表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
54/687

第7話 愚者の考え4(通常版)

 物思いに耽っていると、歩み寄ってくる人物達がいた。意識を戻し、そちらを窺う。今度も懐かしい人物達がいるではないか。3度目の飛来者は、正に“警護者”そのものであった。


「あら、ウインド様とダークH様ではないですか。」

「お久し振りです、ミツキT様。」

「マスターもお変わりなく。」


 エリシェとラフィナ、そしてスミエの飛来は窺っていた。その後の飛来は当面はないだろうと踏んでいたが、それを覆す事となった。今度の飛来者は、警察庁長官のウインドとダークHの2人である。


 俺達への挨拶後、妹達を見つめ、その場で敬礼をする2人。現役の警察官故の、相手に敬意を示す行動である。地球でも同じ事を繰り返していた。


「身内が良く許したな・・・。」

「ミツキ様のご依頼でした。今度は規律の達人を飛ばすべきだと豪語されてまして。」

「警察庁の方は、ヘシュア様方が担ってくれています。当面はこちらを最優先すべきだと、半ば追い出された感じでしたが。」

「追い出された、ねぇ・・・。」


 敬礼後は休めの姿勢で立ち続ける2人。職業柄、座る事は非常に希である。警察庁長官という大任を拝しながら、部下達と最前線で戦う闘士でもあるのだ。


「あの・・・こちらのお2人とは、どういった関係で?」

「一応、俺の戦術指南役なんだがね。師匠でもある。」

「ご冗談を。私達は基礎をお教えしたぐらいです。以後の技術力発展は、全て実戦経験によるものですよ。」

「警護者の戦いで培った技術の方が、遥かに凄い経験だと思います。」


 俺の師匠だと聞いて、瞳を輝かせる妹達。しかし、2人が言う通り、彼女達からは戦術指南のみしか受けておらず、それ以上は独学で今の戦術を体得するに至っている。2人の場合は、盟友達と言うべきだろうな。


「デュヴィジェ様からの指令です。今後、お嬢様方に横槍が増えると推測されるため、身辺警護に回るようにとの事です。」

「マスターとミツキT様は今まで通りの遊撃を担当して下さい。私達はお嬢様方を守る側に回ります。」

「デュヴィジェさんの指令となると、何らかの流れを掴んだ感じだな。」


 改めて、ここに来た内容を語るウインドとダークH。デュヴィジェの先見性ある目線は、5大宇宙種族の中で最強とも言えるものだ。彼女からの指令とあれば、その予感は十中八九当たるという事である。


「ばあさまは王城に潜入できたのか?」

「はい、私達がここへ来る前に行動を開始されました。」

「すんなり潜入できて、拍子抜けだとボヤかれていましたけど。」

「あのばあさまがボヤくとなると・・・相手の実力もたかが知れているわ。」


 一服を終えて溜め息を付いた。相当な戦力を有し、姑息な行動をすると踏んでいた王城側。しかし、デュヴィジェに負けず劣らずの先見性の目線があるスミエが愚痴ったのだ。相手の実力は低いという証拠である。


「これで、デハラードとカルーティアスは何とかなるか。残りの憂いとすれば、最初の街のシュリーベルだな。」

「現地はヘシュナ様とナセリス様が向かわれるそうです。“後方の憂い”は全て断つと豪語されていましたので。」

「後方の憂い、ねぇ・・・。」


 彼女の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。5大宇宙種族の根幹とする戦術や戦略では、後方の憂いを断つと言う場合は、“ありとあらゆる力”を駆使してでも守り切るという事になる。俺達側に一切の不安を抱かせないという、それはもう尋常ではないレベルでだ。


「はぁ・・・ついに恐怖の暴君を出す訳か・・・。」

「フフッ、あの時もそうでしたからね。しかし、確実に守ってくれますよ。」

「ハハッ、そうだな。」


 とにかく笑うしかない。今後の展開が、手に取るように見えてしまったからだ。


 ギガンテス一族・ドラゴンハート一族・カルダオス一族・ガードラント一族・デュネセア一族の5大宇宙種族。彼らは己が持つ技術力、これを使う事を躊躇する傾向がある。しかし、ヘシュナとナセリス、そして裏方のデュヴィジェ。この3人は、自前の力を使う事に際して、一切の躊躇がない。


 特にヘシュナは先の事変の1つで、態と敵役を演じていた事がある。己を押し殺し、敵側に信用させて内部から崩壊させたのだ。ただ、その時は悪心が発生していたため、各種力を使う事はできなかった。それでも、自身の超人的な戦闘力は遺憾なく発揮できていたが。


 今度の2人は善心に満ち溢れている。各種力を最大限発揮できるため、その様相はもはや破壊神レベルであろうか。そこに、己の力を使う事に躊躇がないときた。


 後方の憂いを全て断つと言い切った2人は、確実にその大役を完遂し切ってくれる。


「何だか・・・私達の出番がなくなっていくような・・・。」

「何を仰る。お前さん達が切り札になるのよ。お前さん達を最大限活躍できるように、俺達が良い意味でも悪い意味でも暗躍しているに過ぎない。」

「アッハッハッ! 暗躍っすか!」

「物凄く響きが良いですわ!」


 俺の言葉に爆笑する妹達。確かに今の俺達地球サイドは、暗躍組とも言い切れる。真の巨悪すらも青褪めるような、先の先を見据えての行動を展開している。戦いすらも起こさせない、静かなる暗躍であろうか。


「無益な殺生をしないためには、圧倒的な流れで完全屈服をさせるに限りますからね。」

「小さな戦いは仕方がないとは思いますが、大きな戦いはしないに限りますよ。」

「何時の時代の争い事も、結局泣くのは女性と子供だけだ。その殆どの当事者は野郎と、同じ同性として恥かしいわな。」


 吐き捨てるようにボヤく。これは身内にも同じ事を語っている。数多くの戦乱の当事者、その大多数は野郎が引き起こしている。女性が発端となるのは非常に希だ。


「今を生きる人物に憎まれてもいい。後の世代が安穏に過ごせるようになるなら、俺は鬼にでも悪魔にでもなってやるわ。」

「フフッ、相変わらずの啖呵ですね。そのお心に、最大限ご助力致しますよ。」

「同じく。警察官であり、警護者でもある手前、悪の概念は絶対に許しません。」

「人を憎まず、誤った思想や価値観を憎め、ですからね。烏滸がましい部分はあるものの、全ては後の世のためですから。」

「ああ、本当にそう思うわ。」


 会話の最中に、ミツキTが注いでくれた紅茶。小さく頭を下げて、それを啜る。


 本当に烏滸がましい限りだろう。個々人の一念や価値観は、限りなく尊重されるべきだ。その様相を判断し見極めるとか、烏滸がましいにも程がある。しかし、時と場合によっては、それらが争い事の火種になりかねない。


 ならば、総意の思いを胸に汲み、誤った思想や価値観を正していく。それが警護者の役目である。結成時から、その一念を胸に刻み、貪欲なまでに突き進んできた。


 まあ、最後は己自身の一念と生き様に帰結してくる。誰彼がどうこうじゃない、自分自身がどうあるべきか、それが重要なのだ、とな。


「憎まれ役は全て任せてくれ。お前さん達は、この戦乱を終息させるための勇者達だ。最大限の力を使って、お前さん達を厳守し続ける。」

「死守する、じゃない所がミソですよね。」

「死守の言葉は好きじゃない。死んでは守るものも守れないしな。厳守、厳しく守る、こちらの方が俺には性分に合う。」

「小父様らしいです。」


 小さく笑う彼女に、周りの妹達も笑顔になる。彼女達の使命は、この戦乱を終息させるための勇者達に他ならない。それはもう、啓示などの特質的な行為が元ではない、彼女達の生命自体が淵源なのだ。この瞬間に集い合うために生まれ出た闘士達である。


「貴方達に出逢えたこの瞬間に、心から感謝している。俺の生き様も、無駄ではなかったと確信が持てるからな。」

「頑張らねば張り合いがありませんからね。」

「ですです。」


 ソッと右手を前に突き出す。そこにウインドとダークHが右手を重ねる。ミツキTの右手がが続き、妹達の右手も続いていった。そして、最後に自分の左手で16人の右手を包み込む。


 俺が自然と繰り出した厚意に、涙を流している妹達。しかし、その表情は、今までにない程に輝いていた。出逢った頃の幼さなど、微塵も感じさせない力強さである。彼女達なら、どんな苦難が舞い降りようが、必ず打破できるわな。


 そして、声には出さなかったが、念話を通して遠方の全員に今の思いが伝わったようだ。18の手が重なるそこに、他の面々の右手も重なっていくのが感じられたからだ。


 思いは時として、時間と空間を超越する。それは確実に存在する概念である。


    第8話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ