あらためてご紹介、太元帥明王
さて──。
朝廷の怨敵、平将門を調伏し、元(中国)の襲来を退け奇跡的な勝利を日本にもたらしたとされる秘密修法『太元帥法』の本尊、太元帥明王。
調伏とは、敵や悪を教化する、成道の障害を取り除くという意味です。
インドの土着神だったものが密教に取り入れられ、毘沙門天の眷属、八大夜叉の1つに数えられ、曠野鬼神大将とも呼ばれました。
元はインド神話で梵名(原名)はサンスクリット語のアータヴァカ。
漢訳は阿タ薄倶(ボクのスマホではタが変換できません)。
『林に住む者』という意味だそうで、曠野鬼神と意訳されました。
林に住んで子供を喰い殺す悪鬼が仏の教化によって国土を守護する明王になったとされています。
この明王の効験は強大で、真言を唱えればあらゆる邪気や悪鬼の攻撃を退けるとされました。
伝えられる御姿は、黒青色の御体、身体中に蛇が纏い付いているとされます。
6から18面、8から16本の腕を持ち、それぞれの手には、金剛杵や刀など多くの武具を携えています。
最上面のみが仏相で、残りは3眼で逆立つ赤髪を結い上げた忿怒相。
この太元帥明王を本尊とする太元帥法は、真言宗の常暁が唐から請来したもので、後に宮中で行われる大法へ発展しました。
国家規模の秘修法で、中世以降は醍醐寺や秋篠寺が、この法と深く関わりました。
仁明天皇の御世に法淋寺に本尊を安置、以降宮中で行われるようになり、毎正月の8日より7日間にわたって修せられ、明治期まで行われました。
印は金剛界大日如来と同じ智拳印。
その化現と伝えられるからでしょうか?
化現とは、神仏が姿を変えて現れた姿。
「え?」と思われた方は、『基本的な考え方』の頁で説明した、インド神話の文化から密教にも取り込まれた考え方のことです。
ただ、ボクが太元帥明王を知った朝松健さんの小説では、この明王に限っては、あらゆる武術の構えも印として用いられるとあります。
物語の書き手としては、なかなか心をくすぐられますが、それが伝承なのか(創作にあたっての資料調査には信用のおける作家です)、朝松健さんの創作した設定なのかは、ボクはまだ調べられてません。
真言は資料によって微妙な違いがあります。
ノウボ・タリツ・ボリツ・ハラボリツ・オンシャキンメイ・シャキンメイ・タラ・サンダン・オエンビ・ソワカ
ナム・タリツ・タボリツ・バラボリツ・シャキャンメイ・シャキャンメイ・タラサンダン・オエンビ・ソワカ
朝松健さんの小説『逆宇宙シリーズ』では、漢字表記で表現されていた記憶がありますが、今、手元に本がありません。