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20 魔王の証明・5


「……ジョ、ジョゼ審問監査官。……彼は〈無血の王〉エリザヴァトリなのでは?」


 恐る恐るキッカさんが手をあげる。他の魔法少女たちも各々頷いた。

 やたらめったら警戒されていると思ったら、魔王は魔王でもわりと具体的に(えん)(ざい)着せられているのかよ!


「続けろ、キッカ」

「はっ。……魔王は非常に強大かつ凶暴な存在です。既存の魔王が(たお)されたり、逆に新しい魔王が誕生するようなことがあれば、早馬を百頭潰してでも一週間以内に情報がまわってきます。現在そのような報告はありません」

「ははあ」

「直近で当地方に侵入したのはエリザヴァトリ。三年に一度、各国を訪問して人身御供を要求する〈無血の王〉だけです!」

「……ま、待ってキッカ! ソータがエリザヴァトリなら、なして〈饜蝕の大驪竜インヘイル・イン・ヘル〉が攻撃してきたと!? おかしかやなか!?」

「それは……その、だから、彼が記憶喪失になったからでしょ!? これを機に主人を始末して、自分こそが次の魔王になろうと反逆――……」


よろしい(ウィ)


 がりり、と。

 恐ろしいほどの噛砕音とともに、棒つき飴が噛み砕かれた。


 もう何本目になるのかわからないほどギザ歯で飴玉を噛み砕いたジョゼは、あたかもランウェイのファッションモデルよろしく衆目を一身にあびながら俺のもとにもどり。

 飴玉よろしく、(うずくま)った俺の背中を踏みなじった。


「――……ッ……!」

「おおっと、そんな怖い顔しないでくれやがりませんかねェ」


 ジョゼはくるりと半回転すると、そのまま俺の背中に腰をおろす。

 小学生体型だから重くはないが、ジョゼにむけられた殺気がそっくりそのまま俺にも浴びせられるのがヤバい。


「キッカの意見は一理も二理も三理もありやがりまァす。アイダ・ソウタはなんらかの理由で〈無血の王〉エリザヴァトリだったころの記憶を失った。よって〈饜蝕の大驪竜〉は主人を抹殺しようとした」

「そげん……〈饜蝕の大驪竜〉が反逆するかどげんねんて、ただん憶測やなか!」

「そうでもねェわけですよこれが。あくまで〈饜蝕の大驪竜〉はエリザヴァトリの〝足〟であり〝貯蔵庫〟。アイツが魔法少女を喰っちまったらエリザヴァトリの取り分がなくなる。……この百十数年も使役されながら、いまだ竜型にとどまる程度のおこぼれしかもらってねェ」


 そうだ、完全に忘れていた。これもリリィが言っていたことだ。

 魔獣は魔力をめあてに魔法少女を襲い、喰らう。そうして蓄積した魔力におうじて人間に近い身体、知能をそなえると。

 もしもあの影竜が満足な食事にありつけていたなら、あんなふうに完全な魔獣の姿のままでいるはずがない。


「そしてアイダ・ソウタがエリザヴァトリなら。アリア、テメエがここにいて、かつ異常なまでにコイツを守ろうとするのも説明がいきやがるんですねェ」

「……どうして?」

「三年前、エリザヴァトリに連れ去られたテメエが〝生きている〟のは――ヤツの配下になったからだ」


「ま、待って、ジョゼ待ちんしゃい……!」


 瞬間、リリィの足元から光が走った。

 ずいぶんご()()()だったディナが現れ――巨大化し、その巨躯をもって檻を壊す。

 周囲がとめるよりも早く、まるで盾となるようアリアさんに抱きついた。


「なしてそげなことば言うん!? お姉ちゃんなあいつらん魔ん手から逃げてきたかもしれんやなか!?」

「そうだなァ。アリアは自力で脱出し、人知れず生きていた。身体が成長してるのもそのせいだ。たまたまアイダ・ソウタが妹を助け、〈饜蝕の大驪竜〉から逃げているのを目撃し、あわてて駆けつけた。コイツをかばうのは妹の命の恩人だから。……そう信じたい気持ちは痛いほどわかりますよォ、あたいも妹だからなァ」

「それなら……っ!」

「だが一度は逃げたなら。そんなに妹が大事なら。――なぜこの三年間もどらなかった?」

「……っ!?」

母国(ジーンガルド)にもどれば、自分だけでなく全員が報復をうけるかもしれない? エリザヴァトリに立ち向かって敗北した手前、どのツラさげて帰っていいのかわからなかった? だとしたらもっと遠方に逃げやがる。〈フィーヴィア〉や〈リカルトフォルス〉じゃない。――それこそ〈セシアクレイド〉や〈シエラ・レオーネ〉までな」


 絶句する。

 細かい話はわからないが、ジョゼの言い分は筋が通っている……気がする。


 いや俺は間違いなく地球生まれの日本育ちだけど! そのはずなんだが! なんで都合よくアリアさんがいて――俺を助けてくれたのか、さっぱりわからない。

 これはアリアさんの不利になるから絶対言わないが……俺たちは何十メートルもある崖から落ちた。彼女がいた場所から、俺がリリィを助けたシーンなんて見えるはずがない。あの落下中だって、リリィの姿はリス魔獣のしっぽで隠れて――決して下からは見えなかったはずなのだ。


 じゃあ、なんでアリアさんはあそこにいて。

 俺を助けてくれたんだ?

 今もなお俺を助けようとしてるんだ?


 アリアさんは無言だ。じっと俺を見つめている。

 妹のリリィでもなく、自身を糾弾するジョゼでもなく。俺を見ている。


「……よろしい(ウィ)


 そんな一触即発の空気を、ジョゼが手を打ち鳴らして斬りさばいた。


「ここまでが歩く教科書的優等生――キッカの論考だが、あたいは違う」

「は、え?」


 キッカさんが間抜けな声をあげる。

 いやわかるキッカさんすげえわかる。俺ちょっとこの展開についていけない。


「あたいの見立てじゃ、テメエは〈無血の王〉エリザヴァトリの忠実なる下僕じゃねェ。

 ――()()()()()()()()()()


 うんちょっと待て。マジで展開についていけない。なんだこれ。



書きたいところまで!!! 書けました!!! そろそろ完全に記憶から追放されているリスの魔獣について触れたいところ。読んでくれている方々、毎度ありがとうございます!!!!!!!!

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