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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第11話 海への対策1(通常版)

 商業都市リューヴィスでの抗争。いや、ほぼ逆襲とも言える戦いだった。女性への悪態は、野郎の俺ですら激昂するほどだった。それでも、今為せる事をしつつ、部外者たる存在を撤退させる。あれだけ徹底的に痛め付けられたのだ、今後は懲りて来ないで貰いたいものだ。


 しかし、悪党とは何処までも執念深いのが特徴。再び、連中が到来しても良いように、対策を取っておいて損はない。だが、ここでの俺の出番は終わったと見える。


 抗争終了後の労いパーティー時でも窺えたが、男性に戻った俺への目線が痛過ぎた。大人の女性ならまだしも、幼子には今後の成長を思うと非常に良くない。ここは静かに去った方が良いだろう。


 それでも、今回の行動全てに後悔はしていない。今後も彼女達が問題なく過ごせるのなら、俺の役割も達成できたと思える。むしろ、彼女達が受けた傷の方が遥かに深い。今の俺には、このぐらいしかできない。




(・・・と言う感じだ、後は任せられるか?)


 労いパーティーも終わり、一同帰路に着いて行く。交差点で仁王立ちのまま、目と閉じつつ念話での会話を続ける。


(了解わぅ。リューヴィスのみんなは厳守し捲くるわぅよ。)

(ポチと私がいれば大丈夫でしょう。シルフィアさんは、スミエさんの補佐に回って貰った方が良いかと。)

(貴族共に顔が割れてるからねぇ・・・性転換状態で乗り込むのが良いわね。)


 育成のスペシャリストたるミツキとナツミA。今後のリューヴィスの事は、この姉妹に任せれば問題ない。王城に単独潜入中のスミエの補佐に、シルフィアを当てたい所だが。


(ローブと仮面も用いれば問題ないと思います。それに、ここからでも城下町の様相が分かりますし。)

(ええ、スミエ様が仰る通り、物々しさが伝わってきます。)

(徐々に避難をした方が良いかも知れませんね。)


 王城周辺の様相が、念話でも痛いほど伝わってくる。それだけ、マイナスの力が集まり出している証拠だ。最悪の場合、ここがラストダンジョンと化しそうで怖い。


(マスター、シュリーベルの移動準備は整ったぞ。デュヴィジェ嬢の力で、何時でも大量転送が可能になっている。)

(了解。問題は移転先だが・・・どうするか。)

(王城周辺の大陸より南東、ここと同程度の巨大大陸があります。まだ手付かず状態になりますが、開拓すれば住み易い場所となるでしょう。)

(流石は現地人の魔王ちゃん、やりおるわぅ♪)

(フフッ、恐れ入ります。)


 本当だわ。この異世界惑星に降り立って、実質数万年が経過しているイザリア。全ての大陸の様相は把握済みのようである。


(魔物とかは大丈夫か?)

(自我や知力が高い魔物は、同士として共に過ごしていますが、野生の魔物はどうしようもありません。個別に対処するしかないでしょう。)

(モンスターテイマーですか・・・それはまた・・・。)

(はぁ・・・。)


 イザリアが仲間の魔物達、彼女が説得して同士に迎え入れたと言っていた。つまり、ラフィナが言う通りモンスターテイマー、魔物使いである。それに一際興奮しだす身内の面々。


(わたにケルベロスナイトをモフらせろわぅ!)

(モフ道介入かしら。)

(モフ道介入、懐かしいわねぇ。)

(モモフ・モフ・モモフ♪)


 何ともまあ・・・。隙あらばネタに走るミツキに、否が応でも笑わせられる。自然的に繰り出すため、為す術がない感じだわ・・・。


(貴方はどうされるのですか?)

(俺か、北東の造船都市に行ってみようと思う。今後を考えて、ミツキTさん達はここにいた方が良いだろう。)

(でしょうね。あの貴族共がどう出てくるか不明ですし。リューヴィスの皆様方を何とかしないといけません。)


 現状を踏まえると、リューヴィスの女性陣の安全確保も最優先となる。例の愚物共は必ず襲来してくるだろうしな。しかし、今は造船都市の方の探索も必要だ。


(南東大陸への移動の目処が立ったら、こちらに来た方が良いだろう。デハラードの全員も移動させるつもりだ。)

(万事お任せを。デュヴィジェ様と共に、皆様方を完全移動させてみせますよ。)

(小母様となら全く問題ありませんね。)


 ニヤケ顔で語る姿が脳裏に過ぎる。デュヴィジェもヘシュナも、己の力を出し惜しみする事は一切ない。確実に出来得る行動を取ってくれる。


(妹達はどうする?)

(私達は少々問題があるのですが・・・。)

(お前さん達が過ごした孤児院がここにあったしな。それに、ここの女性陣が大変懐いている。下手に動いていなくなった場合、どうなるかは想像が付く。)

(今はここに残った方が良さそうです、すみません・・・。)


 リューヴィスの女性陣の修行を担当していたのは、妹達10人とトラガンチームの面々だ。その経緯からして、突然姿を消すのは問題が生じてくる。挙がった通り、ここに残った方が良いだろうな。


(では、私達がお供致しますよ。)

(言葉は悪いですが、リューヴィスでは警護側に回っており、皆様方との会話は少ない状態でしたので。)

(私達は一応、啓示を受けている身。1つの場所に留まる事を許されませんからね。)

(そうか・・・。)


 俺との共闘を買って出てくる3人。確かに彼女達は妹達とは異なり、リューヴィスに来てからは一歩身を引いて行動していた。皮肉にもそれが意識の分散をさせたとも思える。


(本当は・・・兄貴と一緒に行きたかったのですけど・・・。)

(本当にすみません・・・。)

(大丈夫、気にしなさんな。)


 申し訳なさそうに語る妹達。だが、今は彼女達の力はリューヴィスの女性陣に必要だ。ここは我慢して貰うしかない。


(サラさんとセラさんに、トラガンチームの面々も警護を続けてくれ。)

((ラジャー♪))

(ウッシッシッ♪ 扱き使ってやるから、覚悟するわぅ♪)

(そうは言うけど、率先垂範で動こうとするのは貴方じゃないのよ。)

(バレたわぅか?!)

(はぁ・・・相変わらずよねぇ。)


 何ともまあ・・・。何時如何なる時でもボケを炸裂させるミツキ。その術中にハマっている俺達は、自然と笑ってしまうのは言うまでもない。まあ確かに、彼女の力もリューヴィスの女性陣には必要不可欠だわな。



 作戦会議を行った後、静かに目を開ける。既に周りは夜となっており、静まり返っている。所々に警護担当のトラガンチームがおり、目が合うと小さく頷いてくれた。徐に歩みを始め、そのまま東門の方へと向かった。


 先の伯爵共の戦いの中、性転換状態を解いた。女性から男性に姿が変わったため、ここの女性陣には嫌な目で見られている。それに、虐待を受けた事から、今は男性自体を見させる事はさせたくない。造船都市への移動は、今から赴いた方がいい。




「マスター、移動の準備はできていますよ。」

「よろしくお願いしますね。」

「ああ、頼むわ。」


 静かに東門より表に出ると、待機中の荷馬車があった。先程の作戦会議中に、ウインドとダークHが既に準備を整えてくれていた。その傍らにはエメリナ・フューリス・テューシャの3人もいる。そして・・・。


「今回は私もお供します。」

「魔王自ら共闘、か。世も末だな。」

「ふん、言ってて下さいな。」


 態とらしく茶化すと、顔を膨らませてソッポを向く。仮にも魔王の大任を拝している存在だ、この姿は実に新鮮である。


「それよりも、魔大陸の方は良いのか?」

「姉と妹が取り仕切っています。それに近々、妹はオルドラ様の元に向かわれますので。」

「・・・義父との再会、だな。」


 出発準備が完了したので、音を立てずに商業都市を出て行く。今回の旅路は、何時もとは全く異なる感じとなるだろう。


 荷馬車に揺られ、商業都市リューヴィスから離れて行く。その際、同都市の壁門の上部に小さく明かりが灯った。それが小さく揺れている。


(この灯かりですが、お子様方のご厚意ですよ。)

(ミスターTさんが出発したのを知られて、感謝の合図との事です。)

(大人の方々はあのままでしたが、お子様方は貴方を気にしていらっしゃいました。)

(・・・そうか。)


 妹達から念話が入る。この灯かりは、リューヴィスの幼子達によるものだった。その厚意を知ると、自然と涙が溢れてくる。見てくれている者はいる・・・本当に感謝に堪えない。


(お子様方の思いを胸に、今は突き進みましょう。)

(・・・そうだな。)


 ソッと俺の両手を自分の両手で握り締める彼女。念話は個々の内情を全て窺い知れるため、こちらが涙している事を感じ貰い泣きをしてくれていた。


 夜間により周辺への注目もあるためか、灯かりは1つだけ。しかし、俺達が去って行く間、ずっと小さな明かりは左右に揺れてくれている。その厚意の灯かりを、荷馬車の中から見つめ続けた・・・。


    第11話・2へ続く。

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