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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第5部 迎撃戦と反転攻勢
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第11話 創生者と記憶の甦り9 最後の敵(通常版)

 不意に拍手が鳴り響く。一同してそちらを窺うと、そこには雲隠れしていた宰相がいた。セレテメス事変で暗躍していた相手である。何を今更といった感じの登場だったが、その真意を察知した俺達8人は拳銃を相手に向ける。


「・・・素晴らしい、実に素晴らしい・・・。この惑星をここまで進化させるとは・・・。」


 相手が発したその言葉に、総意は全く以て意味が分からないと言った感じになる。しかし、俺達8人はそれを即座に感じ取る。デュヴィジェとヘシュナの力量の波動が、皮肉にも宰相にも伝わったと言えるのだろう。つまりは、“前世”の記憶の復活である。


「・・・“真の黒いモヤ様”すらも転生していたとはな。」

「・・・はぁ、最早何でもござれな感じですよね。」


 俺の言葉に、黒いモヤ事変で共闘した面々は全てを理解したようである。特に宇宙種族組の面々が顕著だ。異世界惑星では何でも起こり得る、と言う部分がそうさせてしまう、とな。実際にティルフィアの存在が顕著でもある。


「実に皮肉だな。善悪に分かれてもなお、同じ場に転生すると言うのは。」

「これは断ち切れる宿命と言うものだ、我が分身よ。」

「ハッ、虫唾が走る。」


 相手がかつての自身の半身という事からか、凄まじい怒りと憎しみを抱くティルフィア。


 黒いモヤ事変では、善悪に分かれる事により同事変を終息へと導いた。悪心の真の黒いモヤは消滅し、影響を受けた善心の白いモヤことティルフィアも息を引き取った。


 その彼女は、1億光年先の元異世界ベイヌディートへと転生した。そして、イザベラ達と共にこの惑星を見守り続けたのである。色々と食い違いな部分もあったりするが、それでも異世界惑星自体の本質は全く変わらない。


 俺としては、ティルフィアの転生には驚きと同時に感激もした。あの時、共闘しつつも逝去した彼女と再会できた事にである。だが、“どうでもいい存在”すらも転生していた事には、何と言うか呆れる以外にない。


「・・・それで、完全決着を着けるために現れた、と。」

「人間如きが大きく出たな。貴様など足元にも及ばない力が我にはあるのだ。それに、半身たる“白いモヤ”もいる。我らには未来永劫、勝つ事はない。」

「・・・“これだから男は”・・・。」


 元真の黒いモヤの言動に、総意は痛烈なまでの怒りを覚えるのを感じ取れる。真の黒いモヤ自体が諸悪の根源であり、俺達総意の最大最後の敵であるのは言うまでもない。


 そして、それは元白いモヤのティルフィアもそうだと挙げてきた。その発言を伺い、彼女はシルフィアが十八番の名言を吐き捨てるように語る。それを伺った俺達は、ツボにヒットしてしまったからか、自然と爆笑してしまう。


「・・・一同して気でも触れたか・・・。」

「ハハッ、悪い悪い。不二の盟友たるティルフィアさんが、同じ不二の盟友のシルフィアさんの名言を挙げたものでね。愚物には良く似合うと思ってさ。」

「本当よねぇ~。」


 俺は無論、シルフィアも同様の一念を抱いているようだ。ティルフィアの思いを汲む、と。彼女の気質からして、真の黒いモヤとは完全決別を断言している。断言と言うか、完全に拒絶していると言えるだろう。


 それに、淵源を踏まえれば、どちらが善で、どちらが悪か、ここに至ってくる。己の存在が生命体総意の害悪になるのを危惧して、自らの完全消滅を願っていたのが白いモヤだ。そんな彼女と対比するのが、全ての完全消滅を実行していた真の黒いモヤである。


 これはもう、絶対に相容れぬ存在であると言い切れる。過去にお互いが同じ存在であったとしても、だ。となれば、どちらを支え抜くかなど、火を見るより明らかである。


「まあ何だ、完全決着を着けようか。幸いにも、“不殺の精神”は解放されている。貴様なんぞ、造作もなく屠れるわな。」

「ハッ、人間なんぞ・・・。」


 そう言い掛けた宰相に、傍らのヘシュナの十八番たる精神束縛力が炸裂する。相手が生命体である限り、絶対無比なまでに効果が発揮されるものだ。特に宰相こと元真の黒いモヤは、言わば生粋の精神体だ。確実に効果が現れるのは言うまでもない。


「なっ・・・何だと・・・。」

「あらぁ~? おかしいですねぇ~。アレだけビックマウスをほざく愚物が、こうも簡単に大人しくなるとはぁ~。」

「本当にそう思います。そうだ、お姉様、私も少しお力添えを致しますね。」


 ヘシュナの精神束縛力により動けない宰相に対し、更に同じ精神束縛力を放つナセリス。これも先のデュヴィジェの記憶の甦りの影響が出たようで、他の宇宙種族の力量を簡単に模写する事ができるようになっていた。殆ど力量が変わらないその一撃を受けて、完全に動けなくなる宰相である。何と言うか・・・見事としか言い様がない。


 それでも、そこに込められている一念だけは痛烈に感じ取れた。過去に対峙した存在への、完全決着を着けるという意気込みだ。それに、今の俺達は“不殺の精神”が解放されている。完全悪や絶対悪な相手なら、問答無用で屠る事をするようになったのだから。


「・・・あの黒いモヤ事変の時、貴様の様な愚物は完全駆逐をすべきだった。貴様の気質が異世界惑星へと浸透し、偽勇者共などが生まれたのだと確信が持てる。」

「・・・そうですね。生命体は些細な力量で善にも悪にも化けてしまいます。これは長年見続けて来たため、最早確信論だと明言しておきますよ。」

「はぁ・・・“お姉様”が苦労して戦ってきたのを、貴様の様な愚物が全て破壊しようとするのだからな。恥を知れと思いますわ。」


 ヘシュナとナセリスによる超絶的な力量を喰らい、動くに動けない宰相こと真の黒いモヤ。その相手を一瞥し、全ての物事の格言的な内容を語るティルネア。長年創生者を担ってきただけあり、その言葉には非常に重みが含まれている。


 そんな彼女を姉と語るティルフィア。実際に結縁はないのだが、理の次元からすれば姉妹と言えるだろう。まあそのティルネアすらも、彼女達の女王たるデュヴィジェには及ばないと言えるのだが・・・。


「さて・・・本来なら、もう少し活躍させるべきだろう。だが、諸々の流れからして非常に邪魔な存在なんでね。とっとと完全消滅して貰うとするわ。」

「私もお付き合い致します。貴方様の生命に再度触れる事で、創生者としての責務を全うすべきだと決意できましたから。」

「そう言う事だ、とっとと消えちまいな。」

「・・・レスト・イン・ピース、永遠に・・・。」


 徐に右手を宰相に向ける。同時にティルネアとティルフィア、更にはミツキTや他の宇宙種族組も右手を向けだす。自身が持つ力量を表に放つ事を、今し方閃いた俺達。それを目の前の最後の敵に放った。俺はペンダント効果をフル発揮し、他の面々は自前の力量となる。


 この場合は、先の黒いモヤ事変と同様の流れを作らねばならない。殺気と闘気の心当ての応用を駆使し、それを自身の生命力と掛け合わせる。幸いにも、当時は天の川銀河に匹敵する規模だったが、今は人型程度の規模でしかない。


 そもそも、相手は形無き精神体。前世は規模の問題で完全消滅を繰り出していた。それが人型の存在になった事、転生した事で本来の力を完全に失っていた。実に皮肉だと言うしかない。対するティルフィアは全く異なる。


 ここに関しては、一介の人間たる俺には理解不能な次元だが、実際にティルフィアの存在が全てを物語る。ミツキTやティルネアも同様で、精神体で自我を維持している自体奇跡としか言い様がない。まあそれを言えば、目の前の消滅させる存在たる宰相も同様なのだが。


 放たれた複数の究極とも言える生命波動。それを喰らい、断末魔を挙げる事なく完全消滅する宰相こと真の黒いモヤ。それだけ、その程度の存在でしかなかった。それを目の当たりにして、流石に俺も拍子抜けしてしまう。これは今し方、俺と同じ力量を放った面々も同様の思いを抱いている。


 何と言うか、最後の最大最強の敵を簡単に瞬殺できた事に、変な虚しさを感じずにはいられないわ・・・。


    第11話・10へ続く。

 最後の敵ですが、残っていたのに気付いて慌てて追加した感じでした@@; ただ、ラスボスの存在は確定的だったため、それを転生という形で帰結した感じです><; 何にせよ、ここまで超絶的に成長を遂げた一同にとっては、過去の最大最強の敵ですら話にならないという流れですね(-∞-)


 何にせよ、大事なのは異世界惑星の世直し。今回の流れは、そこに対しての通過点にしか過ぎません。殺風景的に消え去ったラスボスですが、これはこれで良いのかも知れませんね><;

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