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恋愛相談 その3

「……デート?俺と梨音が?」

「そうよ、もちろん。他に誰がいるの?」


いつも通りのつんとすました顔で、

俺の幼馴染はさらっと、『デート』という単語を口にした。


成程、梨音とデートか……


「って、ぜんぜん成程じゃねえよ!」


とぼけた顔の梨音に、俺は過去最高速でツッコむ。


「あの話の流れから、俺たちがいきなりデートって、

 意味わかんなさすぎるだろ!?」

「そ、そうかしら?」


だって、梨音は好きな奴がいるって話を今までしてたのに、

俺とデートしちゃまずいだろ。


梨音もさすがに、俺の言いたいことが分かったのか

うなずいて、俺を手で制止する。


「えっと、それはそうかもしれないけど。

 一旦、私の話を聞いてほしいの」

「ん、おう」


コホン、と一つ咳払いしてから、梨音はデートの説明をし始めた。


「……ちょっと、説明が不足していたわね。

 要するに、夏樹には()()()()に付き合ってもらいたいのよ」

「予行練習?それって、デートのか?」

「そう」


梨音は、少し恥ずかしそうにためらいながらも、

俺に相談を持ち掛けてきた。


「夏樹には、私の好きな人の役をやってもらいたいと思ってるの」


よほど俺に話すのが恥ずかしいのだろう。

梨音は顔をどんどん赤くして、たどたどしく続ける。


「その、こういう好きな人にアプローチするプランって、

 事前に計画しておいた方が、いいって聞くから……」


なるほど……

だから、俺が必要だったのか。


「……夏樹がいいなら、デートの練習をさせてほしいと思っているの」


ゆっくりと、しかし明確に意思を感じさせる声で、梨音はそう言った。


好きな人の為に、恥ずかしいのをこらえて、男の俺に質問したり。

好きな人に振り向いてもらうために、幼馴染の俺と、予行練習までしようとしたり。


こいつはどこまでも一途で、まっすぐな奴で、頑張り屋なんだな。

本当に、すごい奴だぜ。幼馴染自慢になっちまうかもしれないが。


「どう、かしら」


梨音が不安そうに、俺の返答を待っている。

俺の答えは、もちろんイエスだった。


「いいぜ、一緒に頑張って練習しような」


梨音は、俺の返答に目を見開き、そして

花が咲くように、ぱあっと笑顔になった。


「ありがとう、夏樹」


本当に嬉しそうに笑うなあ、梨音(こいつ)は。


こんないい子に好かれてるのに、それに気が付かない鈍感な奴が

この世に存在するとは。


全く。

そんな奴がいたら会ってみたいね、俺は。


……ん?


ぼやいていた俺はそこで、重要な事に気が付いた。


……俺、梨音の好きな奴がどんな奴か、ほとんど知らなくね?


「なあ、梨音」

「なにかしら、夏樹」


梨音は優雅な仕草で紅茶を口に運びながら、

俺の方に微笑んだ。


俺はそこに、さっき気が付いたことを質問する。

いや、しようとした。


「お前の好きな奴って、どんな奴……」

「げっほ!ごほっ!」


梨音は俺が質問しようとした瞬間、盛大にむせた。

慌てて、俺は梨音の側に駆け寄る。


「だ、大丈夫か?」

「ごほ、ごほっ……驚かせないでよ」


梨音は口をハンカチで抑えながら、俺に不満そうな目で抗議してきた。


え、でも俺、そんなビックリさせるような事言ったか?


戸惑う俺をよそに、梨音はハンカチで口を拭う。

そして、なぜか俺と目を合わせずに、小さくぼそりとつぶやいた。


「不器用だけどやさしくて、私の事をよく考えてくれている人よ」


不器用だけど、やさしい、か。

俺はその言葉を、頭の中で繰り返してみた。


……ダメだ。

悪い奴では無いことは分かるんだが、

具体的にどんな奴だかわからん。


予行練習の時、参考にしようと、

俺は梨音に、さらに質問した。


「もっと具体的に、ここが好きとかは無いのか?」


すると梨音は、なぜかぷい、と反対側を向いてしまった。


「これ以上は!……恥ずかしいから教えてあげないっ」

「まじか」

「大マジよ」


よくよく後ろ姿を観察すると、梨音は耳まで真っ赤になっていた。


好きな奴の話をするだけで、この照れっぷり。

本当に梨音は照れ屋なんだよな。


俺は幼馴染にニヤニヤしながらも、追及を止める事にした。


照れている梨音は、本当に可愛いけど、

怒っている梨音の怖さは、それ以上にヤバいからだ。


でも、もちろん梨音はいい奴だけどな。


「梨音」

「何?急にしんみりしちゃって、どうしたの?」


俺の顔を、不思議そうに見つめる梨音。


そのきょとんとした顔が面白くて、俺は笑顔になりながら

梨音に、思っていたことを伝えた。


「今回、俺を頼ってくれて、ありがとな」

「えっ」


梨音は驚いたのか、一瞬、目を丸くした。

だがすぐに笑顔になって、俺の背中をばん、と叩いた。


「あんたも、困った時は私を頼りなさいよ。

 借りができたままじゃ、私が困るし」


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