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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第1話 未知の世界3(キャラ名版)

 ゴブリン達を撃滅し、帰路に着く俺達。とは言うものの、異世界に飛ばされた俺は、不意な出逢いから加勢した女性陣に付いて行くしかなかった。


 ちなみに、彼女達はレディガードという集まりらしい。リーダーのネルビア、メンバーのファイサ・メラエア・カネッド・ルマリネ・アーシスト・ジェイニー・キャイス・アクリス・ダリネムの9人となる。これ・・・何だか宝石の名前に近いわ・・・。


 現段階ではこの10人のみらしく、村や街を回って傭兵家業を繰り返しているとの事だ。戦歴は今の所、無敗らしい。


 拠点としている街は、戦闘した場所から徒歩で数十分の場所だった。故に彼女達はゴブリンの大群を前にして退かなかったとの事。退いた場合、連中が街に押し寄せるのは想像に難しくないだろう。


 会話しつつ、街へと到着する。この街の名はシュリーベルとの事。先ず先に、冒険者ギルドへゴブリン達の事を報告するらしく、俺は近場の広場で待つ事にした。また、俺が資金群を持っていないのを知ったのか、アクリスとジェイニーが同伴者を買って出てくれた。先程、背後を守ってくれた2人である。




ミスターT「正規軍かと思うぐらいだったが。」

ネルビア「ご冗談を。私達は孤児院出身で、そこから這い上がった傭兵ですよ。」

ミスターT「よく周りが許したな。」

ファイサ「私達はそれぞれの境遇からして、共に過ごそうと誓い合った仲間でして。孤児院を出た後に至ったのが、偶々傭兵だった訳です。」

ミスターT「なるほどな。」


 この異世界だと、女性でも傭兵家業に就くらしい。デュヴィジェが読んでいたマンガでは、何処かの屋敷などのメイドに就くとかを窺ったが、実際には別のようである。むしろ、俺の知識がマンガから派生している点が、彼女達に無礼な事をしている気がしてならない。


ミスターT「・・・すまんな、お前さん達の境遇を馬鹿にするような事を。」

メラエア「え? 何処が馬鹿にしているのです?」

ミスターT「いや、俺の浅はかな知識だと、孤児院を出た後は屋敷のメイドなどに就くのだと思っていたからな。」

ネルビア「・・・いえ、ありがとうございます。恐らく貴方の認知では、もっと境遇が酷い扱いになっていたと思われたのでしょう。ですが、それも1つの意見ですから、私は気にしていません。」

ミスターT「ありがとう。」


 気にするなと笑顔で見つめてくるネルビア。ちなみに、全員15歳との事だ。俺より13歳も若いのには驚いた。この異世界の様相からして、若くてもしっかりした人物になるようだ。


 また、俺の両手はフリーになっている。人工腕部に無理矢理、マデュース改を括り付けているからだ。それをチラ見する彼女達だが、その度に驚愕しているのが何とも言えない。


カネッド「それ・・・一体どうなってるんですかね・・・。」

ミスターT「秘密だよ、お嬢様。」

カネッド「またそれですかっ!」


 自身の力を以てしても、持つ事ができないマデュース改。その秘密を知ろうと躍起になっているカネッドに、態とらしく振舞ってみた。恒例の如く膨れっ面で反論してくる姿に、向こうの世界の盟友達を思い浮かべてしまう。


メラエア「カネッドさ、彼が困ってるから止めなよね。」

ルマリネ「昔から負けず嫌いだからねぇ。」

カネッド「絶対に秘密を暴いてやるんだから!」


 はぁ・・・異世界に来ても、この光景を目の当たりにできるとは・・・。


 トラガンの女性陣も、同じ様な態度を取って来た事がある。しかし、彼女達は俺の存在を知っているため、それ以上の踏み込みをしてこない。それに、彼女達は男性に虐待を受けた事があるらしく、俺とは一定の距離を開けてくる。唯一、“性転換状態”なら別だが・・・。


 この10人は、トラガンの女性陣を超明るくした感じだろう。境遇こそ似てはいるものの、育った環境などが彼女達を逞しくさせたと思われる。人は育つ環境で変わる見本だわな。



ミスターT「無頓着に聞こえるかも知れないが、ここでも魔王などの存在はいるのか?」

ネルビア「・・・深淵の魔王、カースデビルというのがいます。」

アーシスト「魔王を知らないとか・・・。」

ミスターT「・・・この世界の者とは思えない、か?」


 魔王を知らない事に不信を抱いた彼女達に、ボソッと本音を述べてみる。それを伺うと、急に黙り込んだ。雰囲気からして、聞いてはいけない事だったのかと思っているようだ。


ミスターT「信じようが信じまいが言うが、俺はこの世界の人間じゃない。別の世界から来たと言うべきだろう。ただ、どういった経緯で飛ばされたとかは、今は分からない。」

ジェイニー「・・・帰る手段とかあるのですか?」

ミスターT「今の所はない。」

キャイス「ないって・・・アッケラカンとしてますよね。」

ミスターT「まあな。」


 本当にアッケラカンとしているのだろうな。しかし、元の世界に帰れなかったとして、この異世界で過ごす事になっても何ら問題はない。確かに盟友達と会えなくなるのは悲しいが。


ミスターT「向こうで就いていた職業柄、常に死と隣り合わせだった。それを覚悟した上で、その生き様を貫いてきたからね。それに、人は何れ必ず死ぬ。それが何処かという問題になるだけだしな。」

アクリス「お強いのですね・・・。私なら折れてしまうと思います・・・。」


 俺の境遇に共感してくれたのか、一気に悄気だすアクリス。その彼女の頭を優しく撫でてあげた。10人の中で一番の小柄である。


ミスターT「それにアレだ、ここに飛ばされたのも何らかの理由が必ずある。お前さん達を守る事もできたしな。仮に守らずして難局を乗り越えられたとしても、この出逢いには必ず意味があると確信している。」

ジェイニー「・・・そう言って頂けて、本当に嬉しいです。」

ミスターT「お節介焼きの世話焼きだからな。」


 俺の言葉に、涙を流しだすジェイニー。それに触発されてか、アクリスも涙を流しだした。この2人は気質が似ているわ。


ジェイニー「あの・・・私にできる事があれば、何でも仰って下さい。」

アクリス「私も同じです。貴方は命の恩人ですから。」

キャイス「・・・普段から、人見知りの激しいアクリスとジェイニーなんだけど・・・。」

アーシスト「・・・誰かのために泣いた事など、ありませんでしたし・・・。」

ミスターT「人は、些細な事で目覚めると言うからな。俺がその切っ掛けかどうかは不明だが、この2人は変わりたいと思っていた部分があるんだろう。」


 切っ掛けは些細な事から起こる、か。アクリスもジェイニーも、根底では変わりたいと思っていたのだろう。彼女達の経緯は不明だが、今の言動を窺えば十分把握できる。



カネッド「・・・私がこの獲物を持てないのは、心に余裕がないからなのかもね・・・。」

ミスターT「あー・・・悪い意味じゃないが、お前さんのせいではないよ。」


 そう言いつつ、各ペンダントの能力を発揮する。先程のバリアとシールドの応用で、重力制御の力をカネッドに付与してみた。その彼女にマデュース改を持たせてみる。


カネッド「・・・えっ?!」

ミスターT「先程の防御魔法的な応用で、重力制御魔法と言うべきか、それが要因なのよ。」

カネッド「と・・となると・・・貴方自身にはその力はないと?」

ミスターT「お前さんとサシで勝負したら負けるよ。お前さんの実力は相当なものだしな。」


 自分が言うのも何だが、彼女自身を見縊るなと言ってみた。10人の中で一番の怪力だとも聞いているため、その実力はナンバーワンであろう。故に、優男の俺がマデュース改を軽々と持っていた部分に反感していたのだろうから。


カネッド「・・・ごめんなさい、そうとは知らず・・・。」

ミスターT「だから言っただろうに、人を見掛けで判断しちゃいかんと。」

カネッド「・・・そうですね、すみませんです。」


 落ち込むカネッドの頭を優しく撫でてあげた。それに笑顔で見つめてくる彼女。実の娘を相手にしているかのようで、何だかコソバユイ感じだわ。


ネルビア「・・・本当に凄い方ですよ。」

ミスターT「人心掌握術、か?」

ネルビア「・・・何でも見抜かれてしまうのですね。」

ミスターT「変態気質の変人だからな。」


 警護者の世界では、常に先読みが日課に近い。ネルビアが挙げた内容に答えた事で、全て見透かされていると痛感したようだ。まあ警護者界では、これがないと死活問題になる。自然と繰り出されるのは、常日頃からの修行の賜物だろう。


ミスターT「まあ何だ、女性の心中までは察知せんよ。」

カネッド「・・・そんな事をしたら、張り倒しますけど?」

ミスターT「ハハッ、何とも。」


 先程の落ち込みは何処へやら。直ぐに対抗心を出してくる部分は、まるで兄にちょっかいを出してくる妹のようだ。これはこれで可愛さがあるが。


ミスターT「ともあれ、ここの様相が粗方伺えた。今後をどうするかは分からんが、今は更に詳しい情報収集をし続けるわ。相手を知り・己を知り・全てを知る、だしな。」

ネルビア「ここに滞在されるので?」

ミスターT「滞在させてくれれば良いが・・・。」


 意味有り気にボヤいて見せた。そのまま、先程入ってきた壁門を、その真上の空を見入る。


 魔王の存在がいるのなら、先のゴブリン軍団は斥候と取れる。このシュリーベルを狙っていたと考えるのが妥当なのだが、それ以外に目的があったのかも知れない。それに、この手のストーリーなら、異世界からの探索者を放っては置かない。


 彼女達を助けられたのは良かったが、要らぬ火種を発生させてしまったかも知れないな。


    第1話・4へ続く。

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