第6話 魔王の力3(キャラ名版)
ミツキT「囲まれていますね。」
展開するメカドッグ嬢達が、工業都市を取り囲む魔物達を察知する。それは突然現れたと言って良い。つまり、転送魔法による出現だ。
この事態は、店先で寛ぎだしてから数時間後に至った。討伐クエストから帰ってくるなり、事態の深刻さを語り出す彼女達。
ミスターT「連中の狙いは、妹達と捉えるべきか。」
ミツキT「それもあると思いますが、最大の目標は多分・・・。」
自然と俺を見つめてくる。それは、相手の目的が俺であるという事だ。シュリーベルでの一戦により、相手に目を付けられたと捉えるべきだろう。
ネルビア「マスターはエメリナ様方と行動を。魔物は全て私達に任せて下さい。」
カネッド「残党掃討で大盛り上がり・・・痺れるわぁ・・・。」
ミスターT「お前さん・・・段々身内に似てきてるわ。」
本当である。その豪快な気質は、身内の女性陣にドンドン似だしてきている。それでいて、しっかり実力も据わるのだから恐ろしい限りだわ。まあ、女性とはこう豪快である方が、俺は好みだがな。
ファイサ「・・・豪快な女性の方が好みなのですか・・・。」
ミスターT「だー・・・心中を読むのはやめれ・・・。」
ルマリネ「読むも何も、ダダ洩れ状態でしたし・・・。」
向けられる一念に、顔を赤くしている妹達。それを見て、呆れ顔のミツキTである。無意識に出た一念なため、その思いに邪念は一切ない。純粋に思った事だからこそだろうな。
エメリナ「フフッ、こうも自然に接して頂けると、本当に嬉しいです。」
フューリス「啓示を受けてから、特別な存在を見るかの様な目線には、本当に参りものでしたし。」
テューシャ「それに、普通の女性として見られるのは、本当に有難い事です。」
顔を赤くしながらも、女性として見られた事に嬉しがる3人。それは、他の10人も全く同じ思いのようである。そう言えば、地球でも同じ事を言われていたな・・・。
ミツキT「小父様の生き様がそこにある、ですよ。分け隔てない付き合い、それに魅入られたのが皆様方ですし。そして、今のこの異世界に必要な癒しの一念です。」
ミスターT「ミツキ流の敬い・労い・慈しみの精神、だな。」
話しながらも準備を怠らない。討伐クエスト後だったので、獲物の再調整をする妹達。俺は武器を貸し出しているため、空間収納に収めてあるマデュース改を取り出していく。久方振りのトリプルマデュースシールドである。
カネッド「何時見ても、化け物染みた力ですよね。」
ミスターT「変人と言って貰った方が気が楽なんだが。」
ダリネム「・・・変態気質の変人と言っていたのは、その所以ですか。」
ミスターT「そう、その方が遥かに気が楽だわ。」
俺の変な異名に周りは爆笑している。確かにこの異名は、異名ではなく貶しそのものだろう。だが、それだけ化け物染みた力を持っている証拠だ。それを変人と言い換えてくれている。
メラエア「とりあえず、メンツを分けて攻略で?」
ミスターT「北門と東門は閉鎖されているから、西門にネルビア・ファイサ・ルマリネ・アクリス・アーシストを、南門にカネッド・メラエア・キャイス・ジェイニー・ダリネムで。」
10人「了解っ!」
こちらの指令に即座に分かれる妹達。こうして指令を出したのは、今回が初めてだろうか。指令など実に烏滸がましいが、今は出来得る手段を投じるしかない。
ミスターT「ミツキTはメカドッグ達を率いて、外周部のモンスの掃討に当たってくれ。」
ミツキT「10人方には、メカドッグ様方を護衛に着けますか?」
ミスターT「その方が良いだろう。彼女達の実力からして、要らぬ護衛になりそうな気がするが、不測の事態には備えた方がいい。」
ミツキT「了解!」
具現化したメカドッグ嬢達を、10人に各1人ずつ護衛として着けていく。ミツキTは他のメカドッグ嬢達を率いてくれる。
ちなみに、追加で10人ほど具現化した姿に化けさせた。先の10人と同じく、筐体に付与する感じでの具現化だ。今では実体化しているのは20人となる。
ミスターT「エメリナ・フューリス・テューシャは、冒険者ギルドへの報告を頼む。終わったら、俺と一緒にいてくれ。」
3人「了解です!」
本丸と題して、俺と3人で街中に鎮座する事にした。トリプルマデュース改の防御壁なら、3人を守り切る事は容易だろう。その前に、冒険者ギルドへの報告を任せる事にした。
ミスターT「・・・申し訳ない、呼び捨てで言っちまったわ。」
アクリス「何を仰るのですか。むしろ、敬語で呼ばれる方に違和感があるのですけど。」
ジェイニー「本当ですよ。私達を呼び捨てにして頂いて構いません。」
ミスターT「そうは言うがな・・・。」
簡単な作戦会議後に、自身の言動を振り返ってしまう。今の今まで“さん”付けで呼んでいたため、呼び捨てに違和感が生じだしている。だが、妹達は気にするなと言ってきた。一時期は呼び捨てで呼んでいたが、今は敬語語りの方が性分に合う。
アーシスト「・・・本当に優しい方ですね。」
アクリス「優しいを通り越して、お節介焼きそのものですよ。」
ミスターT「何とも。」
俺の言動がお節介焼きになるのかは不明だが、周りへの気配りに関してであると思いたい。この姿勢は、幼少期の頃から続いていると言われていた。ミツキTも良く知っている。
この言動がなければ、警護者の行動に折れていたかも知れない。警護者の最終形態が、結局の所は殺人者である所以だ。真の力を発揮する際は、相手の殺害も厭わない、それが警護者である。
そこに明確な否定を突き付けるのが、お節介焼きと世話焼きだろう。敬い・労い・慈しみの精神も同じである。これら概念があったからこそ、俺は道を踏み外さずに済んでいるのだ。
ミツキT「マスターは1人ではありません、私達がついています。それに、全てを押し付ける事など絶対にさせません。持ちつ持たれつ投げ飛ばす、この気概で進みますよ。」
ミスターT「・・・ありがとう。」
彼女の言葉に力強く頷く妹達。出逢った頃の初々しさはなく、一介の戦士そのものである。いや、一介の警護者と言うべきか。
カネッド「さあ、兄貴! ご指示を!」
ミスターT「ああ、作戦を開始してくれ。ただし、不要な戦いは避ける事。連中を街中に入れさえしなければいい。」
一同「了解!」
号令と共に颯爽と散開していく彼女達。一切の迷いがない行動には、地球での身内の行動を垣間見ているかの様な錯覚になる。何時の時代でも女性は強いわ・・・。
それぞれの行動を開始しだした一同。俺は街中の中央で、静かに待ち続けた。オルドラとの雑談で挙がった通り、目的が俺にあるとするなら1人が良い。護衛でエメリナ達がいれば安心である。問題は、シュリーベル時の様に大規模な襲撃を繰り出してくるかどうかだ。
そして、1つの懸念があるとすれば、俺が挙げたあのボヤきだろう・・・。
冒険者ギルドへの報告を済ませ、俺の元に戻って来るエメリナ達。西門と南門では既に防衛が始まっているとの事。しかし、連中は街中に入ろうとはしないらしい。
また、エメリナ達の報告で、冒険者ギルドに駐留する冒険者達も動き出してくれた。この工業都市にいる自警団と騎士団もである。この姿勢は、大都会の同軍団とは全く異なる。
テューシャ「召喚魔法でしたか、それによる不意の襲来を想定との事ですが・・・。」
フューリス「誰も来ませんね・・・。」
ミスターT「・・・・・。」
周辺の警戒をする3人。俺はトリプルマデュース改を展開しつつ、静かに瞳を閉じている。各ペンダントの中の、広範囲生体センサーの効果を感じ取るためだ。更に、バリアとシールドの防御機構にもある、善悪判断センサーも併せてみている。
自分がいる場所を中心に、広範囲レーダー的な様相が脳裏に描写される。生体センサーは、人間サイドや魔物サイド全てを投射し、善悪判断センサーはその中の善悪全てを投射する。
妹達とミツキT、そしてオルドラは2つともプラス面を向いているが、他の人間サイドには善悪判断センサーがプラスとマイナスに働くのが感じられた。つまり、根っからの善人ではないのがいるという事だ。流石にこれには溜め息が出てくる。
逆に、魔物サイドで善悪判断センサーがプラスに傾くのが感じられた。魔物達が完全悪ではない証拠を垣間見たのである。まさかここまで判別できる事が可能とはな・・・。
ちなみに、瞳を閉じるのは一種の演出で、実際には開眼状態でも問題はない。ただ、集中するという点では、瞳を閉じた方が効率が上がる。何ともと言った感じである。
ミスターT(人間の中での、善悪判断は普通だと思っていた。だが、魔物達の中にもそれがある。)
ミツキT(当然ですよ。本来ならそれは、見る事も感じる事もできませんし。)
エメリナ(正しいとは思えませんが、その概念を用いれば、世上からマイナスの存在は全て根絶ができますよね。)
アクリス(確かに。ですが、実に烏滸がましいと言うか何と言うか・・・。)
エメリナとアクリスの言葉に、一同小さく目を伏せる。何処からが善で、何処からが悪か、そんな事は実際に分かるものではない。それを感じ取れる自体、正に異常者そのものである。
ミスターT(・・・参考程度に留めるが、それで何をするかまでは至らない。これはもう、警護者の常識の範疇を超越している。いや、生命体の常識を超えている。)
ミツキT(大丈夫ですよ。それらを知ったとしても、間違った方に使わなければ良いのですから。)
エメリナ(ですね。知らないでいるよりは、知っている方が良い場合もあります。要は各々の受け捉え方次第ですし。)
ミスターT(そうだな・・・。)
改めて、己の立ち位置を考えさせられた。これはもう、とんでもない領域に至っている。
一介の警護者であれば、ただ漠然と依頼などをこなすだけでいい。しかし、それ以上の力を持つ場合は、最悪は破壊者となりかねない。特に5大宇宙種族が力を持てば、この概念への到達は必然的だ。
5大宇宙種族の面々が、その力を出したくなかった事を、身を以て痛感させられた。あまりにも超大過ぎる力により、全てのバランスを崩し破壊させる。故に、調停者と裁定者を担う事を徹底しているのだと。
となれば、魔王と大魔王の存在は、マイナス面での調停者と裁定者なのかも知れないな。勇者達以上に力を持っているため、その役割を担っているようなものだ。
第6話・4へ続く。




