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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第5部 迎撃戦と反転攻勢
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第3話 開拓と調停者5(通常版)

(・・・ふむ。)

(どうした?)


 魔物大陸のダンジョン攻略をしている最中、王城大陸に潜入しているミツキTがボヤく。その彼女に小さく答える。今は眼前に迫る魔物を隕石方天戟で蹴散らし、サラとセラがダブルダガーで猛追している。


(いえ、例の偽勇者共が“そこそこ”力を付け出している様子で。)

(げっ・・・アイツ等まだ頑張ってんのか・・・。)

(しつこ過ぎますよね・・・。)


 過去の宿敵となる相手の名を聞き、方々から批難の声が挙がりだす。特に妹達にとっては、最悪の相手でもある。声色からして相当怒りが湧いているようだ。


(ほむ、あの小僧共、ね。)

(へぇ・・・それなりに修行をしている感じですかね。)


 対してこちら、シュームとナツミYUは“そこそこ”感嘆とした声を挙げた。2人は過去に、連中に向けて修行をせよと言い放っている。それなりに行動をしている事に感心した様子だ。


 ネーヴァレア事変までの抗争で、連中とは何度も対峙を繰り返していた。しかし、そこには己を鍛錬した様子は皆無である。身内達により、一撃で叩き伏せられていた。


 今度対峙する際は、幾分か異なる展開になりそうだ。それでも、こちらも黙っている訳ではない。当時よりは遥かにレベルアップをしている。言葉は何だが、面白い戦いになりそうだ。


(ご自身の力量を見誤っているのなら、幾ら修行を行っても意味はありません。逆に傲慢さが増加し、更なる愚者に陥ると思いますよ。)

(向こうの様相は全く分からないが、更なる愚者に陥っている方に銅貨1枚賭ける。)

(ぬぉー! それがあれば茶菓子が買えるわぅねっ!)


 漠然とした言葉を述べるティルフィアに、結果は見えていると補足した。ついでに、その結末に銅貨1枚を賭けるとも追加する。すると、直ぐさまボケを入れて来るミツキである。


(フフッ、確かにその通りね。私もTさんに便乗して、銅貨2枚賭けますよ。)

(わたは椀飯振舞っ! 金貨1枚わぅ!)

(はぁ・・・あのカス共が娯楽のネタ、か。世も末だな・・・。)


 姉妹のボケの応酬にツッコミを入れる。普通ならナツミAがツッコミ担当だが、今回はミツキに便乗してしまっている。この場合は俺が適任だろう。そして、そのやり取りを伺っていた面々が、堪え切れずに爆笑しだしている。


(連中はセレテメス事変で窺ったが、大した力を持たぬガキ共だわな。)

(そうでしたね。あまり見下す発言はしたくないのですが、あそこまで傲慢な相手には良い気付けでしょう。)

(アイツ等に対しては、見下す発言は常套手段だと思う。)


 本当にそう思う。ウエストとサイバーが挙げた通り、偽勇者共の言動などは常識を逸している。2人やナッツにエンルイは、実際に連中とは交戦経験はないが、雰囲気で察するものがあるだろう。


(そもそも、勇者と言われるなら、世上を救う調停者になるべきなんですがね。)

(名声に目が眩み、私利私欲を貪る阿呆に成り下がった存在ですからね。)

(一応言っておくけど、貴方達がそうなった場合・・・分かっているでしょうね?)


 サラッと挙がった彼女の言葉に、この上なく震え上がる四天王。ナツミAの言動は、彼らにとって超絶的な特効薬である。まあ、ほぼ戒め的な茶化しになるのだが、それを感じさせない恐々しさである・・・。


 ただ、四天王やミツキも重々承知している。常にナツミAが戒めてくれるから、誤った道に進む事がないのだと。それは彼らの方も同じである。


 ミツキが生き様、持ちつ持たれつ投げ飛ばす、この気概が働いていた。こと、異世界惑星では、それが十全に発揮していると確信している。



(と・・ともあれ、連中が今まで黙りを続けていた事が驚きですけど。)

(転送魔法が使えるのですから、こちらに殴り込みをしてきても良いと思いますし。)


 確かにその通りだ。アクリスが言う通り、連中は異世界惑星を縦横無尽に飛び回れる力がある。しかしネーヴァレア事変を最後に、連中の横槍はパタリと止んでいた。


(以後は、将軍共や魔物頭などしか出て来てませんよね。最近は貴族連合だけですし。)

(私達も、イザリア様方から転送魔法のレクチャーを受けてみましたが、非常に楽に使う事ができますよ。)

(転送魔法は、魔法を持つ方なら誰でも使えますからね。後は規模の問題になります。魔力さえあれば、何とかなりますので。)


 この点に関しては、異世界組の面々の意見に耳を傾けるしかない。俺達は魔力や魔法の概念は一切働いていない。今も使う事ができないのだから。


(それに関してなのですが、座標軸の撹乱で見当違いの場所に飛ばす事ができますよ。連中の奇襲に対しての対策になります。)

(・・・それ、本当か?)

(ええ、本当です。実際に私が実験台になりまして、実証済みです。)


 ・・・怖ろしい事が発覚した。転送魔法に対して、撹乱作戦ができるというのだ。実際に竜王たるフィルラウロームが検証実験を行っている事から、その裏付けは確実なものだろう。


(ただ、実戦投入した事はありません。となれば・・・。)

(連中は、こちらに来ないだけと言う訳、だな。)

(そうなります。まあぶっちゃけ、座標軸の撹乱で宇宙空間に飛ばせば、即座に酸欠になって即死しますけどね・・・。)


 恐ろしいまでのニヤケ顔で微笑む彼女。それに転送魔法を使える面々は顔を青褪めだした。デュヴィジェの気質からして、実際にやりかねない事を知っているからだ。またこれは、転送装置にも応用は可能らしい。



(そもそも、転送機構に関して、私達は誤った評価をし過ぎています。以前ナセリス様が宇宙船の動力源で激昂されたように、私はこちらで激昂したいですよ。)

(確かに・・・。転送機構は座標軸を誤ると、何光年先とか平気で飛びますし・・・。)


 怒り心頭のデュヴィジェに、恐々と語るナセリス。こちらは宇宙種族組で、転送装置による解釈ではある。しかしどうやら、転送魔法にも該当する概念らしい。


(ええ、小父様の思われた通りです。転送装置も転送魔法も、簡潔的だと座標さえ的確であれば、どんな場所にでも飛ぶ事ができます。更に明確にするならば、座標軸も定める必要がありますけど。)

(そもそも、転送魔法は魔力と生命力で補う形で、転送装置は念話力と生命力で補う形になります。言わば、直感と洞察力、後は察知力ですね。)

(なるほどね・・・。)


 専門用語的な内容が飛び出してくるため、幾分かチンプンカンプン状態ではある。ただ、唯一理解できるのは、動力機構と同じく扱いが難しいという点だろう。


(言わば、コンピューターのゼロイチの世界と思って頂ければ。もしも、1つでも数値が誤っていたら、プログラムは有り得ない動きをしますよね?)

(・・・それで、途方もない場所に飛ばされる訳、か。)

(そうなります。たった一歩だけ右側に移動とか、そう意味合いではありませんので。各作品でのワープ航法に関して、非常にシビアな計算を行うのと全く同じ意味合いになりますし。)


 今もチンプンカンプンは続くが、非常に怖い結末が待っていると言う事だけは痛感できた。彼女達が激昂する意味合いは、それだけ危険な存在である証拠でもある。


(魔力や魔法の概念に関しては、私達は全く関知できません。しかし、魔力は念話力や生命力に近しいものなので、異世界組の方々は魔法を使う際は本当にご注意を。)

(簡単に挙げるなら、魔力の大暴走により自壊する、これでしょう。これは自身自体の自壊ではなく、宇宙空間に飛ばされるという意味合いです。)

(宇宙ならまだ良いかも知れませんけどね・・・。)

(はぁ・・・深海や地中に飛ばされて、即死する恐れもある訳だな・・・。)


 格言的な結末を言うと、異世界組の面々は超絶的に震え上がった。念話を通して伝わる恐怖度からして、相当なものだと思われる。


 ただこれは、俺達への痛烈なまでの戒めでもある。デュヴィジェやナセリスが挙げたのは、転送魔法に関しての警告だ。しかしそれは、裏を返せば転送装置に関してのものでもある。


 更には俺達地球組は、各ペンダント効果に付与された力を、漠然と使っているに過ぎない。宇宙種族組の面々ですら、各種族のテクノロジーの全容を把握し切れていない。一歩扱いを間違えば、とんでも無い事になるだろう。


 各作品でも、平然と使われる転送機構。だが、実際には恐ろしいまでの危険が備わっているのを痛感した。今後は気を付けて用いねばならない・・・。



(・・・皮肉過ぎる。偽勇者共の襲来を揶揄していたら、転送機構の危険度のレクチャーを受ける事になるとは・・・。)

(本当ですよね・・・。)


 戦々恐々と言うべきか。恐ろしい力を持っている事に、本当に驚くしかない。慣れというのは、時として危険と表裏一体になりかねない。肝に銘じておかねばな・・・。


(アハハッ、まあそう仰らずに。言葉は異なりますが、“用法用量を守って”、ですよ。)

(ぬぉー! 茶菓子を食い過ぎて後悔するのと同じわぅか?!)

(それ、ポチしかいない感じがするけど・・・。)

(な・・なんだってー!)


 これである・・・。先程までの恐々とした雰囲気を、一瞬で破壊するミツキ。その手腕には脱帽するしかない・・・。


 これ、間違いなく難しい会話に対してのオーバーフローだろう。かく言う俺も、その難しい内容には参り気味でもある。確かに重要なものだが、何ともまあ・・・。


(用法用量を守らぬのは、このゲテモノ共じゃー!)

(無駄に数で押し寄せて来よって!)


 真面目会話に飽きたのか、サラとセラも暴走しだしている。今も俺とトリオを組みつつ、ダンジョン攻略を続けている。念話をしながらの戦いだが、相手に隙を与える事は皆無だ。


(何か、物凄く楽しそうだぬ・・・。転送装置で加勢しちゃるー!)

(ええっ・・・。)


 そう叫んだ瞬間、何と俺の直上にミュティヌが現れた。そのまま俺の身体にぶつかってくる。幸いにも、傍らにはメカドッグ嬢達がいるため、魔物達に横槍を受ける事はなかったが。


 余りにも突発的な行動に、とにかく呆れ返るしかない。この場合、彼女は俺を座標軸に据え置いたのだろう。少し違ったのは、俺の直上に現れた点だ。もし同じ場所であれば、身体に重なったかも知れない・・・。


(お・・おういえい?)

(こ・・このじゃじゃ馬娘・・・。)


 俺の胸に覆い被さるミュティヌが、顔を引きつらせつつニヤケ顔という芸当を演じてくる。この身勝手さには流石に“軽く”頭に来たため、その両方の米神に両手の握り拳をグリグリと押し付けた。


(少しは自重しやがれ・・・。)

(ぎゃー! やーめーれー!)

(何? 何?! 超楽しそうなんだけどっ?! 参加してもよろしくて?!)

(だー! やめれー!)

(はぁ・・・Tさんも大変ですよね・・・。)


 一体何なのやら・・・。このじゃじゃ馬娘達の猛攻には、本当に対処不能でしかない・・・。そんな俺達の様相を窺い、周りの面々は爆笑するしかないようだ・・・。



 それでも、この様な“いい加減”に見えるやり取りが、俺達の大切な原動力でもある。些細なものであるが、そこから凄まじい力へと発展していくのだから。


 本当に相手は、大損の行動を繰り返し続けている。連中の言動全てが俺達のパワーアップに繋がっている。もしこれを狙ってやっているのだとしたら、相当な経験値上納者としか言い様がない。


 この場合は、俺達がマイナス的な概念を、全てプラス的な概念に変換させているだけに過ぎないだろう。何時も通りの行動、無意識レベル的な感じだ。


 こちらを阻止したければ、全力を以て挑んでくるべきである。だが、それは無理だろうな。今後もこの流れが続きそうだが、それでもプラスに転じられるなら幸いである。



 今も繰り広げられる、周りの面々とのやり取り。彼らに対して、心から感謝を述べたい。彼らといる限り、俺は間違った道に進む事はないだろう。


 持ちつ持たれつ投げ飛ばす、本当にそう思う。まだまだ膝は折れないわ。


    第4話へ続く。

 転送装置や転送魔法などの、怖い結末をカキカキ@@; いえ、その飛んだ先が宇宙空間や地中や海底とかだと、大変な事になりますし@@; ゲームはメタルマックス2でも、転送事故により何とかケミカルまで飛べますが、アレは下手をしたら即死しかねません(>∞<)


 ともあれ、現段階の人類には、空想の産物までの存在なので、この手の苦悩は未来の人類に委ねられる感じでしょうか。それらが普通に安全に使えるようになれば、月や火星なども簡単に飛べるでしょうね。流石に現地に激突する事はないとは思いますが(-∞-)

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