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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第10話 守るべきもの1(通常版)

 商業都市リューヴィスへ移動。乙女の花園と表される事に、多少なりとも浮き足立つが、その本当の姿を知って愕然とした。そこは、野郎共に虐待を受けた女性達が行き着く、最後の砦そのものだった。


 地球ではトラガンの女性陣、同じ様な虐待を受けた彼女達が集まり、女性達だけの組織を作り上げていた。それ以上に酷い様相である。ファンタジー要素が罷り通るからといっても、ここまで酷いのかと我が目を疑った。


 同時に、野郎に対して痛烈なまでの怒りを覚える・・・。同性として本当に恥かしい限りとしか言い様がない・・・。


 俺にできる事は、現状での最善の策を行う事だった。ヘシュナ直伝の回復治癒能力を駆使して、傷付いた女性陣を全員治療して回った。偽善者だと思われてもいい、何もしないでいるよりは遥かにマシである。


 トラガンの女性陣を見ても思ったが、この異世界でも守るべきものができたと確信する。何れ故郷に帰る時が来るだろうが、それまでは彼女達を厳守し続けるしかない。それが、俺がここに飛ばされた最大の理由だろう。




 全ての女性を治療してから1週間が経過。絶望の色に支配されていた商業都市だったが、今は希望の色に溢れる都市に至っている。しかし、その絶望の色が濃い時の影響で、街並みは廃街そのものだった。


 そこで、俺達は増援で到来してくれたトラガンの女性陣と共に、リューヴィスの環境美化に徹底して取り組む事にした。地球でも同じ事を行っているため、全く以て違和感はない。寧ろ当たり前の行動の1つと化している。


 全ての面からして、笑顔を取り戻せる事ができれば、俺の役目は完遂できたと思う。


「次は・・・ここからか。」

「了解です、指令を出してきますね。」

「周辺の警戒を行い、その後は討伐クエストを行ってきます。」

「ああ、気を付けてな。」


 リューヴィスの中央、正に中央の交差点に陣取り、四方八方を見渡しつつ様子を見続ける。サラとセラ率いるトラガンチームが率先し、街の美化や身体強化などを行ってくれていた。俺は同場所から街を見入り、何かないか警視を続けていた。


「一番高い建物で2階なのが痛いですよね。しかも、街中の端に近い方にありますし。」

「今いるここに監視塔的なのがあればね。」


 監視塔とは名ばかりで、それは街を見守る大切な役割となる。商業都市自体が言わば、捨て去られた街と言えるほど悲惨であり、抜本的に見直さなければならなかった。今現在で全てを警視するのは難しく、この交差点で陣取るしかないのが実状である。


「まあでも、東西南北の末端や中継点に面々を配置しているから、何かあった場合の対処はし易いのがね。」

「本当にそう思います。」


 交差点より見入る先に、転々と配置されたトラガンの女性陣。合図を送ると問題ないという返答が手信号で帰ってくる。彼女達は街の全ての区画に配置されており、言わば網の目情報網とも言えるだろう。


 ちなみに、妹達は全員リューヴィスの女性陣の修行に携わっている。過去に住んでいた事もあり、恩返しの思いで動いているようだ。トラガンの女性陣とも絶妙な連携を取れており、異世界版トラガンチームとも言えるだろう。


 妹達との初対面時には、その気質がトラガンの女性陣と似ている事を思い浮かべていた。こうした形で類似していると思い知らされたのは実に驚きである。本当に女性は強いわ。



 地上からだが、街中を警視しながら今後を思う。虐待を受けた女性陣が辿り着いた最後の砦たるリューヴィス。当初は商業都市という名を聞き、交易が盛んだと思っていた。しかし、実際には全く違っていた。


 先日までの俺達の行動は除外するとして、問題は今後の横槍だろう。リューヴィス在住の女性陣から伺って分かったのが、ここが別の人物に統括されている事だ。その言動が酷いとも伺っている。となれば、今の様相を見れば必ず横槍が入る。


 しかし、ここまで首を突っ込んだのだ。最後まで彼女達を守り抜くのが警護者たる役目。今後、どんな横槍が入ろうが、必ず撃退してやる。




(うーん、嫌な一手が出そうです。)


 警視を続けながら物思いに耽っていると、念話によりスミエの声が脳裏に響く。その声色からして、予測していた次の行動が出始めると確信する。


(・・・リューヴィスへの横槍以外に、妹達への横槍か。)

(この様子だと、そうなりますね。)

(・・・前者は王城からの侵攻、後者は地位の剥奪でしょうか。)

(大規模な侵攻になるかは不明ですが、今現在の商業都市の様相を良く思っていない愚物がいるのは確かです。それは皆様方で何とかなると思いますが、地位の剥奪が厄介かと。)

(・・・冒険者ギルドのランクの剥奪、天命的な啓示の撤回、これか。)


 本当にこの手の妨害工作は健在だわ・・・。悪いながら思うが、地球でも頻繁に巻き起こっていたのが懐かしいと思える。悪党共は権力を最大限に使い、ありとあらゆる妨害を企てるのが通例だな。


(・・・何処までも救えんカス共め・・・。)

(兄貴・・・いえ・・姉御、今となってはランクなんか要らんですよ。)

(本当ですよ。リューヴィスの女性の方々への行為を見たら、正直王城やら組織やらの称号的なものなど邪魔極まりません。)

(本当の強さとは、声無き声を汲み、その存在を守り通す事。ミスターTさん・・・いえ、ミスTさんが言ってらっしゃった事ではないですか。)


 念話を通して、凄まじいまでの怒りを放つ妹達。身内の怒りも相当なものだが、13人の方が遥かに強い一念である。憎しみが込められていないのが不幸中の幸いだが。


(緊急事の移動手段と、臨時待機場所も作っておきますか?)

(・・・ついにアレを使うのか。)


 ボソッと語るヘシュナの表情が、何時になくニヤケ顔なのが何とも言えない。何時でも使う事ができると準備を整えていたと、雰囲気で語ってくる。それに同調するのが、エリシェとラフィナである。


(私の予測ですが、この大都会周辺は住めなくなる恐れがあると思います。)

(先のカースデビル群が王城から出ましたからね。最悪は、カルーティアスがラスダンになるでしょうし。それを踏まえると、今も何気なく過ごされている方は現状を把握されていません。非常に危険ですよ。)

(マスター、デハラードとシュリーベルも動かした方が良いか?)

(俺の事か・・・そうだな・・・不測の事態を想定した方が良いかもな。)


 彼からマスターと呼ばれて驚いた。どうやら今は、俺はこの呼び名で呼ばれているらしい。妹達だけは普通の言い回しである。その彼が挙げる内容は、リューヴィス以外にシュリーベルとデハラードの移動もするのかというものだ。


(俺は構わないが、他の面々はここらに愛着があるようだからな。それさえ何とかすれば、都市ごと大移動は可能だが。)

(早いうちに手を打った方が良いと思います。ドタバタ移動は大混乱を巻き起こす可能性も出てきますし。)

(そうだな・・・。)


 思い悩むオルドラ。今の彼は相当なカリスマ性を誇っており、デハラード以外にシュリーベルや一部のカルーティアスの面々から絶大な信頼を寄せられているらしい。彼が動いてくれるなら、後はリューヴィスの女性陣だけとなる。


(そう言えば、カルーティアスより北の造船都市は大丈夫でしょうか。)

(向こうは大都会より相当距離があるのと、背後を海に面している。その向こう側が魔王嬢達がいる魔大陸だ。それに、造船都市は大都会に継ぐ軍事力を持っている。そう簡単にやられはしない。)

(そうなると、喫緊の問題は3都市と大都会の住人だけか。)


 何か抗争による大移動を余儀なくされている感じだ。しかし、魔王イザリア達よりも、今は王城の連中の方が遥かに脅威である。ここから離れた方が良いだろう。


(各々方、王城連中に悟られないように移動は可能か?)

(我々、宇宙種族連合を舐めないで下さい。それに、矢面に立って動いているのは、我らが同胞ですよ。特にデュヴィジェ様の一族ですし。)

(あの娘達は何が何でも守り抜きますよ。全てお任せを。)

(説得の方は俺に任せてくれ。それと、先ずはシュリーベルから動いた方がいい。工業都市はそれなりに軍備があるから、先に動くと問題が出てくる。)

(了解した。)


 颯爽と動きだす身内。オルドラ達も含め、今では立派な身内である。今はできる事をし続けるしかない。


 俺達の方は、ギリギリまでリューヴィスで女性陣の修行と、王城側の動向をこちらに向けさせる事にした。プレッシャーを掛ければ、シュリーベルとデハラード、カルーティアスの住人の避難も可能と思われる。となると、相当なプレッシャーが必要だが・・・。


    第10話・2へ続く。

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