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エロ本を探してはならぬ

深夜三時半に書きました。眠い。

楽しんでいただけると嬉しいです。

「私は美人よ」


俺の幼馴染……梨音(りお)は、それが口癖だった。


夜空の様に艶やかな長い黒髪。

磁器のように白く透明感のある肌。

西洋人形のように整った顔立ちと、吸い込まれそうなその瞳。


たしかに、梨音は美人だ。可愛い。


……そのめちゃくちゃ難のある性格を直してくれさえすればの話だが。


     *


「ただいま~……え?」

「おかえり夏樹、どこにエロ本を隠したの?」


おかしいだろ。


なんで学校から帰ってきたら、幼馴染が

俺の部屋でエロ本を探しているんだ?


というか鍵閉めてたのにどこから入ってきたんだよ。

お前は幽霊か何かか?


「なんで教える必要があるんだよ」

「だって私美人だし、夏樹の幼馴染だから」

「何の回答にもなっとらん」


毎回こうである。

梨音は気が付いたら俺の部屋に入り込んでいて、

こうしてしばらくグダグダ居座りやがるのだ。


こんな男の汚い部屋に、なんで来るかねえ。


「他人に言えない性癖でも持ってるのかしら?

 私は心が広いから、なんでも許容してあげるわ」


梨音はそう言うと、偉そうに腕組みをして座った。


「見せてくれたら、私が実写で再現してあげてもいいわよ?」

「ぜっっったいお断りだ」

「こんなにかわいい子が目の前にいるのに?」


ニヤニヤしながらこっちを見つめてくるな。


もうどこからツッコんでいいのかわからんけど、

とりあえずお前は恥じらいを持つべきだとは思う。


「もう6時30分だぞ。いつも帰る時間だ」


俺がそう言うと、梨音は頬を膨らませて

抗議してきた。


「この部屋の片付けもしてないし、あんたに料理作ってやってもないから

 まだ帰らないわ」

「でも、それじゃ前来た時と同じ様に、お前が帰る時間が遅くなるじゃないか……」


だから帰った方がいい、と言おうとした俺の口を

梨音は手でふさぐと、優しく微笑んだ。


「私はあんたの世話を好きで焼いてるんだから、いいの。

 あんた一人暮らしでしょ?どんどん頼ってもいいのよ」


全く、どこまでも優しい奴め。

エロ本のくだりが無かったら、危うく

幼馴染に惚れて求婚するところだった。


「私は家事も出来る美人だから、よろしく頼むわね」

「おう」


こうやって毎回来てくれるのも、梨音の気遣いなんだろうな。

エロ本のやつはまあ、ただの悪戯だが。


「じゃ、お言葉に甘えて頼らせてもらうことにするわ。

 ありがとな、梨音」

「ええ。……じゃあまずは部屋の片付けからね」

「おう」


よっこらせと起き上がった俺たちはそれぞれ、

部屋の物の整理整頓を始めた。


とっ散らかっていた物たちが、梨音の手であるべき場所に素早く

収納されていくのに対し、俺はこの手の作業が苦手なのもあって

あまり掃除が進まない。


「私の綺麗な顔に見とれてないで、手を動かして頂戴」

「はいよ」


そう返事して作業に戻る。

梨音の顔は確かに綺麗だな、と思ったのはあいつには内緒だ。


 *


それからしばらく作業を続けると、ふと俺は視線の先にあった、

ほこりをかぶった一冊の本が気になった。


(なんか嫌な予感がするんだよな……)


そう思いつつも掃除なので仕方なくその本を手に取り、ほこりを払いのける。


「あっ、これは!」

「どうしたの?見せなさい」

「あっ、ちょっ、待ってく……」


梨音は素早い動作で俺から本を奪い取ると、

制止も聞かずに中を開く。


「え、えっ!?」


パタン。

中を見た梨音はびっくりしたように

すぐ本を閉じると、耳まで顔を真っ赤にして

こちらを向いた。


「あっ、これって、その……()()()()よね?」

「うん、そうだな」


そう、俺が間違えて発掘したのは、あの例の本であった。

しかし、それを幼馴染に読まれるとは、一生の恥……!


「『お兄ちゃんと一緒!~13人の妹たちとのはーれむらいふ~』ね……

  こういうのがあんたは好きなのね……」

「う、うわあああああ!!読み上げるな読み上げるな!!」


羞恥で死ぬ。まじで。

もう二度と立ち直れないかもしれないよ、俺は。


顔をさらに真っ赤にしつつも、幼馴染は続ける。


「い、いいのよ?別に!健全な男子高校生としては、当たり前、でしょうし。

 わ、私はすこしびっくりしたけど……いきなり見ちゃってごめんなさい。」


いやもうこちらこそマジすいません。なんかごめん。

追い詰められた俺はDO☆GE☆ZAまで考えていた。


「いや、俺こそこんなものを無造作に部屋に置いてたのが悪かった。

 変なもの見せて悪い、許してくれ」

「いいのよ。でも……これを再現するのは……まあやってほしいなら

 やらなくもないけれど……」

「や、やらんでいいやらんでいい!」


慌てて否定すると、梨音はほっと胸をなでおろした様だった。


というかそもそもそんな事させられるか!

こっちがDO☆GE☆ZA直行だ。


…………


しばしの沈黙。


お互いに気まずい雰囲気の中、恥ずかしがりながらも彼女は


「じゃ、掃除再開しようかしら……」


とこちらに合図した。


「お、おう」


お互いぎこちない動きで、目の前の物を分別していく。


妙に気まずい雰囲気の中、俺は


(やっぱり口ではああ言ってた梨音も、実際見ると恥ずかしがるんだな)


とちょっと不思議な気分だった。


ちょっと可愛かったなとも思った。


が、恥ずかしがってる梨音が可愛いという事を本人に伝えたら、

張り倒されるのは流石に明白。


だから、あえて何も言わずに俺は掃除を続けていった。



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