第12話 罪滅ぼしの戦い12 旅路の振り返り11(通常版)
「私も可能な限り補佐致します。これは貴方達だけの問題ではありません。私は不治の病にて冬眠状態でした。その分の罪滅ぼしがありますので。」
「死して汚名を残すよりも、生きて汚名を返上する、だな。」
「フフッ、貴方の生き様がそう教えてくれたのですよ。」
「そうですか・・・。」
徐に俺の近くに歩み寄り、その場で貴族的な女性の一礼をするイザベラ。ドレスを着用していれば冴え渡る仕草だろうが、今の彼女はスーツに近い出で立ちである。それでも、その優雅な一礼は並大抵の力量では繰り出せない。
イザベラが繰り出した一礼。そこに込められた一念は、間違いなくここにいる誰よりも深く広い。流石にティルネア達には遠く及ばないが、それでもトップクラスの実力を持つ存在だ。そして、異世界惑星の調停者の1人でもある。そんな彼女達に影響を与えたのが俺だと挙げてきた。
この場合だと小さく反論するなら、それはミツキ流の生き様と言っていい。俺自身は彼女からも多大な影響を受けている。敬い・労い・慈しみの精神、持ちつ持たれつ投げ飛ばす、これ以外にも挙げればキリがないほどある。
俺1人では絶対に成し遂げられなかったのが今までの各事変だ。特にベイヌディートから異世界惑星への年月の全ては、俺だけでは絶対に無理である。その中で誰が一番かという部分は無粋になるので伏せるが、とにかく俺だけでは無理であると言う事だけは挙げておく。
「・・・これも自己嫌悪の1つですかね。」
「いえ、振り返りのストーリーテラーかと。」
「酷い時はもっと酷いですからね。」
「はぁ・・・。」
そんな俺の内情を察知し、呆れ顔で見つめてくる面々。特にミツキT・エリシェ・ラフィナの3人が呆れ顔で呟いている。その彼女達に俺の方は溜め息を付くしかなかった。
ただ、今となっては彼女達には本当にお世話になりっ放しである。俺が停滞するような考えを抱こうとした時は、必ず助け船を出してくれていた。お互いに愚痴り合い、打開策を考案して突破する。その繰り返しが今になる。
先のミツキ流の生き様、持ちつ持たれつ投げ飛ばす、正にこれになる。それを殆ど無意識的に行ってしまうのだから、何ともまあと言うしかない。
その後だが、魔物頭と公爵共を阻止と言う名の抹殺を行い、人為的に魔力の暴走という状態に陥る魔術師も抹殺する。と言うか、魔術師の暴走前に人知を超えた様相を目撃した。
連中が奥の手として繰り出した、宇宙船3隻と大宇宙船1隻、そして落下兵器と化した機械の塔。これらは全て魔術師の膨大な魔力により、その稼動を漕ぎ付けていると挙げてきた。つまり、奴を抹殺すれば、その場で魔力を失った巨大兵装が地上へと落下する事になる。
某巨大ロボットの戦争群では、地球にスペースコロニーを落下させた描写が何度もある。敵対者の奥の手としてのもので、最早為す術がない最大最強の一撃だ。1作品だけ、超常的な力量で落下を防いだ流れもあったが。
それらと同じ事になるのだと、不気味なまでにニヤケ顔で語る魔術師。凡人からすれば、それだけで尻込みするのは言うまでもない。だが、そこは宇宙種族組の力量か、それを覆す手法を放ち出した。予め異世界惑星外に待機させていた、宇宙母船を繰り出したのだ。
これに関してだが、ミツキとミュセナが裏の密約的に実行していたプランの1つだった。しかも、ミュセナが登場する前に既に実行していたのである。先見性のある目と言うか、その先を見越した手腕には脱帽するしかない。
そもそも、宇宙母船自体が異世界惑星の一部分を覆い尽くす規模。愚物連中が繰り出してきた巨大兵装群を全て併せても、宇宙母船には遠く及ばない質量規模である。そして、彼らが十八番となる反重力機構を駆使し、相手の巨大兵装群を成層圏へと持ち上げて連れ去って行くのである。
この時、一部始終を目撃していた将軍ことギースが、自身の生き方を改めなければと呟いていたのが印象深い。カースデビルことカールも同様だった。極悪を前にすれば、小悪党は善道に帰す、であろうな。
同時に、人知を超えた様相を目の当たりにし、魔術師の奥の手たる人為的魔力暴走の流れに至ったのである。その考えは分からなくはない。一矢報いると言う感じである。
あれだけの巨大兵装群や各種空中兵装を稼動させる魔力となれば、その暴走はとてつもない規模になるだろう。下手をしたら異世界惑星のコアにまで悪影響を及ぼしかねない。異世界組はその様相を見て、相当戦慄が走ったようだ。
だが、膨大な魔力を持とうが、所詮は異世界惑星内の論法に過ぎない。そもそも、魔術師自体が生命体の枠から踏み出る事はない。それができるのは、5大宇宙種族の面々だけだ。
そう、最後の一手となったのはヘシュナが放った精神束縛の力量だ。相手が生命体であれば確実に効果を発揮する特効薬とも言える。それを喰らった魔術師は、為す術なく動けず仕舞いに陥った。見ていて清々しい気分になるも、超チート性能であると思わざろう得なかったが。
そして、魔術師への粛清と言う名の抹殺である。俺達警護者サイド全てが、懐刀と言える拳銃を駆使してのものだ。この時になれば、最早相手を生かそうという意味合いはない。阻止せねば、こちらがやられるだけなのだから。
連中を屠った後、総意の遣る瀬無い一念が胸中に飛来した。結局はここに行き着くのか、というものだ。だが、阻止せねば全ての生命体に悪影響を及ぼすのもまた事実である。これは5大宇宙種族の面々が一番理解している概念である。
警護者の生き様とは、こうした愚物を抹殺する事の繰り返し。それが警護者の真髄である。それが嫌なら、初めから警護者の道に至らない方がいい。実に話が早い極論でもある。
「・・・我々が成すべきは、世上の安穏を守り続ける事、と。」
「・・・そうだな。」
ふと語られたのは、総括的な意味合いの一言だった。しかも、それを語ったのは将軍ことギースである。彼の目を見ると、今までに見た事がないぐらいに澄み切っていた。同時に、過去に愚行を演じた自身を恥じる一念も感じ取れる。
だが、その苦節を糧として生きる事を決めたのだろう。故に澄み切った目を抱くに至ったと思えてならない。それにこれは彼だけではない。
今となっては彼の盟友の域に至ったカースデビルことカール。そして、彼らに付き従う面々全てである。当時の悪心は全くなく、善心に満ち溢れているのが感じ取れた。それだけ、彼らの変革が目覚ましいという現れである。
「貴方達が貫き通している生き様が、今になって心から痛感しています。それに、最後まで私達を信用してくれた事、本当に感謝に堪えません。」
「そう言ってくれると嬉しいよ。俺達の生き様が間違っていないと思えるわ。」
数時間前の生き様とは雲泥の差となったカール。語られた内容が、悪党当時の様相とは全く異なるものになる。生命体は、何処でどう転がるか分からない、それを体現してくれている感じだ。
まあ決め手となるのは、彼らが女性を大切にしていた部分、これになる。もしこの一念がなかったら、偽勇者共の様な完全なる愚物へと堕ちて行ったのは言うまでもない。先の言い回しになるが、生命体は何処でどう転がるか分からない、これだわな。
第12話・13へ続く。
当初の流れだと、ギースさんやカールさんにジークさん達は抹殺対称になっていました。しかし、彼らと対峙した際に“女性に対して極度の悪態を付かなかった”事が決め手となり、中立から善道へと帰した訳です。まあそれ以外の愚物がどうしようもない輩だったのが、この3人とその仲間達をマイナスからプラスに転じさせた感じでしたが。自分でも予想外の展開だったので驚いていましたね(-∞-)
何にせよ、彼らは後の創生者で重要なポジションとして登場させる予定なので、この不意の善道回帰は理に適ったものだったのかも知れません。生命体の生き様は、何処でどう転がるか分かりませんね><;




