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万年非モテの童貞アラサーが最強チートスキル「常識改変」持ちで異世界転生したけど、これ無理ゲーじゃね?  作者: 高坂悠貴
3章 彼女いない歴自己ベストを更新しつづける男のハーレム妄想は無罪って法律で決まってる
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43 惑いて問えよ己が心に・5



 かつん、と足音が鳴った。

 (おとこ)相田双太による一世一代、空前絶後のマニフェスト。――その直後だからこそ訪れた静寂に、アリアさんの足音はよく響きわたる。

 びくりと肩を震わせたのは意外にもリリィだった。


「おっ、お姉ちゃんっ!?」

「リリィ、貴女(あなた)……」

「あっ、あの、そのっ、そ――そうや! 今度はうちが見張り行ってくるね!」


 真っ赤な顔をあっというまに蒼褪めさせたリリィは、俺を盾にしてアリアさんに押しつけたかと思うと――返事も待たず、脱兎のごとく城内に逃げていった。……のだが。


 当然、そこには騒ぎを聞きつけやってきた他の魔法少女たちがいるわけで。

 ついでにそいつらは、つい今し方の「ここが故郷」「みんなが大好き」発言を聞いているわけで。


 あっという間にリリィはとっ捕まった。季節外れの転校生よろしく囲まれ、あれやこれやと質問攻めにされていく。見た感じ〝いじめられている〟というより愛をもって〝いじられている〟っぽいので、まあよしとしておこう。


 そして当然ながら、後には俺とアリアさんが残された。


「……リリィに用事があったんじゃ?」

「私が行けば、水を差すことになりかねないわ。私のせいで、これ以上、肩身の狭い思いをさせたくないの」

「……なんかすいません」

「気にしないで。それよりも、靴、駄目になってしまったわね」


 アリアさんはすこし困った顔で、スカートのなかを探る。

 とりだしたのはクラブとダイヤの模様があしらわれたハンカチだ。


 なにゆえハンカチ?


 首を傾げる俺の目の前で、ハンカチは小鳥のように飛びたった。俺たちの頭上でくるくる回ったかと思うと、ツバメのような低空軌道で足元めがけて飛んできて――あっというまに靴へと変わる。


「うわっ、なんだこれ……!?」

「私の魔法、〈百花繚乱(フロート・スート)〉よ。火、水、風、土に対応する記号(スート)を付与して、その属性の加護をのせることができる。今のは〈()()()〉と〈()()()〉を使ったの」

「……サイズまでぴったりだ。流石アリアさん、ひかえめに言っても天才なんじゃ……!?」

「買いかぶりすぎよ。貴方が経験を積んで〈常識改変(インスタント・キング)〉に習熟すれば、私ではまるで太刀打ちできないわ」


 まるで見てきたかのように断言したあと、アリアさんはおもむろに話をきりだした。


「……〈常識改変〉といえば、魔獣の様子はどうだった?」

「あ、やっぱり効果がきれてたみたいです。リリィでもダメでした」

「そう。SSRともなると永続する魔法が多いのだけれど……。魔獣相手に数時間しか効果がないなら、エリザヴァトリを洗脳して味方につけるのは難しそうね」


 エリザヴァトリを洗脳。

 そんなこと、一ミリも考えたことなかった。

 さっき「俺を売る」発言だって聞いてたのにな。あれだって俺にとっちゃ不穏なだけで、ジーンガルド的には穏便な交渉案だ。


「……そんなにエリザヴァトリって強いのか? あ、いや、めちゃくちゃ強いのはもう充分わかってるんだけどさ。でも相手はひとりだろ? この国で戦えるやつ全員で挑めば、まだなんとかなるんじゃないか?」

「エリザヴァトリは複数のSSR魔法を所有しているわ。そしてSSR魔法の使い手と互角に渡りあうには、おなじSSR魔法を使える者でないと厳しいでしょうね。……ただの人数あわせならすぐに殺されて、その血でエリザヴァトリを強化してしまう」


 そうだ、忘れていた。

 俺たちが負傷すればするほど、やつにとっての盾であり矛が増えていく。

 ある程度自分のことは自分でどうにかできるやつじゃないと、逆に足手纏いになってしまうんだった。


「じゃあこの国でSSR魔法を使えるやつは何人いるんですか? 俺と、アリアさんと、キッカさんと、」

「私と貴方、ジョゼットの三人だけね。特にジョゼットの〈素晴らしき死の慈悲アメイジング・グレイヴ〉は攻撃型の土属性で、エリザヴァトリと相性がいい。だから戦線復帰できないか様子を見に行ってみたのだけれど……」


 そこでアリアさんは言葉を濁した。

 はっきり言われずとも察する。……恐らく再起不能ってことなんだろう。


 エリザヴァトリが撤退したあとも、ジョゼはずっと耳を塞ぎながら、必死に(ベル)の名前を呼び続けていた。俺がその手を剥がし、しっかりしろと怒鳴っても、黙れ姉様の声が聞こえないと泣きわめく一方で。

 もちろん宴会場にだって現れなかったし、SEMのある大広間をでてからも見かけていない。おそらく医務室だが救護室的なところに運ばれたんだと思うが、問題なのは肉体面よりも精神面だ。


「…………なんか、すいません」

「謝らないで。血縁が(すた)れたこの世界で〈姉妹の契り〉をむすぶことは、旧世界の〝結婚〟に匹敵する価値を持つ。ジョゼットの苦しみは、それだけベルナテッドとの絆が深かった証。……私も、貴方がリリィを助けてくれて、本当に感謝しているわ」


 アリアさんが丁寧に、深々とお辞儀をした。

 予想していない方向に話が着地して、思わず息が詰まる。


 いや、俺もアリアさんに助けてもらったし。そうじゃなきゃ普通に死んでたし。とか。女の子はマジで全人類の至宝なので助けないって選択肢がないですから。とか。言うべきことも、言いたいことも山ほどあって。


 でも。

 俺のくちからこぼれたのは、俺ですら思ってもいなかった――それでいて最も訊きたかったことだった。


「……それ言っていいんですか?」



寒くなってきました。冬眠の季節です。よく寝ているだけでモチベが死んでいるわけではありません……今後ともどうぞよろしくお願いします_( _。=ㅅ=)_ Zzz...

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