第2話 侵略抗争4(通常版)
(うーむ、困りましたねぇ。)
念話力を通して、一部始終を窺っていた総意。俺達の身体を媒体とした投射である。念話以外にもこうした手法が繰り出せるのも利点だわ。その中で、エリシェが頭を悩ませている。
(かつての各貴族事変と同じ感じですよね。今後も襲来は確実に発生するでしょうし。)
(マスター、ここは徹底抗戦するべきか?)
(んにゃ、その都度退けるで問題ないよ。うちらは各ダンジョンの攻略があるしな。)
リュヴィウスが挙げた徹底抗戦が手っ取り早いが、下手に過剰な刺激を行うのは良くない。恒例の如く、泳がせてボロを出させるのが無難だろう。
むしろ今は、各ダンジョンの攻略が急務である。簡易スタンピード程度なら抑えられるのだが、大規模スタンピードとなったら“本気”を出さなければならなくなる。
(マスター、その本気を出して早期解決もアリとは思いますけど?)
(はぁ・・・何から何まで本気はマズいと思うんだがね・・・。)
(そうですか・・・。)
力があるのに使えない、それに歯痒い思いをしている異世界組の面々。確かに俺達の方も同じ思いはあるが、大局的に見ねばならない時でもある。そもそも、早期決着を行うなら、既に王城側は完全消滅させているしな。
(ただ、先の様相を見る限り、王城側が発掘した劣化版バリアとシールドは使われていない。アレが投入されるのは、宇宙船群とやり合う時か、それか親玉連中の対峙時ぐらいか。)
(でしょうね。まあでも、こちらは貫通兵装がありますし。それらを無効化させればチェックメイトそのものですよ。)
常に先手を打って動き続ける、それが貫通兵装であろう。これに関しては、相手のバリアとシールドを破る効果がある。
以前伺ったのだが、実際には2種類の効果があるとの事だ。1つは、今し方挙げたバリア・シールド貫通兵装。ダークHが俺の肩を打ち抜いた、あの兵装群になる。バリアとシールド自体は破壊せず、放たれた弾丸などを貫通させるものだ。
この場合、弾丸などを透明化すると挙げた方が分かり易いかも知れない。擦り抜けると言うべきであろうか。5大宇宙種族が地球人とは時間と空間が異なる事から、実現可能だとも。これに関しては、彼女達すらも不明な点があるため、詳細な事は分からないらしい。
もう1つの方は、デュヴィジェが新たに開発した恐ろしい様相となるだろう。そう、バリアとシールドの効果を無効化させる貫通兵装だ。最早貫通とは言えないのだが、確かに貫通する事には変わりないため、それで挙げているとの事だ。
地球の事変で用いた貫通兵装だが、ミュセナ達が開発した新技術たる前者のものになる。それを発展改良したのが、デュヴィジェが開発した後者のものだ。本当に恐ろしいとしか言い様がない。
(連中は、為す術無しと言う訳か。)
(当たり前ですよ。あくまで主導権は私達が完全に握っています。連中には、世上に蔓延る魔の気質を払うための礎になって頂きますからね。)
(それ、悪役の言う台詞だわな・・・。)
俺のボヤきに、エラいニヤケ顔で頷く彼女。ヘシュナ自身、元祖悪役と言うべき存在だ。この手に関しては誰も敵わない。
(まあ今は、各地域のダンジョンの攻略を最優先としましょう。小父様には引き続き、魔物大陸の防衛と探索をお願いします。)
(了解。襲来する愚物共は、全部叩き潰してやるわ。)
(ふんっ! 何人束になろうが愚者は愚者よ。一モフりで蹴散らしてくれるわっ!)
(モフり、ねぇ・・・。)
恒例の如く、シメはミツキのボケで括られた。それにツッコミを入れるナツミA。周りの面々は不甲斐無いばかりに笑っている。
現状の打開策は、やはり地道な攻略しかないのだろうな。それを再確認させて貰えただけ、有難いと取るべきである。贅沢は傲慢さを生み易いしな・・・。
ただ、その贅沢に関しては、俺達が持つ各力自体がそれに該当するのが何とも言えない。これで傲慢さに至っていたら、王城連中以上に悪党に成り下がるだろう。今後も己自身を律し続けねば・・・。
魔物大陸の各ダンジョンの攻略は、サラとセラに一任した。イザベラ達もいるため、全く問題はない。更に魔物都市からは、エヴェリム達が加勢に駆け付けてくれた。一際やる気になっているのはリュヴィウスである。
俺としては、同都市の防衛に関して大きく疎かになるから却下したのだが、同都市の上空にレプリカヴァルキュリアを配置する事で簡単解決に至った。周辺海域には、レプリカ大和とレプリカ伊400が巡回してくれている。
他の大陸側は複数の宇宙戦艦が待機してくれているからか、先の様な愚物共は襲来してきていないらしい。流石は巨大兵装群である。
そもそも、何故今になって他大陸への侵略を行ったのかが不明な点だ。これに関しては、頭脳派の面々も色々な推測を立てているが、決定打となる結論は出せていない。
(マスター、王城大陸と旧新大陸からは、色々な船舶による進出が相次いでいますよ。)
(どれも先の小型船舶群ばかりですが、相当な船団になっていますし。)
(はぁ・・・侵略抗争か、馬鹿げているわ・・・。)
偵察任務に着いてくれているエリミナ達から念話が入る。今もブラックブレイドを駆り、世界の偵察に打って出てくれていた。その彼らが目撃したのは、先の小船軍団が侵略を繰り広げているとの事だった。
(これ、王城側が絡んでいると取って良いのですかね。)
(十中八九、間違いないと思う。ただ・・・。)
(先の事変で、連中は“本土の腰抜け共”と挙げていた点、ですか?)
(そう、それなんだがな・・・。)
先の事変を踏まえると、一部が完全に辻褄が合わない状態だ。連中が王城側の出身ではないのなら、旧新大陸の出身となる。それなのに、レプリカ大和の様相を知らなかったのだ。
(更に別の場所のカス共と取る事はできますかね?)
(旧シュリーベル・旧デハラード、これぐらいしか属している場所がないんだがね。)
(旧リューヴィスと旧アルドディーレは、セレテメス側に移住しましたからね。)
確かにその通りである。旧シュリーベルと旧デハラードは、王城側に組み込まれたと言っていい。対して旧リューヴィスと旧アルドディーレは、セレテメス共和国に移住している。
(一部の連中だけが、旧新大陸に移住していますからね。)
(他に都市があったと取るべきですかね・・・。)
(俺達が知る限りは、他に都市があったとは思えないしな。)
先の連中がでまかせを言っていたとは思えない。ただ、愚物共はコロコロと主義主張を変えていく厄介者だ。信憑性は限りなく低いと取って良いだろう。
(うぉー! デュラハン軍団わぅ!)
(アンデットの巣窟に遭遇した感じかしら。)
そんな中、ダンジョン攻略中のミツキが叫びだす。ダンジョン内部でデュラハン軍団に遭遇したらしい。相手をデュラハンと挙げたのは、例の姿にソックリだからだろう。ナツミAは冷静に状況を分析してくれているのが何とも言い難い。
(そちらは大丈夫か?)
(なーに! うちらがいますぜぃ!)
(一撃でモフり倒してやるわぅ!)
(そうですか・・・。)
この美丈夫は・・・。まあでも、声色を伺う限り、劣勢ではないのは確かなようだ。それにギガンテス一族のミュティヌが居る限り、戦力的には全く問題はない。
ちなみに、各ダンジョン攻略に挑んでいる面々に対して、数の埋め合わせに関しては魔物娘達が買って出てくれている。そう言うと失礼かも知れないが、当の本人達は役に立てている事に嬉しさを感じているようだ。
それに、数多くの事変を共に過ごしてきた事もあり、今では一騎当千に近い女傑達に変貌している。特にヘシュナの治療事変の影響からか、今まで以上に肝っ玉が据わりだしていた。俺の殺気と闘気の心当てを受けたのと同じ感じである。
よって、各チームの戦闘力に関しては、全く以て申し分ない様相となる。当然、メカドッグ嬢達も加勢している事から、圧倒的戦闘力で駆逐して回れているようだ。
第2話・5へ続く。
何度か思っているのですが、台詞の前にキャラ名を表記するのは邪道なのでしょうかね?(-∞-) これがあると、誰が喋っているかなど分かるので、自分としては読み易いのですが・・・。他の方々の作品を拝見させて頂くと、余程の事がない限りはキャラ名はありません。偶に混戦状態(キャラが多く台詞も多い場合)だと、誰が喋っているのか分からなくなりますが><; う~む、永遠の課題でしょうか><;
風来坊側でもお知らせしましたが、更新の流れを変えます。今までは「探索者→警護者→風来坊」でしたが、明日以降からは「探索者→風来坊→警護者→風来坊」の流れにしますm(_ _)m いえ、警護者は最後に向かって進んでいますが、探索者の執筆が完全に停滞していまして><; その合間を埋めるための風来坊の追加です@@; 色々とすみませんm(_ _)m




