功徳と歴史
さて。
ネットで大元帥明王を検索すると、『必勝祈願』『敵国粉砕』『国土防衛』『疫病退散』などの言葉が見られます。
朝廷の管理下で、国家事業的に法が行われたようです。
よく引き合いに出されるのが『元寇』。
鎌倉時代に起きた、中国を治めていたモンゴル人系の王朝の“元”による、日本侵攻。
(実は何度も計画されたのですが)日本側としては2度の侵略を受けました。
大軍であっただけでなく、武器の科学技術的な差や、戦いにおける価値観(作法)の差によって、かなりの苦戦だったようです。
絶望的だったんじゃないでしょうか?
元軍の中から嘲笑う声が沸き上がったと、そう伝えられていると、歴史の授業で教わった記憶があります。
しかし、この戦いは、日本側の勝利に終わります。
2度の侵攻とも、突然の台風で、元軍側に壊滅的な被害が出たからです。
こんな国家的な危機でしたから、当時の人々はそれぞれの信心や信仰の中で祈り、この日本側の勝利を、みんなが、さも自分の信心するものの力のおかげであるかのように吹聴しているようです。
実際、ボクの実家は日蓮宗系の団体に属していて、幼かったボクは「2度の奇跡的な勝利は、日蓮聖人のあげたお題目のおかげだ」と教えられてきました。
しかし、公式見解 (?)というか、国家として祈願が行われたのが、朝廷の管理下にあった『大元帥明王』の法です。
ちなみに……こーゆーことを載せるのは悪意的で険があるのですが、ボク自身が騙されてたようで不快なので載せてしまうと、日蓮宗と“奇跡的な勝利”に因果関係を唱える人がいるのは、無理があるようです。
元寇の始まりたての時期に、この元寇を、「自分に対する幕府の扱いに対して遣わされたもの(※天罰って意味でしょうか?)だ」的な主旨で書いた日蓮聖人の手紙が博物館に現存しているそうです。
攻めてきたことが天罰的なもの(当然、たくさんの日本側の死者が出ました)で、(多数の元軍側の死者を出して)追い払ったのも聖人の力だとするならば……なんというか……“たくさんの命を使い捨てにしたマッチポンプ”みたいというか……。
だって元軍側の兵とは言っても、実際は、ほとんどが元に敗れて統治された南宗や朝鮮半島の人々ですし……。
攻めてきた要因について述べた勢力が、追い払ったことまで自分の手柄のように語ったのだとしたら……ちょっと人間性的に怖い。
これは、後の世の人が何か権威付けみたいなことがしたくて、よく調べないでハッタリをこいたか、敬愛の心が強すぎて、よく調べないで思い込みで誤認したと考える方が自然だと思います。
関連性についてはスルーする方が良い、または関連性を主張しない人から教義的なことについての話にのみ耳を傾けるのが良いように思います。
まあ、元寇の奇跡的な勝利と関連づけられるのは、一般的には大元帥明王と考えていいと思います。
ずーっ後の世の、世界大戦での敗戦の時はどうだったのか?と問われると、話がややこしいですが。