどう思う?」


「あんたがいいなら別にいいんじゃない。こんなところでやるのも締まらないし」


こんなところでヤるのも締まらない……野外ですか!その発想はなかった!天才か?


「なんかこいつ無性に燃やしたくなったわ」


「僕はどうでもいい」


「よし、じゃあ一度帰るか。また来る……って魔王に言うのもおかしいな。次あったら容赦しない……もなんか違うか。それじゃあな」


「まあ待て、送ってやろう。歩くのも大変だろう?この椅子は意外と有能でな、貴様らを転移させよう。おい、分かったな?」


「はぁ、はぁ、ンッ……」もぞもぞ


「おまっ、なんかやけに動くなと思ったら、アホか!何やってんだ!」


「んんぅ?何って、ナニですよぉ」


野外という革新的な発想、魔王様に乗られているという事実。そんな中で我慢出来るだろうか、いや出来ない。体が動けなくとも頭は回るのです。


「あぁもういい、貴様らは我が帰す、じゃあな」パチン


指を鳴らすと異世界人は消えた。見間違いですかね、住んでる国じゃなくて元の世界に送ってたような……まぁいいですか。


「魔王様、ほら、ここ。触ってくださいよ」


「お前っ、外だぞ!バカなのか馬鹿なんだな?」


「あの女の子が言ってたじゃないですか。外だからいいんですよ」


「それは違うと思うが……いやびしょびしょじゃねぇか!」


「あふぅっ」


「ちっ、結界は貼るからな!何やってんだまったく……」


「それでも付き合ってくれる魔王様好きですよ。突き合うですかね?」


「容赦はしない、覚悟しろ」


「あの、さっきまで椅子の姿勢で四つん這いだったので、体が割と痺れてるんですよ。この体勢から動けないなぁなんて……」


「ほう?ちょうどいい体勢で止まってるじゃないか。誘ったからには覚悟があるんだろうな?」


「いやそのぅ……優しくしてね?」


「保証はできん」


翌日まで、二人の姿を見たものはいなかった。少し魔王様がやつれていたとか……。






一方その頃。


「元の世界だ……!!帰ってきたのか……?」


「え……?ほんとだ……うわぁぁぁあぅぅ……」


声をあげて泣き出す二人。


「……母さん、待っててね」


表情をなくした少年に、嬉しさが灯る。


そして三人が揃って思ったのは


(((魔王って意外と悪くないやつかも)))


なんだろう、結局全てはエロに帰すのか……?

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