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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第5話 秘剣と絆と3(通常版)

 夜が明け掛かった頃、目的の工業都市デハラードに到着した。シュリーベルよりも堅牢な壁や壁門を見れば、その防備の凄さを痛感させられる。壁門近くの兵士達には、行き着けの冒険者ギルドの証文を見せると一発入場となった。


 早速、ミツキTがヒドゥン状態のメカドッグ嬢達を出撃させていく。ちなみに、100人ほど大都会の警戒に配置し、工業都市の探索には50人ほど回したようである。念には念を入れる姿勢は見事だわ。


 まあ、流石の偽勇者共も、この工業都市にまでは横槍を入れては来ないと思うが・・・。



 時間も時間なので、到着後は直ぐに宿屋へ直行となった。賑やかだった妹達も、眠気には敵わないらしい。俺はペンダント効果の睡眠欲無効化耐性があるためか、眠気が一切起こらない。地球でも半年以上眠らなかった事がある・・・。


 ミツキTやメカドッグ嬢達は精神体なため、眠る事など皆無に等しい。食事摂取すらしないため、完全に無尽蔵で動ける。恐ろしいまでの存在である・・・。


 妹達が起きるまで、ミツキTと共に工業都市の酒場で時間を潰す事にした。




 翌朝・・・ではなく、寝に入ってから起きるまでが同日だった妹達。正午過ぎに起床し、普段通りの行動を開始しだす。恐ろしく眠たそうな表情である・・・。


 朝食兼昼食を取ってから、工業都市の冒険者ギルドを見て回る。ここにも行き着けの冒険者ギルドの系列店があり、引き続きお世話になる事となった。顔が利くというのは有難いわ。


「ほむ・・・こちらのクエストは、資源採取のご依頼が多いですね。」

「工業都市なので、開発などに必要な物資の獲得でしょうか。」


 依頼のどれもが、鉱物資源の採取が多い。討伐クエストは非常に希である。ただ、工業都市周辺で出没する魔物の討伐はあるようだ。


「機械兵・・・。」

「そんなモンスがいるんですかね。」

「この世界の技術レベルがどのぐらいかは分からない。だが、工業都市ともなれば、その名前に合ったモンスが出てもおかしくはないが・・・。」


 実に気掛かりである。この場合は、太古の昔に創生された機械、と取るべきか。


 今まで見てきた異世界の総合レベルだが、とても地球のそれとは雲泥の差である。しかし、魔法などの超常的な概念がある以上、ほぼ互角とも取れるだろう。5大宇宙種族の力がそれに近いとも言える。


 それに、俺をここに飛ばした要因が転送装置の類であれば、それ相応の技術力を持っていてもおかしくはない。問題は、一体誰がその技術力を持っているか、になる。


「おっ? これ・・・武器や防具に使う資源の採取・・・。」

「見た事がない鉱物ですよね・・・。」

「受けてみては? 俺は武器屋と防具屋を見て回ってくる。お前さん達に合うようなのを見繕ってくるよ。」

「あ・・・私もお供してもよろしいですか?」

「構わないが・・・。」


 妹達とは別の行動をすると言いだすエメリナ。俺としては彼女達と行動をして、少しでもレベルアップに励んで欲しいものなのだが・・・。


「なら、私が皆様方に同伴します。不測の事態はお任せを。」

「そうか、分かった。」


 何かを感じたのだろう、直ぐに代役に名乗りを挙げるミツキT。その直感と洞察力は、俺が生前時の彼女を鍛え上げた業物である。身体の自由が利かなかった故に、精神面での修行しかできなかったからだ。


 鉱物採取のクエストを受注し、現地へと向かう妹達とミツキT。メカドッグ嬢達10人も付き添いで赴いてくれた。23人もの大パーティーは、見ていて恐ろしいものだわ・・・。


 俺はエメリナと共に、デハラードにある武器屋と防具屋を見て回った。流石は専門業の都市と言えるのだろう。他の街や都市では見当たらない逸品揃いだ。



「この強度なら、今後の戦いで引けを取らなさそうですね。」

「例の機械兵とやらが相手の場合、斬るよりは叩く方が合うからな。刃こぼれしては話にならなくなる。」


 自分の獲物と販売品を見比べるエメリナ。彼女が持つ獲物は、何処にでもある普通の剣のようだ。故に先の偽勇者と対峙した時は、獲物全体の耐久力を維持するために、鞘ごと相手の獲物にぶつけたのだろう。


「俺が知るゲームの作品では、勇者専用の物凄い獲物があったりするんだが。」

「専用装備ですか・・・。私はその様な武器は、余り好きではありません。それに誰でも使えてこその武器ですし。」

「ハハッ、お前さんの考えは俺と同じだったか。」


 うーむ、見事なものだわ。彼女自身も、獲物の柔軟性というか、その部分を見ているようだ。


 俺が思うに、各作品の専用装備などはどうも好かん。専用装備となれば、扱う以前に手に持つ事すらできないとも取れる。それに、自分に装備できない獲物でも、実際にそれを持ち暴れる事はできるはずだ。


 しかし、加護やら真の力やらは発揮されない、それが本当の意味での専用装備だと思う。扱うだけなら誰にでもできておかしくはない。


「店主さん、こちらで扱っている最高峰の武器はありませんか?」

「最高峰? ここにある全ての武器が最高峰と言いたいんだが・・・。」

「す・・すみません・・・。」

「・・・まあでも、特殊的なものはあるにはある。」


 暫くエメリナの目を見つめてから、付いて来いと言った雰囲気で店の奥に案内される。俺もどうだと案内された。


 店の奥には、表には出されていない獲物が複数あった。獲物に疎い俺でも分かるぐらいの、相当な逸品揃いである。それらには、何らかの力が宿っているのを感じた。


 ちなみに、この店主の名前はオルドラとの事。強面ではあるが、気前の良さが感じられる。


「・・・店主、これは隕石武器か?」

「凄いな、その通りだ。この工業都市がある場所は、遥か大昔に“巨大な隕石”が落ちてきた跡に作られたんだ。大量の鉱物が採取できてたようたが、今では殆ど見掛けない。」

「未知の鉱物となれば、凄い力を発揮しますね!」

「そうだな。だが、俺が言うのも何だが、これら武器は使う者を選ぶらしい。作る事自体はできたが、扱う事ができない。」

「それでも、獲物を作る探究心には敵わない、だな。」

「ほほ、分かってくれるか、兄ちゃんよ!」


 実に嬉しそうに笑うオルドラ。この人物は、とにかく作る事が好きなのだ。地球では四天王やミュティ・シスターズがそれに当たる。携帯方天戟やマデュース改も、彼らの力作である。


「これら武器が欲しいなら、金は一切いらん。だができれば、使った感想を聞かせてくれ。俺が作った武器が、どんなものなのかをな。」

「よ・・よろしいのですか?」

「俺に二言はない!」


 気にするなとエメリナの背中をバンバン叩くオルドラ。それに呆気に取られるも、深々と頭を下げる。


 ここに鎮座される、秘蔵品に近い獲物群。そのどれもが相当な力を秘めている。言わば秘剣こと秘武器だろうか。ここは妹達も呼び寄せ、彼女達に合う獲物を選んで貰うべきだろうな。


 そこで、オルドラに現状を語り、これら武器を使わせて貰えないかを尋ねた。結論は即決でOKとなったのは言うまでもない。この店主、相当な人の良さである・・・。


    第5話・4へ続く。

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