表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
53/683

第7話 愚者の考え3(キャラ名版)

 約1ヶ月振りに大都会カルーティアスに戻ってきた。ヒドゥン状態のメカドッグ嬢達に警戒を任せていたが、特に目立った事は起きていない様子だ。例の偽勇者共も暗躍していないと思われる。


 ただ、大都会に戻っても、明確に何をすればよいのかが掴めていない。そこで、妹達には引き続き、冒険者ギルド経由でのレベルアップを行うよう提示した。俺とミツキTは、以前の様に酒場の屋上から監視を行う事にする。


オルドラ(おお・・・これが念話という力なのか・・・。)

カネッド(凄いっしょ!)

ダリネム(何時でも何処でも対話が可能だし。)


 ・・・各々との連絡はこの通り、念話を使う事にした。特にオルドラにも効果があった事には驚いたが。それだけ、心中が善心である証拠だな。一応、バリアとシールドの防御機構も施してある。


オルドラ(それよりも・・・この気配や雰囲気、お前さん達から伝わるものだな・・・。)

エメリナ(小父様も感じられますか。私達も以前は、不可思議としか思えませんでした。しかし、どうやら個々人が感じる一念を共有する事で伝わるらしいですね。)

オルドラ(なるほどな・・・。)

ミスターT(地球では常套手段の1つなんだがね。)


 5大宇宙種族が常套手段となる念話の力、それに今も圧倒されている妹達とオルドラ。俺達もこの力を初めて知った時は驚愕したが、今では常用するほどにまで至っている。


オルドラ(・・・よくぞまあ、これだけの力を常に発揮できるものだ。そこには、善悪の力を感じる事だろう。胸中の一念を平常に保つのは、相当厳しいと思うが・・・。)

ミスターT(んー・・・特に意識した事はないんだがの。)

エリシェ(確かに。何時の間にか常用していましたからね。)

ラフィナ(警護者特有の、殺伐とした生き様の賜物でしょうか。)


 実に不思議である。オルドラが語るそれは一理ある。いや、そう思うのが普通だろうな。考えられるとすれば、異世界の殺伐とした様相が、地球の殺伐とした様相より弱いという事か。


ミスターT(この異世界では、過去にどの様な戦争や紛争があったかは分からない。地球でも、過去に世界大戦があったりした。恐らくだが、規模的なものや、その内容により、心構えがあるかどうかになるんだろうな。)

オルドラ(俺達の世界の方が、まだ残酷な戦争には至っていないという事、か。)

アクリス(一応ですが、過去に魔大戦などの、全ての種族を巻き込んだ戦いもありましたけど。)

ラフィナ(魔大戦・・・世界から魔法・・・むぐっ?!)

エリシェ(はぁ・・・。)


 何ともまあ・・・。真面目な会話の最中、ラフィナが“魔大戦”の語句から、某ゲームのオープニングを語り始めた。それを口を抑えて押し留めるエリシェ。ヲタク気質は健在だわ。


ミスターT(ま・・まあ何だ、その世界での順応力とも言うべきだな。)

オルドラ(・・・一応、了解した。)


 これ、彼の近場で2人のボケとツッコミが行われたのだろう。言動からして、呆気に取られているのが伝わってくる。何とも・・・。


ミツキT(まあ、念話は非常時以外は用いないようにしましょう。相手に察知される事は皆無だと思いますが、小父様みたいに1人でブツブツ独り言を言う様な事態にならないように。)

アクリス(端から見たら、正に変人ですからね。)

ミスターT(ふん、言ってろ。)


 念話は度が過ぎると、独り言を言っている様に見える場合がある。特に俺の場合、その度合いが凄まじい。以前アクリスに、ニヤニヤしながら見つめられていた事があったしな・・・。


 雑談をしつつ、冒険者ギルドへと戻る俺達。久方振りの登場に、店内のギルド職員達が沸き上がる。工業都市の同ギルドから情報は得ているようだが、実際に再会するとでは異なる感じである。と同時に、嫌な情報も入ってきた。



 あの後、偽勇者共が姿を消し、街中に平穏さを取り戻したのは良かったらしい。しかし、今度は王城が臨時の徴収を行いだしたようだ。特に目立つのが、傭兵の雇い入れである。


 この行動の深い意図は読めないのだが、唯一考えられるとすれば、それは戦争しかない。問題は、その矛先を何処に向けるのか、という事だ。魔王軍だけなら、冒険者達だけでも十分何とかなる。


 それに、あの女性魔王の気質からすれば、世界を破滅に導くような存在でもない。それ以外に目的があるのが痛感できた。俺をこの異世界惑星に召喚したのなら、直接自分の元に送るのが筋である。


 どうやら、本当に混沌とした様相になって来ているようだわ・・・。




シルフィア(なるほどねぇ・・・。)

ナツミA(先の偽者事変と同じ感じですね・・・。)


 討伐クエストに向かう妹達を見送り、再び酒場の屋上で監視を続ける。その中でも、念話による定期連絡は欠かさずに行っていた。地球にいるシルフィアとナツミAが表情を曇らせている。


ヘシュナ(私が言うのも何ですが、マスターが人間を守る意味があるのかと思うそれを、再度痛烈に感じています。)

ナセリス(守る気が失せてきますよね。)


 静かなる怒りを放つヘシュナとナセリス。念話を通して、凄まじいまでに伝わって来る程だ。ただ、殺気と闘気が絡んでいないため、純粋な怒りだけに留まってはいる。俺の場合なら、そこに殺気と闘気が絡むため、ドエラい事になってしまうが・・・。


女性(次は、私が暴れてみましょうか?)

ミスターT(真打登場って感じか・・・。)

シルフィア(はぁ・・・。)


 ボソッと話しだすのは、地球で“良い意味で暗躍中”だったスミエからだ。シルフィアの師匠であり、俺の遠縁の祖母でもある。


デュヴィジェ(どうされますか? 現地での潜入捜査を行う感じで?)

スミエ(その方が良いかも知れません。一応、女性だと侮られるので、性転換状態で挑んだ方が良いと思います。)

ミスターT(獲物は長刀と携帯方天戟だな。)

ミツキ(セフィ・・・むぐっ?!)

ナツミA(はいはい、黙りましょうね。)


 この美丈夫は・・・。隙あらば、ネタを展開しようとする姿は、暴走機関車そのものである。先はラフィナが同じ様相になっていたが、今度はミツキがその様相になっている・・・。


デュヴィジェ(もうね・・・次は私を飛ばせと五月蝿いんですよ・・・。)

ヘシュナ(エリシェ様とラフィナ様を前倒しで飛ばした事に、相当ご立腹していまして・・・。)

ミスターT(そ・・そうですか・・・。)


 やはり予想通りだったわ・・・。当初の転送装置による飛来者はミツキだったのだろう。それを止めて、“理に適った”形でエリシェとラフィナを飛ばした。怒るのは当然である。しかも、念話でハッチャケ状態のラフィナを窺えば、よりヒートアップするのは言うまでもない。


ミツキ(ふんっ! 今回は譲ってあげたわっ! でも次はこうはいかないんだからねっ!)

ナツミA(何そのツンデレキャラ。)

シルフィア(こりゃ・・重症よね・・・。)


 会話が成り立たない・・・。だが、その様相を感じた面々は、堪え切れずに笑い出している。地球での行動時も、こうして周りを笑わす事を繰り返していた。ミツキの手腕には、ただただ脱帽するしかない。


オルドラ(・・・娘がいたら、お前さん達の様に明るい女性だったんだろうな・・・。)

ミスターT(彼女か・・・。)

デュヴィジェ(ほむ・・・。)


 一部始終を窺っていたオルドラが小さく呟く。魔物達に殺されたとされる、実の娘の事だ。それを窺った一同は黙り込むが、宇宙種族の面々は何かを感じ取ったようである。


デュヴィジェ(大変恐縮なのですが、オルドラ様の娘様は生きていると思われます。)

オルドラ(な・・何だと! 本当なのか?!)

デュヴィジェ(はい。ただ、何処かまでは分かりませんが、そちらの惑星内でご健在ですよ。)

ヘシュナ(なるほど、オルドラ様のこの感じですか・・・。確かに似たような生命を感じますね。)


 凄い業物を見せてくれたわ・・・。どうやら、念話を通して、オルドラと似たような生命力を感じたようである。しかも、その規模は異世界惑星全域に、である。宇宙種族の力は、何処までも逸脱した様相だわ・・・。


オルドラ(・・・信じても良いのか?)

デュヴィジェ(生まれてこの方、酷い嘘は一度も付いた事がありませんよ。それに、生命の次元の感知は、絶対に嘘を付きませんので。)

ミツキ(それ以外では・・・嘘を付いた事があるのだな?)

デュヴィジェ(え・・それは・・・。)

ミツキ(嘘吐きは泥棒の始まりだごるぅあー!)

ミスターT(だー・・・滅茶苦茶になるからやめれ・・・。)


 はぁ・・・どうしたものやら・・・。念話による定期連絡は、当面は自粛した方が良いかも知れない・・・。しかし、どんなに距離があろうが、即座にリアルタイムに連絡が取れる念話の力は、今は必須的な力の1つである。茶化しを除けば最高の能力なのだが・・・。


 どうしてこうも、話の流れや場の流れを笑いへと持ち込もうとするのか・・・。それでも、確かに場の雰囲気を変えようとする一念は感じ取れる。ミツキ流の生き様が正にそれだしな。黙認すべきだろうが、異世界の住人達にとっては強烈過ぎるようである・・・。



 とりあえず、先の流れ通りの行動を取る事にした。次の異世界の飛来者はスミエに定め、性転換ペンダント効果で男性化状態を維持する。偽名でシャドウと言う名にし、王城への潜入捜査を任せた。


 地球でも数多くの潜入捜査を行った実績があり、その事から隠密の紫陽花と言われるようになっている。スミエ自身は紫陽花の花や紫色が好きなため、この異名を使っているとの事だ。また、弟子たるシルフィア自身も潜入捜査はお手の物である。


 しかし、2人をしても警護者界最強は俺であると豪語してくる。2人とも俺の師匠的存在になるのだが、それをも超える直感と洞察力には脱帽らしい。俺には全くその力を感じる事がないのだが・・・。


 ちなみに、瞬発的な戦闘力を叩き出せるのは、ボケとツッコミで活躍するミツキとナツミAである。“力の出し加減の触り”という究極の戦術を習得している事から、局地戦仕様とも言われている。その業物により、腕相撲では姉妹に勝てる者は絶対にいない・・・。




ミツキT「お疲れ様です。」

ネルビア「ただいま戻りました。」


 数時間後、冒険者ギルド内は奥のテーブルにて落ち合う俺達。久方振りの大都会とあり、討伐クエストの様相を把握せずに赴いたらしい。だが、問題なくクエストは完了したとの事。


カネッド「ランクSまでは遠いですわ。」

ダリネム「BからAまでは何とかなっても、それ以上が厳しいらしいし。」


 何時ランクSになるのかと、興奮気味に語る妹達。エメリナ達も今回のクエストでランクAとなったようで、13人してランクAの凄腕冒険者となったようだ。


エメリナ「マスターは、今だにランクFとは・・・。」

ミスターT「目立っても、良い事など何もないんだがな。」

ミツキT「本当ですよ。」


 すっかりランクFが板に付いた状態だ。俺もミツキTも、ランク制度を好まない性質なので、今だに放置中となっている。それなりの依頼を受けて、冒険者ギルドに報告さえすれば、最低でもランクDぐらいまでは進むらしいが・・・。


フューリス「実力なら、既にランクS以上に至っているのですけどね。」

ジェイニー「ランクでは表し切れない実力だと思いますよ。」

ミスターT「俺のランクは変人でいいわ・・・。」

ミツキT「つまり、F以下のGの次のHと。」


 その例えに爆笑しだす妹達。ただ、ランクが変人という意味合いは、俺の性分としては十分合っているのが何とも言えない。


ミスターT「そう言えば、ラフィナがボヤいていたわ。彼女がプレイしたゲームで、ランクを上げるのが相当厳しいのがあったとか。」

テューシャ「そのゲームという作品では、同じクエストを何度も繰り返して行う感じで?」

ミスターT「そうなるね。ゲーム内だと、内部設定で定めない限り、モンスが枯渇する事はない。永久的に狩りが続けられるしな。」


 ゲームの中の仕様であれば、魔物の数には制限がない。一部作品では、出現する魔物の数に限りがあったりするが、大多数は無尽蔵に沸き続ける。この異世界の惑星はリアルそのものなので、有限仕様であるのは言うまでもない。


ミスターT「モンスも生命体の1つと捉えるなら、やはり殺害は避けたいのが本音だが・・・。」

アクリス「確かにそうですが、その心構えによりこちらが倒されては話になりません。降り掛かる火の粉は払い除けねばなりませんし。」

キャイス「難しいですよね。相手が魔物だから討伐するとか、一体誰が定めたルールなのか。」

ルマリネ「本当ですよ。」


 妹達の方も、少なからず魔物への一念が変わってきているようだ。相手も生命体なのは言うまでもない。魔物だから殺害し、人間だから守る。一体誰が決めた理なのか、突き詰めても永遠に答えは出ないだろう。


ミスターT「それでも・・・己が定めた生き様は、どんな事があろうが貫き通す。」

ファイサ「そうでしたね。ミスターTさんの絶対不動の一念ですから。」

アーシスト「相変わらず強いですよ。」

ミスターT「伊達に28年は生きてはいないさ。」


 徐に一服しながら天を仰ぐ。この一念に至ったのは、やはりミツキTの逝去後だろうな。


 それまでの俺は、何かにつけては折れるような事が多かった。当時はまだ凄腕の警護者でも一介の警護者ですらもなく、そこまで肝っ玉が据わった奴ではなかった。その俺を命懸けで変革してくれたのが彼女だった。


 それ故に、後の警護者の任務では徹底的に不殺の精神を貫き続けた。不殺を貫くのなら、それに見合う実力を持たねばならない。ミツキTが健在の頃から知り合った、シルフィアやスミエの元で、死に物狂いで修行を繰り返したのが良い思い出である。


 そして、絶対不動の原点回帰に至った要因は、ナツミツキ姉妹と四天王と出逢った事だ。また、5大宇宙種族の彼らが俺の一念の淵源を、更に不動にしてくれた。しかし、今でも修行は繰り返している。油断をすれば、己自身に食い破られるのは言うまでもない。


    第7話・4へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ