第11話 海への対策2(通常版)
夜中を進む荷馬車。騒音の問題もあり、非常に静かな移動となる。野生の魔物や夜盗との遭遇を警戒しながらのものだ。まあ、周りの女性陣は、来るなら来てみろという雰囲気だが。頼もしいと言うしかない。
ちなみに今回は、メカドッグ筐体のメカドッグ嬢達が10人ほど護衛に着いてくれている。当然、ヒドゥン状態の様相である。司令塔のミツキTがリューヴィスにいるため、メカドッグ嬢達は独立行動となる。
まあ、従来のAIシステムを遥かに超えるロジックを持つため、それは正に生きていると言うべきだろう。機械式のワンコロ軍団とも言えた。
「その自然と発せられる闘気は、魔力に近いですよね。」
「ん? ああ、殺気と闘気のそれか。ドギツイものじゃなくても、それが滲み出ている感じなのか。」
「ええ、かなりの強さです。」
獲物の調整をしていると、静かに語り掛けてくる。イザリアの戦闘力からして、魔力や闘気には敏感に反応するのだろう。俺の方は、殺気と闘気を放ってはいないのだが・・・。
「常に恐々しさを醸し出しているのは、そのお力によるものでしたか。」
「意識してはいないんだがの。」
「ご自身は感じられていませんが、実際には相当な力ですよ。」
興奮気味に語る彼女達。実際に魔力が闘気に近いものだとは窺っていたが、ここまで滲み出ている事に驚くしかない。となると、身内の面々は誰もがそれに該当するだろう。特にミツキやナツミAにシルフィアも当てはまる。
「戦士や闘士の方々が放たれる闘気ですが、それが魔力に近いと言うのは窺っています。ただ、ここまで明確に差があるのは初めて見ましたけど。」
「俺達地球組と宇宙種族組は、魔力や魔法の魔の字すら知らんからな・・・。」
「電撃を放ったり、治癒をしたりするのは、5大宇宙種族のペンダント効果によるものになりますからね。」
「私達は、ただ単体で戦闘力が高いだけで、他を除けば皆様の方が遥かに強いですし。」
荷馬車の操縦を担う2人が、羨ましそうにボヤく。確かにそれは、俺にも言えてくる。
宇宙種族組たる5大宇宙種族は、その種族の力により各種の能力を発揮できる。各々が特化型の力を持ってはいるが、実際には全ての力を出す事は可能だ。例えば、カルダオス一族のヘシュナが、ドラゴンハート一族のルビナの電撃を繰り出せる、といった感じである。
対して、地球組たる地球人の俺達は、特質的な能力は一切ない。己の身体のみが最大の武器となり、そこに殺気や闘気の心当てや、力の出し加減の触りなどの力があるぐらいである。端から見れば魔法的に見えるが、実際には闘気の部類に当てはまるだろう。
それら欠点を補ってくれているのが、5大宇宙種族の能力が込められたペンダントとなる。それを地球組と宇宙種族組の全員が所持している。正に天下無双的な力だ。
「イザリアさんは、各ペンダントを持たずとも、それなりの能力を発揮できるのか?」
「できますよ。ただ、ここで数万年を過ごすうちに、魔力や魔法という概念に目覚めた感じになりますけど。」
「特質的な能力ですよね。デュヴィジェ様とは異なる力ですし。」
「でしたら、正に努力の賜物のですね。」
「初対面時に分かったが、生粋の努力家そのものだしな。」
傍らにいるイザリアの頭をポンポン叩く。それに顔を赤くして嬉しがっている。完全に魔王の威厳はそこにはない。それは、宇宙種族たるデュネセア一族の1人としてだ。
「・・・何だか、家族ぐるみの感じで羨ましいです。」
「まあねぇ・・・。お前さん達には悪いが、イザリアさんはデュヴィジェさんの遠縁になるからの。義理の娘の1人になるし。」
「恐れ多いですよ。全てにおいて、デュヴィジェ女王様には敵いませんし。」
「・・・彼女が女王様ねぇ・・・。」
徐に一服しながら呟く。改めて振り返ると、とんでもない人物が出揃っている感じか。
確かに、近場で共闘している5大宇宙種族の面々は、同族の頂点に立つ存在となる。女王と言われて大変慕われてもいた。しかし、俺からすれば普通の女性達であり、何も変わった所など全くない。特殊能力を除けば、本当に何処にでもいる女性達にしか見えないのだから。
そう思っていると、両手を自分の両手で握り締めてくるイザリア。その顔を見ると、何と号泣していたのだ。流石にこれには慌ててしまう。
「・・・貴方様のお力は、その部分に帰結するのでしょうね・・・。相手が宇宙種族でも、分け隔てない姿で接してくれている・・・。」
「・・・色々とあったんだな。」
俺の一言で、より一層号泣しだす。その彼女を胸の中に抱き寄せた。それを見た他の5人も貰い泣きをしている。数万年を生きてきたイザリアにとって、その涙が全てを物語っていた。
魔王と呼ばれるまでに至った経緯を、俺達は一切知らない。異世界組の3人ですら知らないだろう。今に至るまでに、どれだけの苦痛を耐えてきたのか想像すらできない。それでも、今こうして彼女は生きている。それが唯一無二の真実である。
デュネセア一族の派生として、今も宇宙種族の概念を貫く。警護者と共通する、調停者と裁定者を実行する姿を見ると、イザリア自身の覚悟の現れを感じずにはいられない。
(小父様、ありがとうございます・・・。)
(マスターのその一念、我々にも痛烈なまでに伝わってきました・・・。)
(・・・今は心中読みウンタラの茶化しは入れんよ。)
胸の中のイザリアが落ち着くのを見計らってか、デュヴィジェとヘシュナから念話が入る。イザリアへ向けた思いが、念話を通して伝わったようである。それは、5大宇宙種族だけではなく、人間の身内にも伝わったようだ。
(昔からそうでしたよ。誰であっても、分け隔てなく接していた。特に孤児院にいた時は、お子様方に大変人気でした。)
(あ・・姉御、マスターも孤児だったのですか・・・。)
(祖母と仰っていたので、てっきり一緒にお過ごしだったのかと・・・。)
(血の繋がりはあれど、色々とありましてね。ちなみに、彼の両親は消息不明です。)
(・・・サラッと言い切る所が・・・。)
俺が孤児である事を知った妹達。そして、いたであろう両親の事も知って愕然としている。確かに俺自身、両親の記憶は全く以て覚えていない。しかし、今の俺としては、目の前の面々の方が遥かに大切だ。こちらの方を重要視したい。
(・・・何故そこまで割り振れるのですか・・・。)
(前に言ったと思う。俺は今この瞬間を大切にしたい。昔はそれなりに知りたいと思っていたらしいが、ミツキTの素体の逝去と共に、人が簡単に死ぬ事も痛感させられた。ここに来た当初は、地球に戻る術がないと思っていたのだが、異国の地だろうが何処だろうが、死ぬ時は死ぬからな。)
(その割り振り度、本当に昔から変わらないわね。まあ、それがあるから、今の君を構築できているんだろうけど。)
(そうですよね。下手に未練があった場合、それは要らぬ思考を生み出す恐れも出てくる。警護者である手前、要らぬ考えは致死に至る。航空機事変により記憶喪失になってからの方が、遥かに警護者として動き出しましたし。)
同じ孤児として、心から悲しんでいる妹達。それに3人もしかり。だが、地球での各行動が壮絶的であったため、記憶を失ってからが本当の戦いとも言えた。皮肉な話である。
(ぬぅーん、デュヴィジェちゃんとヘシュナちゃんの感動一念に、スミエちゃんの回答で迷走し始めたわぅ。)
(ハハッ、申し訳ありません。)
(ふふり。でも、その出来事があったからこそ今がある。イザリアさんを励まされた事も、全て昔があったからこそでしょうし。)
(生きる事とは、死ぬ事よりも難しい、と。)
(ああ、お前さんの生前の名言だったな。)
落ち着いたイザリアを解放し、一服をしながら呟いた。ミツキTのその名言を当てはめるのなら、イザリアは相当な過酷な中を生きてきたと言い切れる。
(私達も、それ相応の長い年月を生きてきました。ですが、イザリア様の生き様は、筆舌し尽くし難いものだったと思います。三姉妹のみで、この過酷な環境を開拓されていった。私は貴方を魔王ではなく聖王だと確信しています。)
(よ・・止して下さい・・・聖王だなんて、恐れ多い事この上なしです・・・。)
エラい畏まりだす彼女。イザリアの気質からして、聖王よりは魔王の方が性分に合うだろう。しかし、実質的に異世界惑星を育て上げたという意味合いからして、聖王の方が正しいか。
(ぬぅーん! スターバーストは七星剣わぅ!)
(ん? 魔王の斧でも良いのでは?)
(そこは魔王の盾を使いトリプルマデュースで。)
(王家の指輪で荒稼ぎもあるで!)
(聖王の槍で歌うのです!)
(ほげぇ~♪)
・・・この美丈夫達は・・・。魔王と聖王の繋がりからか、某ゲームの内容を語っていく。それを窺った他の面々は、そのボケに釣られて爆笑していた。ミツキの手腕には、本当に感嘆せざろう得ないわ・・・。
念話を通して、総意の思いが伝わってくる。念話は、時間や空間を超越する、最強無比のコミュニケーションツールそのものだ。まあ、外面は無言でいる俺達が、内面では和気藹々と雑談している様は異様ではあるが・・・。
それでも、こうしたやり取りを経て、お互いを知っていく事ができる。念話の能力を持つ5大宇宙種族には、本当に感謝してもし切れないわな。
第11話・3へ続く。




