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恋愛相談、その1

「……俺に、恋愛相談?」


梨音の突然すぎる提案に、俺は面食らってしまった。


いや、言っている意味は分かるのだが……

なんで相談相手が、恋愛経験のない俺なんだ?


梨音にはお姉ちゃんもいるって話だし、

わざわざ俺に相談する必要がない。


俺は少し首をかしげながら、梨音の様子をうかがった。


「そうよ。私が、夏樹に恋愛相談」


梨音は落ち着かない様子で、髪をいじっている。

これは、こいつが何か考え事をしているときのくせだ。


どうやら、本気で恋愛相談をしようとしているらしい。


梨音はうつむいてもじもじしながら、小さな声で喋りだした。


「その……同年代の男子代表として、夏樹の意見が聞いてみたかったの。

 好みのタイプ、とか。こんな事をされたら好きになるとか」


なるほど。

俺が同世代の男子だからか。


俺の好みを知ることで『男子うけする』仕草や格好の

研究をしようって事だな。納得。


「了解だ。俺に協力できる範囲であれば何でも聞いてくれ」


俺の言葉に、梨音は嬉しそうに微笑(ほほえ)んだ。


「ありがとう、夏樹!」


梨音が喜んでくれたことが嬉しくて、俺まで笑顔になってしまう。


幼馴染の俺ですら、ここまで梨音といて楽しいのだから、

梨音に好かれている奴は、めちゃくちゃ幸せだろう。


そう考えると、俺はそいつの事を

なんか、うらやましいなと思ってしまった。


顔もしらないどこぞの馬の骨に、

可愛い幼馴染をやるのはしゃくだしな。


……でも、梨音の気持ちが第一だからな。

梨音がそいつと幸せになれるなら、それが一番だ。


「夏樹、なんでいきなりむくれているの?」

「いや、なんでもない」


梨音が不思議そうに、俺の顔を覗き込む。

俺はなんだかもやもやしつつも、話を聞くために姿勢を正した。


「話し始めて大丈夫かしら?」

「おう、どんとこい」


わかったわ、と梨音がうなずく。


彼女は俺の目をしっかり見つめると、

恥ずかしいのか顔を赤くしながら、たどたどしく話し始めた。


「え、えっと。まず、夏樹には好きな人はいない、のよね?」


上目遣いで俺の反応をうかがってくる梨音に、俺はうなずく。


すると、梨音は安心したように胸をなでおろした後、

ガッカリしたように小さくため息をついた。


おそらく、俺に好きな人がいないから、

一緒に好きな人の恋バナで盛り上がれないというガッカリだろう。


……違ってたらすまん。女心は分からないんだ。


「じゃあ次ね。夏樹の、好きな女の子のタイプを教えて」


梨音は恥ずかしがりながらも、真剣に俺の目を見つめてくる。


改めて見ると、梨音の目はとてもきれいに澄んでいて。


見つめあっていると、恋のドキドキが

こちらまで伝わってくるような気がした。


俺は心臓がバクバク言うのを感じながらも、

頑張って冷静に、答えを考えた。


「家事が出来て、困ってる人にやさしくて、

 いつも頑張っててかわいい女の子」


俺は、好きな奴がいないと言った。

それは、ある意味本音だし、ある意味嘘だ。


確かに俺は、恋愛対象にしてる女の子はいないけれど、

信頼している大好きな女の子ならいる。


……もちろん、梨音の事だ。


だから、好きなタイプって言われても、

梨音の事しか思いつかないんだよな。


だから、梨音の好きな所をあげてみた。


だが、その答えをどう解釈したのか、

梨音は苦々しげな顔をした。


「夏樹、それ、無理じゃない?

 女に完璧を求めすぎてない?」

「そうか?」


少なくとも、お前はばっちり出来ていると思うけどな。


「うん、まあ……頑張るわ。

 じゃあ、次の質問行くわね」

「おう」

「えっと……」


そこでなぜか、梨音は言いよどんだ。

顔を真っ赤にしながら、もじもじしている。


「な、夏樹は」

「おう、どうした」


俺が助け船を出すと、梨音は深刻そうな顔をした。


普段平然としている梨音が、こんな深刻な顔をするなんて。

いったい、どんな質問なんだ。


「女の子の胸と尻、どっちが好み?」

「は?」


あえて二回言おう。は?


「こ、こんな恥ずかしい質問を二回も繰り返させないで。

 早く答えてよ」


そ、そんな。

いきなり、なんて質問なんだよ。


どっちを答えても、梨音に引かれる気がするんだが。

そもそも、その質問必要か……?


俺は頭の中ではてなマークが点滅するのを感じつつ、

梨音に言われた通り、一応真剣に考えてみる。


どっちかって言われると、胸か……?


「ちょ、ちょっと!

 私の胸をじっと見るんじゃない!このヘンタイ!」

「み、見てねえ!」

「絶対見たでしょ……凝視してた!

 エロ本みたいな事考えてたんでしょ!」

「んな訳あるか!」


俺は必死で弁明する。


俺の視線は、一瞬無意識に梨音の胸に吸い寄せられていた。

それは否定できない。


だが、見ようとして凝視(ぎょうし)していたわけでは無いのだ。

断じて違うぞ。


「梨音が魅力的だから、俺がたまたま梨音に目が行ってたんだろ!」

「あ、あんたねえ!

 私を褒めればいつでも解決すると思ったら、大間違いよ!」


梨音は耳まで真っ赤にして、俺をにらんだ。


「まあ、私を今後、いやらしい目で見ないって誓えるなら許してあげる」


腕を組み、高圧的にこちらをにらんだその姿は、まるで女王様だ。

……ちょっと目線が俺より下で、見上げているのが可愛い。


「はいはい、誓いますよ。梨音様」

「はいは一回」

「はーい」


俺がそう返事すると、梨音はようやく納得したのか

ふん、と鼻を鳴らした。


「あんたが胸を好きなのはわかったから、次の質問行くわね」


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