第7話 愚者の考え2(キャラ名版)
色々と思索しながら作業を進めていると、ふと現れる人物があった。そう、突然その場に現れた感じである。まさかと思い、静かにそちらの方を見入る・・・。
ラフィナ「来ちゃいました~、テヘペロ♪」
エリシェ「テヘペロって・・・。」
ミスターT「は・・はぁ・・・。」
そうである・・・地球にいる筈のラフィナがそこにいたのだ。更にもう1人、エリシェである。流石にラフィナほどの興奮気味ではないが、未知の様相に瞳を輝かせていた。
ラフィナ「凄いですよね、通称トランジットげふんげふんは♪」
ミスターT「はぁ・・・。」
エリシェ「何でも目標となる対象を、複数から測定するらしいとか。そこにマスターとミツキT様の生命反応を当てはめ、四次元から測定したらしいです。」
ミスターT「お前さんでも、この測定自体は未知の領域だった訳か・・・。」
実に馬鹿げているとしか思えない。しかし、5大宇宙種族が技術力を以てすれば、この超大な宇宙を移動する事は容易なのだろう。今回の手法により、より一層視野が広がったと思える。
ミスターT「しかし、よくミツキさん達が許したわな。」
エリシェ「貴方の相談役として、真っ先に派遣したかったそうですよ。ほら、例の自己嫌悪への応対云々が、悩みなどを解決していた事を評価してくれたようで。」
ラフィナ「それに、獲物の方も完全武装ですのでご安心を♪」
最初に到来した増援の意味を、正確に語るエリシェ。対してラフィナの方は、エリシェも持参している自前の獲物や武装群の事を挙げてきた。
通常の武器だが奥の手の武器としては、エリシェは迅雷剣、ラフィナは戦戈となる。どちらも某ゲームで有名な獲物のそれだ。当然、持ち易いように携帯式に改造してある。これらも携帯方天戟や携帯十字戟と同じく、四天王や三姉妹が製造した逸品である。当然、ゲームの形とは多少異なっている。
そして、主力兵器が恐ろしい。エリシェはマデュースことM2重機関銃の改造版。従来型は12.7mm弾を発射するものだが、彼女や俺が持つマデュース改は20mm弾の発射が可能である。正に化け物だ。
ラフィナの方が更に恐ろしい、ガトリングガンである。しかもこれ、口径が恐ろしいのだ。A-10サンダーボルトに搭載のガトリングガンと同じ、30mm弾を発射するモンスターガトリングガンである。
それに、俺が持つマデュース改は少ない弾倉なため、銃自体が比較的軽量タイプとなる。対してエリシェのマデュース改は、多段弾倉を複数備えた重装備版だ。俺の規模よりも3倍近い大きさを誇っている。ラフィナのガトリングガン改も、サンダーボルト搭載型の3倍の規模である。
ミスターT「はぁ・・・。」
ラフィナ「何ですか? この重装備でも不服ですか?」
ミスターT「・・・ぐうの音も出やがりません・・・。」
エリシェ「地球の最終決戦時より、更に改良を加えて頂きましたからね。長期戦に特化したタイプに化けましたから。」
実に嬉しそうに語るエリシェとラフィナ。華奢な身体には似付かわない、超重火器を持つ姿は、女性魔王よりも恐ろしく見えてくる・・・。重力制御ペンダント効果がなければ、絶対に持つ事ができない超重量火器兵器である。
一部始終を呆気に取られて見つめていた妹達。その彼女達に気付き、それぞれの獲物を地面に置き、彼女達の前に跪く2人。
エリシェ「お初にお目に掛かります。私はマスターが盟友、エリシェと申します。」
ラフィナ「同じく盟友のラフィナと申します。マスターが皆様方から、大変お世話になったと伺っております。」
エリシェ「本当にありがとうございます。」
大企業連合の総帥と総帥補佐とは思えない言動をする2人。この場合は、その世界に準拠した人物を敬うという意味合いである。言い方はアレだが、言わば重役同士のやり取りにも取れる。初動の対応次第では、相手への印象がかなり変わってしまう。それを痛感しているからだ。
エメリナ「は・・初めまして。ミスターTさんから、お噂は伺っておりました。私は・・・。」
エリシェ「勇者エメリナ様ですね、ご存知です。よろしくお願い致します。」
彼女達とは初対面同士なのだが、全てを把握している様子のエリシェとラフィナ。これは、俺との念話による察知であろう。ヘシュナ達が同じ手法で現状を把握しているのと同じだ。
2人の全く以て隙がない自己紹介に、妹達はタジタジの様子だ。無理もない、この2人の対人話術力は身内の中で最強である。対人力が優れるヘシュナですら一目を置くのだから。
そして、その出で立ちが正にバトラーそのものである。同性ながらも、その言動に顔を赤くしているのが何とも言い難い。野郎の俺からしても、エリシェとラフィナの言動には、格好良さが溢れているしな。
エリシェ「デュヴィジェ様とヘシュナ様が、空間収納を更に発展化させた手法を考案されました。」
ラフィナ「地球側との空間共有ですね。」
ミスターT「マジか・・・。」
獲物群を空間収納し、妹達と街の美化作業をしだすエリシェとラフィナ。その2人が語る内容に絶句してしまった。どうやら、時間と空間を捻じ曲げ、地球にダイレクトにアクセスが可能としたようである。
ラフィナ「ですが、そこから直接現地に戻るなどの行動はできません。今は転送装置の物質版とも。生身の肉体を再構築するには、まだ距離が有り過ぎますので。」
エリシェ「ですが、私達がこちらに来れたので、何れ相互移動が可能になると思います。極め付けはゲートの拡張でしょう。」
ミスターT「・・・アレらを送ってくるとか言わないだろうな・・・。」
俺の懸念にニヤケ顔で語る2人。個人や個人兵装そのものなら、力量の調整で何とかなる。しかし、“それ以上の兵装”ともなると、もはや異世界惑星の戦闘力を超凌駕する事になる。最悪は、破壊神にすらなりかねない。
エリシェ「シルフィア様が先読みされてました。もし相手側に超大な軍勢が出た場合、バランスを保つために巨大兵装を出して相殺すべきだと。」
ラフィナ「それに、恐らく最後の敵は魔物でも人間でもなくなると思います。マスターの脳裏からの現状予測からして、機械兵士や人工生命体が出るであろうと。」
ミスターT「・・・連中はあの戦いと同じのを、この地でも繰り広げるのか・・・。」
愕然とした未来像を聞かされる。それは、惑星事変や黒いモヤ事変の前に起きた、数々の事変の様相だ。
生命体が有限であり、成長までの時間が掛かるのなら、それを覆す流れを構築すればいい。これが地球での、悪党軍団の最後の一手であった。つまり、機械兵士と人工生命体による、実質的に無尽蔵に構成される軍団だ。
ラフィナ「魔王様は、この現状を読まれたのでしょう。彼女が宇宙種族であれば、転送装置などの技術力を持っていてもおかしくありません。現状の足止めとして、個人兵装で最強の貴方を召喚する。」
エリシェ「その貴方を仲間が必ず探すと判断し、その人物達に現状のパワーバランスを調整させようという流れを構築する。」
ミスターT「そこまで読んだのか・・・。」
見事な先読みである。確かに魔王や大魔王を宇宙種族と位置付ければ、俺を転送装置で召喚する事も容易である。王城側がそれを行った所で、現状は何の利益も発生しない。それに、あの偽勇者共が宇宙種族だとは到底思えないしな。
エリシェ「今後も個々人の到来はありますが、全て裏方に回る事にしました。私達はこちらに駐留、皆様方で先に進んで頂く形になりますね。」
ラフィナ「工業都市の防衛は全てお任せを。そのための個人兵装であり、警護者の力ですからね。」
物凄いニヤケ顔で微笑む2人に、恐怖を感じずにはいられない。しかし、今では相当な実力を持つ警護者に至っているため、この2人だけでも十分防衛はやってのけるだろう。
エリシェ「貴方が地球で、私達を厳守してくれたように、今度は私達がこの惑星の方々全てを厳守し続けます。」
ラフィナ「一切合切お任せ下さい。」
先程までのニヤケ顔とは異なり、今度は凄まじい気迫に満ちた真面目表情で見つめてくる。また、近場の妹達全員にも視線を送っていった。存在そのもので鼓舞激励をする、正にそれを実演しているようだ。
街の美化作業を終えて、オルドラ武器店に戻る。すると、店内からオルドラが現れ、実に清々しい表情で獲物を見せてきた。携帯方天戟以外に、隕石方天戟と題した複製品だ。ただ、格納式ではないため、持ち運びには難があるが。
そして、新たに登場したエリシェとラフィナに気付き、案の定驚愕している。その気迫もさる事ながら、携帯迅雷剣と携帯戦戈の獲物にも興味を惹かれている様子だ。極め付けの火器兵器は収納中なので、今は見れていないが・・・。
同日の夜、一同で作戦会議を行った。オルドラにも2人から一部始終の流れを語り、協力を仰ぐ形となる。当然、一言返事で了承するのは見事だったが。今後をどうするかで悩むが、ここは一度大都会に戻ってみるという事で纏まった。
オルドラ「エリシェ嬢とラフィナ嬢は、ここに残るという事だな、了解した。」
エリシェ「よろしくお願い致します。」
ラフィナ「ミツキT様、ヒドゥン状態のメカドッグ様方を50人ほど具現化を。ここの守りに十分な人員になると思います。」
ミツキT「了解です。」
簡単な作戦会議とは異なり、重役同士の真剣な作戦会議のこの場。オルドラ自身がこうした修羅場を潜っているのもあり、エリシェとラフィナとの対話は企業間の交渉の場そのものだ。その中で、メカドッグ嬢達の増員を決定している。担当者は引き続きミツキTである。
エリシェ「大都会に戻った後は、一応“普通の行動”をしてみて下さい。恐らく、横槍が入ると推測できます。」
エメリナ「例の偽勇者共とかですよね。」
カネッド「何処まで腐り続ける連中なのやら・・・。」
今では犬猿の仲にまで発展しているため、偽勇者共の話題になるとヒートアップする妹達。しかし、相手の実力は確実にあるため、油断は禁物である。
ダリネム「不謹慎な事を言って良いですかね?」
ミスターT「ん? 魔王嬢が来ないか、とか?」
ダリネム「よ・・読まれましたか・・・。」
ミスターT「ふふり。」
呆気に取られるダリネムに小さく笑ってみせる。だが、彼女が挙げたそれは、大都会の愚物共には相当な特効薬となる。ミツキTと語った、最初の街にラスボスが到来する、あの一件のそれと同様である。
ミスターT「お前さんのそのプランも有効打になるが、彼女の本命は俺だろう。愚物なんざに興味は惹かれんよ。」
ラフィナ「んー、でもマスターが現地にいれば・・・。」
ネルビア「・・・誘引戦法、ですか。」
エメリナ「強烈なまでの餌となりますからね。」
実に皮肉な話だ。魔王達を呼びたいのなら、俺が不用意に暴れるのが無難なのだろう。だが、それをした場合の被害状況が読めなくなる。俺個人ですら、この異世界惑星を壊滅させる事も可能なのだから・・・。
エリシェ「まあ、上手く誘引できた際は、別プランを考えていますのでお任せを。」
ラフィナ「適任は何方が良いでしょうかね。」
うーむ、この様相は・・・。どうやら、エリシェとラフィナは、今後の展開を複数の道筋として予測しているようだ。これを見越して、この2人を先に送ってきたのだろう。
地球での身内の中では、この2人の戦術・戦略指南役に敵う存在は絶対にいない。5大宇宙種族の面々ですら、2人の幅広い行動には脱帽している。
エリシェとラフィナの言動は、今の流れをゲームを楽しむかの様に動いている。確かに、この異世界の惑星の住人達からすれば、実に不謹慎極まりないだろう。しかしそこには、全ての生命を守り通すという、警護者の理が強く根付いている。本当に素晴らしい女傑である。
如何なる手段を用いようが、己が定めた誓願を確実に遂行する。警護者魂の真骨頂だわ。
工業都市デハラードをエリシェとラフィナに任せ、俺達は再び大都会へと戻る事にした。引き続き、オルドラには隕石などの鉱物を用いての、獲物製造に取り掛かって貰った。俺とミツキTは構わないが、妹達の獲物のパワーアップは重要である。
それに、魔王達を除けば、現状での脅威の存在は偽勇者共や王城となるだろう。特にその目標が俺や妹達であれば、工業都市に留まるのは得策ではない。そこで、エリシェやラフィナに裏方の行動を全て任せる事にしたのだ。
どうやら、俺達が考える以上に、この異世界の抗争は激化の一途を辿っている様子である。だが、警護者たる俺達がいる限り、真の敵にはデカい顔などさせはしない。
第7話・3へ続く。




