第3話 開拓と調停者3(通常版)
「おとといきやがれっ!」
「二度と来んなぼけぇ!」
双子の啖呵が轟く。再び襲来した貴族連合を、体術だけで撃退して追い返した。あれからも懲りずに襲来が続いている。本当に見事としか言い様がない。
「ぬぅーん! わた達も派遣されたのは理に適ったわぅね!」
「本当よねぇ。魔物大陸への襲来頻度が、他の全大陸の9割は占めているし。」
「何らかの結果が出せるまで、永延と続くと思いますよ。」
双子と共に共闘したミツキとナツミAとミュティヌが語る。3人とも急遽、別大陸から派遣された形である。それだけ魔物大陸への侵略行為が後を絶たない。
「はぁ・・・開拓の方が全然進まないんだが・・・。」
「小規模のコミュニティのみで、整地すらままなりませんからね。」
俺はイザベラや魔物娘四天王と共に、元台座周辺の開拓に勤しんでいる。しかし、先程の襲来は大規模だったため、急遽駆り出された形になった。それでも双子や3人の実力により、難なく撃退ができたのだが・・・。
「他の海岸線の再探索は、リュヴィウスさん達が行っていますよね。」
「向こうは問題ないとの事よ。既に過去に俺達が探索を終えているしの。」
「野生の魔物達も、大まかに二分化しましたし。」
本国へと引き返していく帆船群を見つめつつ、今の様相を思い浮かべた。
ミツキが挙げた通り、野性の魔物達は二分化している。交戦的な面々は戦いを挑んできているが、友好的な面々は仲間側になっているようだ。しかし、今居る魔物娘達などよりは、知能などは劣っているらしい。
そもそも、一部を除けば知能が特化した存在は非常に希である。それを踏まえると、魔物娘達の存在が逸脱している事が窺えた。
それに、異世界惑星での生命体の比率は、人間が3で魔物族が7の割合である。圧倒的に魔物族の方が多い。エヴェリム達が顕著である。
それでも、魔物大陸への侵略行為を止めない所を見れば、人間族が己が世界の王だと勘違いしている証拠だ。王城群や貴族共を見れば一目瞭然である。
「警護者の概念にも含まれる、調停者の存在が必要になりますよね。」
「ああ、本当にそう思う。」
休憩と題して、一同に紅茶を振る舞うイザベラ。インスタント式だが、空間倉庫を駆使して実現させているようだ。小さく頭を下げつつ、それを受け取り啜る。
「地球では調停者の存在は、殆ど目立っていませんでしたよね。警護者自体が裏世界の職業に当てはまりましたし。」
「そうだな。それが異世界惑星では、完全に前面に出ている職業になっている。やはり、ファンタジー要素が後押ししていると思う。」
「魔力や魔法の概念も、私がここに到来する前よりありましたし。」
そう言いつつ、小さく炎の魔法を繰り出す彼女。宇宙種族組では、イザベラや彼女の娘達のみ魔力や魔法の概念が働いている。それ以外の宇宙種族組や俺達は、一切顕現化されていない。
「うーむ、一体どういった仕組みなんですかね・・・。」
「魔力自体が生命力に通じる部分があると思うよ。俺達の場合は、それが電撃力や治癒力に該当しているし。」
同じく、小さく電撃の力を繰り出してみる。ルビナが十八番の電撃力だ。それを収めて、治癒の力を繰り出してみた。こちらはヘシュナやナセリスの十八番の治癒力である。
「そもそも、俺達は各ペンダント効果がなければ、これらも繰り出せないしな。」
「確かに。お兄さんの力だと、殺気や闘気の心当てぐらいしかないですからね。」
「俺の十八番になるしな。」
紅茶を飲み終えつつ、自身の力量を思い知る。地球組の誰もが、各ペンダントを駆使しないと魔法的な力は出す事ができない。純粋な戦いだけしかできない存在とも言えた。
「そこはアレですよ、重火器が専用武器になりますし。」
「うむぬ。火薬と言う魔力で、弾丸を放つ魔法兵器を使う面々わぅ。」
「近代兵器に特化した面々、か。」
それぞれが持つ重火器を見せてくる姉妹。俺も持つ重火器が、地球組の唯一の魔法的概念と言えるのかも知れない。この場合は科学力とも言えるだろう。
「何はともあれ、今は私達に課せられた使命を全うするのみです。私も一歩間違えば、死去していた可能性がありましたし。」
「ヘシュナさんとナセリスさんの治癒力様々だわな。」
本当にそう思う。1万年も病魔に苛まれていたイザベラが、ヘシュナとナセリスが得意とする治癒力で一発完治したのだからな。これこそ魔法的概念と言える。
絶対的な不幸の結末を強引に捻じ曲げ、幸の道へと変えていく。もし、5大宇宙種族の力がなかったら、イザベラは助からなかっただろう。本当に良かったとしか言い様がない。
俺の目が黒いうちは、悲惨や不幸など絶対に至らせない。手の届く範囲でもいい、それらに苛まれる存在を救い続けたい。それが警護者の生き様である。
ミツキ達が合流した事により、その後の方針を転換する事にした。彼女達はサラとセラと共に、魔物大陸の各ダンジョンの攻略に赴いて貰う事になった。
海岸線の警備に関しては、ウインドとダークH、それにメカドッグ嬢達に一任する。沖合いの2大ガンシップとの連携も取れるため、侵略軍団への対応は問題ない。
エヴェリム達は引き続き、海岸線の再調査を任せている。他の大陸でも、海岸線の再調査を行って貰っていた。異世界惑星の地形が様変わりしたので、必須と言える行動である。
戦闘機部隊などを駆使すれば、簡単に調査が終わるだろう。しかしここは、地道な行動で攻略すべきである。戦闘機部隊や宇宙戦艦部隊は、引き続き王城側の監視任務に当たって貰う事になるが。
それぞれが適した力量を発揮し、理に適った行動を行う。今はこれが無難だろう。調停者の存在は、態とらしくパワーバランスをイーブン化させて動く必要があるしな。実に皮肉としか言い様がない。
(マスター、王城側の戦力が増強している様子。)
(機械の塔の物資を用いた、戦力増強だと思います。)
その後も魔物大陸の開拓をしていると、念話によりエリミナから連絡が入る。王城側の戦力増強が著しいらしい。レビリアが挙げた通り、機械の塔の各物資を使った強化と思われる。
(連中、魔力や魔法の力で、科学力の領域まで踏み入れた感じか・・・。)
(魔力自体、言わば万能ツール的な感じですからね。生命力の簡易版とも言えますし。)
(何処まで強化されるのかが気になる所だが・・・。)
イザベラが挙げたように、確かに魔力は万能ツールと言える。俺達には扱えない力なだけに、その力量は把握し切れない。イザベラ達や異世界組の面々しか測れないだろう。
(マスター、そろそろ進撃しても良いのでは?)
(いや、それこそ侵略者になっちまう。向こうから完全な侵略行為があれば、それに伴い軍勢を向けても良いだろうし。)
(専守防衛的な感じですが、バリアとシールドの力があるので被害は皆無ですからね。)
確かにその通りなのだが、実際には地球は日本の防衛機構と同じ感じである。専守防衛だけでは、守れるものも守れない。故に警護者の存在が必要になってくる訳だが。
(タイミングが重要ですし。それまでは、各ダンジョンの攻略で良いと思います。)
(後手に回るのは参りモノですよ。)
(本当にそう思う。)
俺は無論、周りの面々も後手に回るのは参ると思っているようだ。各力が備わっているのに、それらを完全に使う事ができないもどかしさである。しかし、あくまでも調停者という役割を忘れてはならない。
(ところで、各々の攻略はどんな按配だ?)
(平行線でござんす。)
(一定の攻略で流れていますよ。)
各地でダンジョン攻略を行っている面々に様子を伺う。何処も同じ流れのようだ。まだまだ時間が掛かるという事である。
(魔物の規模は、例のスタンピード程ではないのですが、結構な規模になりますよね。)
(これが地上への大暴走となると、やはりダンジョン内で抑え込みたい所です。)
(了解した。呉々も無理無茶はしないように。)
ダンジョンという閉鎖された空間での戦い。そこに現れるモンスター群は、幾ら大規模だとしても、環境により限定的になる。彼女達の方が有利に戦えるだろう。
これが各々が挙げている様に、地上へと出現した場合は相当危険な状態になるだろう。故にスタンピードと言う名が付いているのだろうから。
ただ、最悪の事態の対応は十分可能だ。そのための巨大兵装群になるのだから。本来ならば個々人や個々のチームで対処しなければならないが、この点だけは安心材料と言える。
(開拓の方はどうですか?)
(んー、こちらも横ばいよ。貴族連合への対応もあるから、開拓に集中できていない。)
こちらの喫緊の問題は、正にこれである。貴族連合が侵略してきた場合、俺達もそちらの対応をしないといけない。そのため、その都度開拓を停止せざろう得ない。
(イルフィースにある2隻の宇宙戦艦のうち、1隻を派遣しますか?)
(その場合は戦力比からして、ネーヴァレアの1隻を派遣が良いと思う。イルフィースの2隻体制を半減させると、少々厳しくなるだろうし。)
(了解しました。西側に待機中の宇宙戦艦を派遣します。)
(無論、ヒドゥン状態で頼むわ。)
俺の言葉に、ニヤリを微笑むウェイヌ。他の面々もニヤリと微笑んでいた。この場合、侵略してきた貴族連合の度肝を抜かす作戦である。
既に魔物都市上空には、レプリカヴァルキュリアが待機中だ。こちらを開拓地へと派遣し、魔物都市に宇宙戦艦を派遣する形が良いだろう。レプリカヴァルキュリアのウリは、遊撃で真価を発揮するからな。
それに、海上ではレプリカ大和とレプリカ伊400が睨みを利かせている。他の巨大兵装には見劣りするが、それでもその総合火力は相手を完全に圧倒する。仮に宇宙船の場合でも、問題なく張り合える。
本来の普通の流れであれば、これら巨大兵装を用いる事はできない。各地域への対応が疎かになってしまい、必然的にスタンピードを巻き起こす感じになる。そう、各作品での流れが正にこれになる。
ところが、今の俺達は圧倒的戦闘力を有している。超チート性能と言うべき最強の力だ。今後もそれらを駆使して、異世界惑星の抗争を攻略していくしかない。
間違っても、力を持ち過ぎる者は全てを壊す、にはならないようにせねばな・・・。
第3話・4へ続く。
力があるのに使えない、と。なかなかに悩ましい様相かと(-∞-) いや、この場合は警護者軍団の総合戦闘力が逸脱しているのが原因でしょう><; 個々人の戦闘力ですらチート性能なのに、そこに近代兵器の投入に、仕舞いには巨大兵装という椀飯振舞(何@@; これから先、最後まで突っ走れるか非常に不安です><;




