第9話 妙技を使う4(キャラ名版)
商業都市リューヴィスに移動し、女性陣の全員の治療を終えて数日が経過。初めてここに訪れた時とは全く異なりだしている。誰もが希望に満ち溢れている表情をしだしたのだ。俺の一方的であり身勝手的な治療行為だったが、それで笑顔になったのには素直に喜ぶべきだな。
しかし地球では、トラガンの女性陣を癒す流れは数年を要していた。今後は心の治療が最大の戦いとなる。それでも、少しは役に立てた事は本当に嬉しい。どんな形であれ、力を良い方に使えた証拠だろう。
そこで、彼女達をメンタル面でも屈強の女傑にするべく、地球からスペシャリスト達を召喚する事にした。先程も挙げた、トラガンの女性陣だ。だが全員を寄越す訳にはいかないため、ここは100人の団員とリーダー格の人物を派遣する事にした。
かなりのお節介焼きになるが、嫌な予感がしてならないので、行き過ぎた行為にはならないだろう。
女性1「おおっ! これが異世界ですか!」
女性2「でも・・・私達が先に来ても良かったので? ミツキさんが物凄く怒ってましたけど。」
ミスT「あー・・・まあ・・・後で何とかする・・・。」
異世界に呼ばれて興奮気味のサラに、自分達だけ先に呼ばれた事を気にするセラ。両者は双子で、今ではトラガンのサブリーダーを務めている。メインリーダーは地球での活動があるので控えて貰った。ちなみに、この双子は生粋のヲタク気質である・・・。
セラ「と・・とりあえず、私達はこちらで皆さん方を修行すれば良いのですね?」
ミスT「ああ、言い方は悪いが、徹底的に強くしてあげてくれ。俺の嫌な予感が当たる前に、相応の実力を得ていたい。」
サラ「確かに・・・この雰囲気は嫌な予感がします。」
ラフィナに匹敵か超えるヲタク気質のサラとセラ。自分達が呼ばれた事と、リューヴィスの様相を踏まえ、今後何が起こるかを推測しだしている。ファンタジー世界観を愛するが故の、先見性ある目線だろう。
ミスT「それと、ここより北西にダンジョンがあるらしい。お前さん達でチーム分けをして、修行の場としてみてくれ。」
サラ「了解です。では私はダンジョン側の修行監督をしますね。」
セラ「となると、私はここでの修行監督でしょうか。チーム編成は必要でしょうね。」
パパッと役割分担を開始する双子。以前は初心者的な感じだったが、今では一端のリーダーそのものである。まあ、ミツキ達に相当扱かれたのもあるのだがな・・・。
早速行動を開始するサラとセラ。サラはトラガンチームの中で戦闘向きの50人を編成し、リューヴィスの女性陣で戦いに優れている人物を抜擢していく。セラは同チーム内で支援向きの50人を編成、同じくリューヴィス女性陣で補佐に優れている人物を抜擢していった。
とにかく、非戦闘員以外全員を抜擢し、戦闘力の強化に当たる。身体の治療をしてからの連続的な行動になるが、今は非常に時間が惜しい。今後を見据えると、今修行をせねば間に合わなくなる恐れが出てくる。
ちなみに、妹達と3人はリューヴィスの周辺警戒を任せた。都市中央に鎮座し、周辺を監視する役はミツキTに一任した。監視とは女性陣ではなく、商業都市外の事である。彼女は自身に用いている機械兵士の筐体の関係上、生体レーダーのスペシャリストだからだ。
常に先を見据えての行動を取る。身内が心懸けている信念と執念の1つである。俺自身もその生き様には心から同調する。だからこその、この強行軍的な修行だ。今は何振り構っていられない。
商業都市リューヴィスに来てから約1ヶ月、実にハイペースで時が過ぎて行った。異世界惑星に召喚されてから、丁度3ヶ月目ぐらいか。早いものだわ・・・。
サラとセラを筆頭に、トラガンチームの修行作戦は功を奏しだした。リューヴィス在住の女性陣の殆どが、一騎当千に近い女傑へと化けていったのだ。トラガンチームの教え方もあるとは思うが、リューヴィス女性陣の基本戦闘力が高かった証拠だろう。
推測だが・・・彼女達を追い遣った連中は、その強さをヤッカミ、数々の虐待を行ったのかも知れない。まあ仮に事実だったとしても、今となっては過去の話と定め、今は前を向いて突き進むのみだ。彼女達の今後を、より良いものにできればそれでいい。
ミスT(そちらの様相はどんな感じだ?)
ルビナ(シュリーベルは問題ありません。大都会からの毒気が抜かれた様相になったので、独立の街へと至った流れです。)
デュヴィジェ(デハラードは凄いですよ。オルドラ様がお住いの方々を叱咤し、独自に軍団を立ち上げ強化されています。リューヴィスの様相をお聞きして、奮起されたようです。)
ミスT(やりおるわ・・・。)
ルビナ達とデュヴィジェ達が到来してからは、シュリーベルとデハラードの強化も行った。リューヴィスより距離が近いため、要らぬ横槍が入った際の対策である。特に冒険者ギルドなどの組織的な部分は、完全独立式に切り替えた。
ミスT(カルーティアスの様相は?)
ヘシュナ(至って普通ですね。シュリーベルとデハラード、そしてリューヴィスへの情報を調整していますので。悪い言い方では捏造な感じですよ。)
ミスT(捏造ねぇ・・・。)
そう、今は3街の情報を調整していた。カルーティアスからは、3街は至って普通の様相であると徹底している。旅人達にも可能な限り徹底させていた。
エリシェ(目に見える変革は、絶対に曝さないようにしないといけませんからね。)
ラフィナ(特に王城へは、普通の街や都市であると誤認させる必要がありますし。)
ミスT(恐ろしいわな・・・。)
この戦略の提案者は2人によるものだ。地球でも大企業連合の総帥と副総帥を担う存在だ。こうした情報操作などはお手の物である。当然、本来は良い方の行動がメインとなるが。
ミスT(ばあさまの方は?)
スミエ(至って普通、大人しいものですよ。愚物共は何処かに姿を隠していますし。)
ミスT(小心者共だわな。)
王城に潜入捜査中のスミエは、実につまらなそうな雰囲気で語る。大都市事変の後、大きな出来事は起きていない。偽勇者共は雲隠れをしており、王城にすら姿を現さないとの事だ。
スミエ(しかし、国王や側近が良からぬ事を企んでいるのは間違いありません。)
シルフィア(師匠の前では、如何なる隠し事も通用しませんからね。)
スミエ(フフッ、そうですね。)
不気味に微笑む様子に、小さく笑う面々。最初の頃は戦々恐々な感じだったが、今では彼女の言動が静のミツキ的な感じに思えるようである。ちなみに、動は本家たるミツキ以外にない。
ミツキ(わたの出番はまだわぅか?)
ナツミA(完全に奥の手だから、今は我慢するしかないわね。)
ミスT(お前さん達は、実働部隊そのものだからの。次に予測されるデカい事変の際は、必ず投入する事になると思う。)
シルフィア(パワーバランスを保たないといけないからねぇ。リアルな世界なのに、ファンタジーな感じなのが何とも言えないわ。)
ナツミA(ノンフィクションなのに、フィクションの流れそのものですからね。)
本当にそう思う。この異世界惑星の様相は、正にフィクションそのものである。しかし、実際にはノンフィクションなのだ。全ての要因が実在するのだから。
ミツキ(それでも、リューヴィスの方々を支えられたのは良かったですよ。)
ミスT(ああ・・・偽善者的な感じだったがね・・・。)
悪いとは思うが、今でも本当に正しい行為だったのかと自問自答している。リューヴィスの女性陣の怪我や傷の治療はまだしも、女性の本来あるべき姿まで治療したのだ。この部分にどうしても罪悪感を感じずにはいられない。
エリシェ(自己嫌悪するのも分かりますが、実際に虐待を受けたのも確かです。それに、内面的な記憶は残るものの、外面的な記憶は全て消え去っています。生きるという事は、それら苦痛をも糧として進まねばなりませんし。)
ラフィナ(皆様方の笑顔を見れば、その厚意が正しかったのは間違いありません。本題は、今後をどうするかですよ。特にそちらの世界観は、非常に殺伐としています。何時同じ事が発生するとも限りません。だからこそ、力を付けようと動かれたのですから。)
ミスT(そうか・・・。)
エリシェとラフィナが擁護してくれるが、それでも罪悪感が残る。
もしあの厚意を行ったのが、生粋の女性であれば良かったのだろう。だが、実際には虐待を行った野郎と同じ性別の俺である。特に今は女性へと姿を変えている状態だ。偽善者であると言われても否定できない。
セラ(あの・・・もしそのお考えのままだと、私達を支えてくれた事すらも否定する事に。)
サラ(そうですよ。先輩方に笑顔が戻ったのは確かでしたし。私達はマスターが潜入捜査をされた後の入隊でしたが、皆さん同じ様に貴方に感謝しています。)
セラ(まあでも、今でも皆さんは貴方を怖がっていますけどね。私達は違いますが。)
今度はサラとセラも擁護してくれる。2人はトラガン出身なので、双子の先輩達の癒された様相を知っていた。入隊こそ後期だったが、俺が行った事は全て知っている。
ミツキ(お2人とも、マスターが好きですからねぇ~。)
ナツミA(そうねぇ。よくマスターの話をしてきますし。)
シルフィア(君も罪な男よねぇ・・・。)
場を破壊する茶化しが入れられる。それに顔を赤くする双子の様子が感じられた。俺としては娘の様な間柄なのだが。それでも、俺への好意は素直に感謝したい。
テューシャ(・・・エリシェ様やラフィナ様、マスターのこの自己嫌悪は何時もなのですか?)
エリシェ(んー、何時もですねぇ。何かあると、こうして自身を追い詰める事をしだしますし。)
ラフィナ(ちなみに、このぐらいでボヤくぐらいでは、まだまだ甘いですよ。)
テューシャ(そ・・そうですか・・・。)
殺気を放ちつつ語るテューシャだったが、エリシェとラフィナに戒められて大人しくなる。この所、彼女からは特に戒めの一撃が飛んでくる。それに感化されて、エメリナとフューリスからも同様の一撃が放たれもする。まあ淵源は俺にあるので、全て受けるしかないが・・・。
デュヴィジェ(本当に小父様は優しいですよね。何処までも相手を思い遣って行動をされる。力があるなら、自身を追い込んででも使わずにはいられない。)
ミュティナ(お兄様らしいです。)
ミスT(はぁ・・・。)
自分で自分を追い込み傷付ける、それが自己嫌悪の一件となる事が多い。その度にエリシェやラフィナに相談を持ち掛けたり、彼女達から戒めの一撃が飛んできたりとする。それでも、この生き方が俺自身なのは間違いない。
シルフィア(そうね、損だろうが何だろうが、君が決めた生き様だからね。悩んでも行動をする姿勢だけは、昔から全く変わらないし。)
ミツキT(私の逝去後からですよね、その生き方になったのは。)
ヘシュナ(でしたね。マスターの記憶を遡って窺えたのと、黒いモヤ事変後に見た映像で分かったのとありますし。)
ミスT(・・・あの思いだけは、もう誰にもさせたくないのが本音だ。今はミツキTさんが精神体で戻って来てくれているが、当時決意した一念は今も全く変わらない。)
この絶対不動の原点回帰は、ヘシュナが俺の記憶を読んだ事が淵源となる。それが切っ掛けとなり、黒いモヤ事変前にミツキTが舞い戻ったのだから。本当に不思議な縁である。
シルフィア(ならば、今後も大いに悩みながら突き進みなさい。それが君の生き様なら、後は貪欲なまでに貫いてこそよ。無様な姿は望まないわ、分かった?)
ミスT(ああ、委細承知。)
気迫の篭った一撃を放ってくれるシルフィア。それに心から感謝したい。彼女には何度となく支えて貰っている、今も正にそうだろう。周りあっての俺なのだから・・・。
本当に感謝に堪えない。こうして不安な一念が出れば、即座に戒めてくれる身内達。彼らの存在がなければ、下手をしたら間違った道に進みかねない。ミツキが名言、持ちつ持たれつ投げ飛ばす、正にこれである。
特に、トラガンの潜入捜査を発端とした、女性への性転換状態。これにより、野郎の俺では分からなかった女性の側面を理解できるようになった。それでも、本家の女性陣には絶対に敵わないが・・・。
人は1人では生きて行けない、それを改めて痛感させられたわ・・・。
第10話へ続く。




