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握手?いや違う、恋人繋ぎだ

また締め切りを破りました!!!

すみません!!!!

「夏樹。そろそろ起きなさい」


その声で、俺は目を覚ました。


「梨音……?」

「あ……目を覚ましたのね。良かったわ……」


俺の前には、心配そうな梨音の顔があった。


「大丈夫?いきなり気絶したのよ、あんた」

「お、おう。もう大丈夫だ」

「本当に?」


梨音は不安げに俺の顔を覗き込んだ。

そして、俺の額に手を当てる。


「うーん、熱は無さそうね。一応脈も診ていい?」

「いや、まじで大丈夫だから」


梨音の提案に、そう俺は首を振る。

体の問題では無いことは、自分がよくわかっているからだ。


「でもなんかの病気かもしれないから、絶対病院行きなさいよ」

「……おう。ありがとな」


あくまで俺を気遣い、アドバイスをくれる梨音。

馬鹿馬鹿しい理由で倒れた俺は、罪悪感を感じつつも

その言葉に黙ってうなずくしかなかった。


「じゃあ、私はもうそろそろ帰るわね」


梨音はバッグを持つと、机に手を置き立ち上がる。

もうそんな時間かと俺が時計を見ると、何と八時だった。


俺と梨音が家で喋り始めたのが六時。

という事は……?


「あのさ、梨音」

「なに?」


嫌な予感がする。

俺はそう感じつつも、梨音に質問した。


「俺、何時間眠ってたんだ……?」


梨音はそれに、平然と答える。


「だいたい、一時間半くらいじゃないかしらね」


い、一時間半……!


俺は幼馴染が家に来ているにもかかわらず、

一時間半も失恋(?)のショックで眠っていたというのか……!


無様(ぶざま)!圧倒的無様(ぶざま)


「梨音は、退屈じゃなかったか……?」


自分のあまりのふがいなさによるショックで、

俺はそれしか言葉を発する事が出来なかった。


だが、梨音はその問いかけに、首を横に振った。


「最初は心配したけど、途中からはなかなか楽しかったわよ。

 あんたの寝顔見るのも中学生ぶりだしね」


それに、と梨音は嬉しそうに続ける。


「あんたの寝言も聞けたのよ。録音があるから再生するわね」

「えっ……」


俺は、その言葉に危険を感じ思わず身構える。

だが、そんな俺に梨音は全く構わず、スマホを取り出した。

そして、録画の再生ボタンを押す。


スマホに、俺のだらしない寝顔のアップが映し出された。


「意外と寝顔可愛いわよね」

「どこが!?」


俺はそのあまりの醜さに、反射的に画面から目を背けた。

だが、俺とは対照的に、うきうきで鑑賞する梨音。


その理由は、すぐわかった。


『ん~。りおん~!てをつなごうぜ~』


つい一時間前くらいの俺が、

寝ぼけてとんでもねえ事を口走っていたからである。


「う、うわあ……」


もう恥ずかしいという感情を通り越して、

俺はしっかり反省しなければという気持ちになってきた。


きっと、梨音もドン引きで苦笑いしているだろう。

俺はそれを覚悟して、恐る恐る横を向いた。


「ふっ、ふふふ、えへへへへ」


梨音は、なぜか上機嫌そうに目を細め、ニヤニヤしていた。

しかも、スマホで俺の寝言の部分だけを

しつこくリピート再生しながら、である。


「そ、そんなに面白かったか?これ……」


俺が戸惑(とまど)いつつそう聞くと、

梨音は首を振って否定した。


「面白いってわけじゃないけど……。

 でも、夏樹が私と手を繋ぎたいと思ってるのが

 よく分かっていいわね。

 寝言に出るくらい思ってくれてるんでしょ?」

「なっ……」


自分の寝言に対する幼馴染の反応に、動揺する俺。

そんな俺に、梨音は少し意地悪にはにかんだ。


「だ、だから、学校ではカップル扱いされてるんだし、

 学校内で手を繋いだらいいんじゃないかしら?」

「ええっ、でもよ……」


俺たちはカップルじゃないだろ。

俺がそう言いいかけるのを、梨音はさえぎった。


「べ、別にいいじゃない、手ぐらい繋いだって。

 お互い異性の練習になるでしょ。

 夏樹が相手なら私も全然大丈夫よ」

「そ、そうか……?

 でも、前はめちゃくちゃお前も緊張してたし……」


俺のその言葉で手を繋いだ時の事を思い出したのか、

梨音は顔を赤くした。


だが、それでも梨音は胸を張る。


「っ!次は、大丈夫よ!

 安心して私と手を繋ぎなさい」


可愛い幼馴染は、俺にそう言い切った。

そして自信満々という風に、手を差し出してくる。


「ほら、私とエスコートの練習よ」

「おう、じゃあ、よろしく」


俺も、恐る恐る手を差し出す。

そして、小さくてかわいい梨音の手を握った。


「…………」

「…………」


手を握り、俺は梨音を見つめた。

梨音も、俺の目を無言で見つめてくる。


手を握っていると、梨音の胸の鼓動が伝わってくる気がして。

なんかめちゃくちゃドキドキして、手の震えが止まらない。


向こうもそれは同じみたいで、顔を真っ赤にしながら

何も喋らずに、俺の手をぎゅっと握っている。


そうして、四十秒くらいたった頃。


先に沈黙に耐えられなくなったのは、梨音の方だった。


「い、いつまでこのまま手を繋ぎ続けるつもりなの……!

 あんたに見つめられてるのも恥ずかしいし、

 わ、私には刺激が強すぎるわよ……!」

「わ、悪い!つい!」


俺はそう謝って、とっさに手を離す。

梨音は手を離したことでやっとホッとしたのか、深く息を吐いた。


「ま、まあ異性に対する耐性を鍛えるには、いい練習になったわね。

 今日はこれで解散ってことにしましょ」

「おう、じゃ、じゃあな」

「ええ、また明日」


俺たちは、ぎこちなく挨拶を交わした。


今にもどうにかなってしまいそうな、

そんな胸のドキドキを抱えつつ。


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