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幕間~のろけを添えて~

結論から言うと、()()()()()()


まず第一に、俺は一馬より梨音の事をよく知っているという事。

この事実はスピーチの際、特にディスカッションにおいて

大きなアドバンテージになると俺は踏んだ。


そして、もう一つ。


俺が、梨音に絶対的な信頼を置いているという事。


……梨音はたしかに重度の人見知りだが、別に気が弱いわけでもないし

意思が弱い訳でもない。


俺が、ちゃんと大切な幼馴染への思いを言葉に出来れば、

梨音はプレッシャーに負けず応えてくれると思ったのだ。


そもそもこれは、梨音に関わる問題でもある。

それを最終的に解決するのが、俺ではダメだ。


そういう、自分なりの考えがあった。


ただの感情論と言われれば、そうかもしれない。


でも、俺は梨音との不思議な絆を信じていた。


勝負をオッケーしてくれたことから察するに、

梨音も同じなのかもしれないな。


俺が期待を込めて梨音の方を向くと、梨音はまた照れて

そっぽを向いてしまった。


それに声をかけようとすると、


「あんた」


と目を合わせずに、梨音は俺の事を呼んだ。


「私への愛のプロポーズ……楽しみにしてるわよ。

 万が一、ださいスピーチしたら全裸で校庭走らせるから」

「はは、そりゃ怖えな。じゃあ真面目にプロポーズしますわ。

 意地っ張りで人見知りな幼馴染様によ」

「あら?何か言ったかしら?活舌が悪すぎて聞き取れなかったわ」

「そうかいそうかい、なんでもねえよ」


ほら、こんな状況でも軽口叩きあえるだろ?俺たちはさ。


腐れ縁かも知れないけど、俺たちの絆は深いんだよ。

だから、心配することなんて何も無いんだ。


いつもの調子に戻った俺たちは、

やいのやいの言いつつ階段を昇っていく。


二階まで上がってきた俺たちは、それぞれ別の教室に向かうことになった。

いやあ、大切な彼女と別れるのはつらいぜ。


「あら、教室が違うからもうお別れね、悲しいわ」

「そうだな。梨音が俺と手を繋ぐときに出す、

 めちゃくちゃ照れて挙動不審なくらいの、『ひゃっ』って声が

 好きだったんだが、どうやらもう聞けないみたいだな」

「あ、あんたねえ……」


悔しそうにしてるけど照れてるな、これは。


ふふ、お前がどんなことを言えば照れるのかぐらい

俺はお見通しだぜ。


梨音はそんな余裕の俺に、反撃しようとしてくる。


「そ、そんなこと言いつつも、あんただって

『初めて女の子と手繋いでる!しかも美人の幼馴染と!』

 って思ってたでしょ。あわよくば胸も触ろうと思ってたでしょ」


え、冤罪(えんざい)だ!

……少なくとも後半は。


「む、胸は触ろうとは思ってねえよ!」


慌てて抗議する俺に、疑いの視線を投げる梨音。


「へ、へえ、胸はそうなのね……

 じゃあ、どこが触りたかったのかしら?」

「なっ……!」


梨音は俺に近寄ると、少し意地悪そうに微笑んで俺を見た。


そう言われると……

艶のある黒髪や、細くて綺麗な曲線を描く足から、

俺は目が離せなくなってしまった。


スカートと黒いストッキングで隠れた太ももとか、

すらっとしてスタイルのいい上半身とか……


む、胸も、そこそこあるし……い、いかん!


「あら、夏樹って意外とむっつりなのね。可愛いわね」

「う、うっせえ」

「ふふっ、もっと見てもいいのよ。私は美人だから」


そう言うと梨音は、俺の手を恐る恐る、やさしく握った。

梨音の体温と脈が、こっちに伝わってくる。


「ドキドキ、するかしら?」

「っ」


めっちゃ、ドキドキする。

だって、美少女と手を繋いで見つめあってるんだぜ。

いくら幼馴染だからって、ドキドキしないわけないだろ。


そうして、俺の緊張が最高潮になった時。


梨音は、突然顔から蒸気を吹き出すかのように真っ赤になって、

腰が抜けたように、その場に膝をついた。


「ど、どうした?」


心配する俺に、真っ赤になる梨音は、

かぼそい声で返事した。


「ご、ごめんなさい、やっぱりまだ無理……

 夏樹の部屋のエロ本を、参考にしてみたのだけれど……」


な、なあッ!?


俺はその言葉に愕然(がくぜん)として、梨音に問いかける。


「もしかして、もしかして、

 本の再現か、これは……!?」

「そ、そうよ。たまには私が、あんたを照れさせたくて

 やってみたのだけれど、どうだったかしら」


こ、こいつめ……!

最初から俺を照れさせる目的で、演技をしてやがったのか……!


ああ、何という事だ!

正直、積極的な幼馴染にめちゃくちゃドキドキしてしまった。

くそっ、これも梨音の罠だったか。何たる不覚!


でも、そういうちょっとお茶目な所もかわいい。


……が!

今回のは、許すまじ!


俺はできるだけいかつい顔をして、梨音の手をぎゅっと握る。


「お、おい梨音!」

「な、何かしら!」

「覚えとけ!絶対、スピーチでお前を、今の俺の数十倍、

 いや数百倍照れさせてやるからな!」


俺はそう宣言した。いや、せねばならなかった!

幼馴染に照れたままで、終われるものか!


絶対に、お前を照れさせてやる。

そして、一馬じゃなくて俺を選ばせてやる!


「じょ、上等よ!絶対に無表情でクールキャラを貫いてやるわ!」


梨音も俺にそう叫び返すと、

にやりと笑って立ち、自分の教室へと走っていった。


俺はその背中に、言いたかった言葉を投げかける。


「期待してろよ、梨音!」

「当たり前でしょ!」


梨音が手を振って教室に入るのを確認してから、

俺も自分の教室に入る。


こうして元々、俺vs一馬だったこのスピーチ対決に

俺vs梨音という構図も加わることになった。





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