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文芸部作戦会議(シスコンを除く)

「断じて認めんぞ、私の大事な妹がそんな破廉恥な格好をするのは」


梨音のお姉さん、つまり会長はそう言い切ると、ふんと鼻を鳴らした。


「年頃の女の子が、しかもお前のような可愛い子がそんな服を着ていては、その……学校の風紀が乱れる!まずい!」


……ん?聞き間違いか?

今、梨音の事「可愛い子」って言ったか?


いやいや、こんな怖そうな人がそんなこという訳ないな。聞き間違いだろう。

そう、やや強引に自分を納得させる。


だが、俺の隣には納得していなかった奴もいた。梨音である。


「お姉ちゃん、いいかげん妹離れしたら?」

「何?」


眉間にしわを寄せ、いかつい顔でこちらを見つめる会長に、

梨音は仕方ないというような表情で語り掛けた。


「こんな事言いたくないけど、お姉ちゃんいつでも私と一緒にいたがるじゃない。

 ご飯食べるときも、お風呂入るときもそうだし。ちょっと過保護じゃない?」

「なっ……それは姉妹だし、当たり前じゃないのか?」

「当たり前な訳ないでしょ」

「なに……」


固まった会長に、梨音は追い打ちをかける。


「そもそもなんでお姉ちゃんにしかオシャレした姿を見せちゃいけないのよ」

「む、それは、可愛さでお前に悪い虫が寄ってこないか心配で……」


言いよどむ会長。もしかして、この人……


「シスコンなのも重すぎると痛いわよ」

「うっ!!」


あ~!言っちゃったよ!俺があえて口にしなかったとこ!


残念過ぎてわかりたくなかったけど、多分会長は重度のシスコンなんだなって思ってたよ!

でもそれ妹から指摘されるの辛すぎるでしょ!


「ううっ……」


ほら見ろ!会長が泣きそうになってるじゃないか!少しは手加減してやれよ!


焦って梨音の方にアイコンタクトを送る俺だったが、梨音はそれを完全にスルー。

ま、まずい。何とかしなきゃ……


ガタガタッ。


会長は半泣きで立ち上がると、こちらをキッと睨みつけた。


「もう梨音の事なんか知らない!いつも買ってあげてたプリンもおごってやんない!バーカバーカ!」


見事なまでの捨て台詞である。


ガタガタ、ピシャリ!


さっきまでの態度からは想像できないようなぐしゃぐしゃの表情(ちょっと可愛かった)で、会長は教室から走り去っていった。会議前なのに。

ムキになって「文芸部通してあげない」とか言わないあたり、別に悪い人ではないのだろうが……


「残念ね」

「うん……お前も悪いぞ」

「え、そう?」


首をかしげる梨音に、俺は渋い顔で語り掛けた。


「もっとマイルドに言ってやれよ」


梨音はそれを聞いて、顔を曇らせる。


「マイルドに言っても通じないのよ。あの人かなり重度のシスコンだから」

「なるほどな……」


梨音の疲れた表情を見るに、姉妹間でも色々あるのだろう。


まあ、出て行ってしまった人は仕方ない。

あの様子では、俺が声を掛けても戻って来ることはないだろう。


「しょうがない。会議するか」

「そうね。申し訳ないけど、先生。お願いします」


梨音が横にいる伏見先生に声を掛けると、先生は「あいよ~」とゆるい返事で

机の上に何枚か資料を広げてみせてくれた。


「これは全部事前に生徒会長が準備してくれた書類なんだけど……」


マジか。申し訳ねえ~!

今度会う事があったら、梨音の代わりに菓子折りでも持っていこう。


心の中でそう誓う俺を横目に、伏見先生の説明は続く。


「既定の場所なら宣伝をしてよい(廊下の踊り場や、正面玄関の柱などに宣伝ポスターを張ってよい)。これが一つ目のプリント。ポスターとかは後で皆で考えよう」

「はい」


ポスター作成か。わくわくするな。


「二つ目は、5人以上集まれば生徒会と相談して企画などを開催してもよいってプリント。今後活動するときのための規則だね」

「ふむ」


これは、ゆくゆく考えるべき事案だな。今は後でいい。


「あと、三つ目には生徒会の管轄でないとこで直接話を通せるなら企画ものも現場の基準でやっちゃってOK(委員会とか)って記載されてるね」

「なるほど、興味深いですね」


つまり、今の二人の状態でもやり方と交渉方法さえ考えれば、

企画を行う事は可能であるって事だ。もちろん小規模だが。


「最後に……私はこの企画には個人的にあまり乗り気ではありません(三年 霧崎令)って会長の署名が書いてあるね」


やっぱ乗り気じゃないんかい!そしてそれを資料でまで主張していくんかい!

梨音もキャラ濃いけど、お姉さんの方も大概だなオイ。


ある意味、純粋で似たもの同士といえるのかも知れない。

俺がそう勝手にうなずいていると、難しい顔をした梨音に話しかけられた。


「ねえ夏樹。つまり、私たちが今やらなくちゃいけないのは、文芸部としての活動と、文芸部への勧誘の両方って事よね」

「そうだな。まあ活動内容によっては人数が必要な時もあるから、まずは勧誘に力を入れたいところではあるけどな」

「なるほど、了解よ」


梨音はあごに手を当てて考え、しばらく沈黙した後自分の案を話し出した。


「先生、今日は私たち帰ります。どうせ姉がいないと生徒会と話をすることが出来ないし、今の部員は私と夏樹の二人だけなので、帰ってゆっくり夏樹と話しあいます」


伏見先生はそれに、「おっけ~、二人がそれでいいなら僕も了解!」と短く答え、机の上の資料をまとめてくれた。



「じゃあ、今日の会議はここまで!二人とも、お疲れ様!」


















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