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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第5話 秘剣と絆と4(キャラ名版)

 鉱物採取クエストを終えて戻ってきた妹達。念話により、今現在いる場所を話したため、依頼の報告を終えた後に武器屋へと訪れてくる。


 当然ながら、妹達とミツキTもオルドラの気前の良さには呆れ返った。しかし、その人柄には何か共感するものがあるのだろう。滲み出る厚意に心から感謝していた。


ネルビア「あの・・・どうしてそこまで厚意的なのでしょうか?」

オルドラ「・・・お前さん達には期待しているのさ。この嬢ちゃんの目を見た時、本当に何かをするのだと直感した。それに・・・娘の仇も取ってくれるともな。」

アクリス「そうだったのですか・・・。」


 獲物を選びつつ、店主が語る内容に耳を傾ける妹達。その内容に、同じ境遇のエメリナ達は一際共感している様子だ。


オルドラ「最初は復讐のためにと思って、只管武器を作り続けていた。だが、俺の個人的な思いで、コイツらや使い手にその思いを押し付けるのは良くないと思ってな。」

フューリス「気が付いたら、武器を作る事にだけ集中していた、ですか。」

オルドラ「ああ、そうなる。娘も武器が好きでな。その存在だけで己を示すものはないと言い切っていた。武器自体は殺しの道具だが、使い手によっては守る事にも繋がる。」


 オルドラの考えは、四天王や三姉妹が思っていた事と全く同じだ。武器自体は人殺しの道具に過ぎないと言い切っている。しかし、使い手の一念により、人助けの獲物にも化けるとも。


オルドラ「俺が武器屋を続けられるのは、娘との絆のお陰なのかも知れない。そして、皮肉にも、アイツがお前さん達と出逢う切っ掛けを与えてくれた。魔物に殺され、連中を許せない思いはあるが、今は娘に感謝している。」

ミスターT「・・・人は些細な切っ掛けで変革する、か。」


 店主の内情を知り、涙を流している妹達。年代的には彼女達の父親とも言える。そして、殺された彼の娘は妹達と同年代との事だ。


オルドラ「お前さん・・・相当な殺しをして来たと思えるが?」

ミスターT「俺か? まあ・・・警護者という役柄、護衛対象を守るためなら、相手が誰であろうが容赦なく殺してきた。警護者の行動に私情は禁物だったしな。」

オルドラ「そうか・・・。」

ミスターT「だが、無益な殺生は好まない。立ち塞がる相手や、確実に敵対する存在以外、不殺の精神で突き進んでいる。」

オルドラ「・・・俺にも、お前さんみたいな決意があればな・・・。」


 近場の獲物を持ち、静かに語る店主。その手に持つ武器には、確かに力が存在している。後は持ち手の一念次第で化けるという事だ。


ミスターT「俺は今のままで良いと思うが。オルドラさんの一念では、相手を殺す事はできない。何よりも、娘さんがそれを望んではいまい。」


 徐に一服しながら、腰の携帯方天戟を展開する。それを床に突き刺さないように立てつつ、妹達にも言い聞かせるように語った。


ミスターT「お前さん達が胸中に抱く、表に出す事ができない思いと無念は、俺が全て受け持つ。だから、お前さん達はお前さん達の進むべき道だけを進むんだ。」

ミツキT「フフッ、小父様らしいですね。ならば私も、それに応じねばパートナーと言えません。皆様方の思い、確かにこのミツキTが全てお引き受け致します。」


 背中の携帯十字戟を分離させ、1つに纏めて右手に握る。そこに込められた思いは、俺と全く同じである。


オルドラ「・・・お前さん達は、何処までもお人よしなんだな・・・。」

ミスターT「お前さんも同じだろうに。」

オルドラ「・・・ヘッ、違いない。」


 涙を流していたオルドラだが、最後の一言で笑顔になる。今の今まで抱いていた思いから、解放された感じだわ。しかし、同時に彼の胸中には、亡き娘の思いも根付いているのが分かる感じがする。


エメリナ「・・・絆の力、それがこれら秘剣・・・秘武器を強くさせる、と。」

ネルビア「これら武器の秘めたる力は、絆の力なのですね。」

オルドラ「よせやい、そんな特殊な力など込めてないぞ。」

テューシャ「そんな事ありませんよ。貴方様の胸中には、娘様がいるではないですか。」


 テューシャの言葉を聞き、静かに右手を胸に当てるオルドラ。先程も思ったが、彼の胸中には亡き娘の思いも根付いている。エメリナとネルビアが語った秘めたる力とは、父娘が一体で作り上げた獲物に他ならない。


オルドラ「・・・常に共にあり、か。」

カネッド「大丈夫っすよ。淋しかったら何時でも言って下さいな。私達が駆け付けますから。」

ダリネム「娘さんには敵いませんが、私達を娘と思って下さい。」

オルドラ「・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・。」


 妹達の言葉で号泣しだす。彼女達の言葉は、そこにオルドラの娘がいるかの様に聞こえた。思いは時として、時間や空間を超越する、正にそれである。


オルドラ「・・・よしっ! 隕石はまだある。お前さん達の獲物を作り続けるとするか!」

アーシスト「おおぅ! まさかのオーダーメイド品っすか!」

オルドラ「お前さん達が選んだ武器は分かった。同じ様な武器を今後も作り続けておくとするよ。今後、武器で困った事があったら、何時でも尋ねてきてくれ。」


 豪快に笑うオルドラに、居たであろう父親を重ねる妹達。エメリナは実際にいた養父を思いだしているようだ。


 人は何処で、どの様な巡り逢いをするか分からない。悲惨な結末、不幸な出来事、それすらも全て切っ掛けとなる場合がある。全てが全てマイナスとは限らない、俺が地球での警護者の行動で学んだ、大切な理の1つだ。


 妹達とオルドラとの出逢いは、彼の娘が作り出したものだと言い切れる。仮に健在だったとしたら、別の流れとなったであろう。それでも、人生にはどうしても抗い切れない出来事が付き纏うのだ。


 それら、理不尽・不条理の概念を避けるために、俺は徹底的と言えるほど力を付けて来た。技術力の弱体化に至りそうなバリアとシールドの防御機構すらも、惜しむ事なく使い続けた。悲惨や不幸な末路に至ってからでは、何もかも遅いのだ。


 ならば、目の前の悲惨や不幸を全て根絶し続けてやる。俺の目が黒いうちは、その役割を徹底的に演じ切ってみせる。そのための“覆面の警護者”なのだからな・・・。




 工業都市デハラードに来てから数日後。技術者オルドラの助力もあり、劇的なパワーアップを成し遂げる妹達。防具の方もそれ相応の逸品を作っていたとあり、武器防具に関しては全く問題がなくなった。


 本来なら鍛冶職人と言うべきだが、その探究心は技術者に近い。ここ工業都市からして、その呼び名の方が相応しいだろう。


 ちなみに、彼はこの工業都市の市長だったのだから驚きだ。先の探究心以外に、献身的な行いを買われて、市長に抜擢されてしまったようだ。だが、普段は技術者としているようで、都市の市長邸には副市長達が雑務に追われているらしい・・・。


 オルドラも、一同の頭に立つような存在ではないと、その気質から言い放っているようだ。何ともまあ・・・。



 すっかり意気投合した妹達とオルドラ。彼女達の素性も語った事から、伝説の勇者の到来だと街を挙げて盛り上がりだしている。流石の彼女達も呆れ顔だ。


 同時に、彼が持つ情報網は凄まじいものがあり、シュリーベルやカルーティアスの様相は直ぐに察知できるとの事だ。そして、嫌な情報も入って来る事となる。


オルドラ「大都会の仲間から嫌な情報が入って来た。」


 オルドラ武器店に入り浸りの妹達。看板娘的な感じになっており、何と喫茶スペースすら作り出している。これはミツキTの助言らしく、今では有名店となっていた。そんな中、店主のオルドラが不穏な表情を浮かべて語り掛けて来る。


エメリナ「何かあったのですか?」

オルドラ「昨日、再び襲撃事件が発生したとの事だ。大都会自体には被害はなかったが、あれ程の巨大都市に連日襲撃とあり、自警団や騎士団への信頼度が揺らいでいるらしい。」

ネルビア「それ、例の偽勇者共が絡んでいる可能性がありますね。」

オルドラ「偽勇者共? ああ、貴族のボンボンの連中か。貴族とは名ばかりで、民からコネで今の地位に這い上がった愚物だ。」


 吐き捨てるように言い切るオルドラ。彼の熱血漢な心情からして、連中の様な存在は許せないのだろう。痛いほど雰囲気で物語っている。


オルドラ「しかし、連中の実力は確かなものだ。自警団も騎士団も、そこを突け込まれて手出しができていない。国王すらも手が出せない状態らしい。」

ミスターT「一応だが、警護者自体・・・暗殺家業も請け負っているが?」


 ボソッと呟いて見せると、ゾッとした表情を浮かべて青褪めだす一同。普段からノホホンとしている俺から、殺意に関連する語句を挙げられると驚くみたいである。


フューリス「・・・どんな悪党でも、流石に殺しは良くないと思います。」

ミスターT「無論、その通りよ。しかし・・・もし連中がモンスと繋がりがあるなら、一連の襲撃事変は意図的に仕組まれた事になる。それにより、オルドラさんの娘さんの様な被害者が出た場合はどうする?」


 俺の言葉に黙り込む一同。目の前の個人の殺害は良くないとは俺も思う。しかし、その凶刃により多くの人物に被害が及ぶ場合は別となってくる。被害の拡大を防ぐためには、元凶となるものを抹殺すれば良いだけの話だ。


ミスターT「もし、連中が世界に影響を及ぼすような行動をし出すなら、問答無用で殺害する。」

ミツキT「そこは私も賛成です。目の前の人物に忌み嫌われようとも、総意が安心できる世上にするのが警護者の使命。それが嫌であれば、警護者の道など進むべきではありません。」

ミスターT「そうだな。あの時、お前さんを救えなかった事もそれに当たる。オルドラさんの娘さんの様な存在は、絶対に出したくない。」


 確固たる信念と執念を一同に語る。これはミツキTが逝去した時に誓った、絶対不動の原点である。故に、忌み嫌われる警護者の道に足を踏み入れたのだからな。


ミスターT「何度も言うが、お前さん達はお前さん達の生き様を道を進むんだ。そのお前さん達の背後に迫る不安や恐怖は、全て俺が刈り取り続ける。」

ミツキT「ですね。今では私も一介の警護者の1人。同じく、皆様方の背後は厳守し続けます。」


 改めて、己の使命を確認する。何度も挙げねば、折れてしまうからだ。本当に、警護者の役割は損極まりない。


オルドラ「・・・分かった。アンタがそこまで決意しているなら、俺から言う事はない。俺は技術者として、お前さん達の裏方に回るとしよう。武器や防具は全て任せてくれ。」

ミスターT「すまない、恩に着る。」


 静まり返る店内の沈黙を破るはオルドラの一声。彼自身も確固たる信念と執念があるため、俺達の決意を汲んでくれたようだ。生き方は異なれど、進むべき道は全く同じである。


 意気盛んに振る舞うオルドラの娘とは、一体どんな人物だったのだろうか。彼の気質からして、相当な淑女であったのは間違いない。ミツキTの逝去を経験している手前、彼の娘の事は我が事の様に思えてならない。


 しかし、もしかしたら、ミツキTみたいな精神体で父親を守護しているのかも知れない。人知を超えた力に触れ続ければ、否が応でも特殊な能力に目覚めていく。この異世界での理を痛感させられている気がしてならないわ・・・。


    第6話へ続く。

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